「得られるものが明確だ」:日本の スマートニュース は、パブリッシャーにお金を払う

ある斬新なアイデアが、パブリッシャーのコンテンツを欲しがるプラットフォームのあいだで広まりつつある。それは、パブリッシャーにお金を払う、というアイデアだ。

日本で生まれたニュースアグリゲーションアプリのスマートニュース(SmartNews)も、パブリッシャーに料金を支払う新たなプラットフォームのひとつだ。スマートニュースの場合、支払いの対象となるのは、同アプリの独自フォーマットに対応しているパブリッシャーに限られる。米国版では、BBCニュース(BBC News)、BuzzFeed、ビルボード(Billboard)など30のパブリッシャーがこのフォーマットに対応しており、スマートニュースは当該パブリッシャーのコンテンツが同アプリ内でどの程度読まれているかに応じて、彼らにライセンス料を支払っている。

「SmartView First(スマートビュー・ファースト)」というこのプログラムは、2019年第2四半期に開始した小規模テストを経て、この9月から新たな参加パブリッシャーを受けつけている。スマートニュースの場合、パブリッシャーに広告収益の一部を分配するのでなく、アプリ内におけるパブリッシャーの月間ページビューに応じてレベル分けした料金を支払っている。料金レベルはパブリッシャーによって異なるが、スマートニュースのコンテンツ担当バイスプレジデント、リッチ・ジャロスロフスキー氏によると、その金額はちょっとしたものになるという。同プログラムに参加している複数の関係筋の話では、年額で数万ドル強から10万ドル単位にのぼるようだ。

「得られるものがはっきりしている」と、ある参加パブリッシャーの関係筋はいう。「パブリッシャーは明確さを好むものだ。そこが我々の背中を押した」。

対価を支払うという機運

ここ最近、パブリッシャーにコンテンツの対価を支払うという機運がやや高まっているようだ。Facebookが10月25日に発表したニュース専門セクション「Facebook News」は、コンテンツを配信する参加パブリッシャーの4分の1に、最大で年額300万ドル(約32億円)を支払う。Snapchat(スナップチャット)も、アプリにニュース専門セクションを設ける計画について提携パブリッシャーと話し合っており、これもパブリッシャーに対価が支払われる。2019年春には、Appleが「Apple News+」をローンチした。雑誌パブリッシャーのコンテンツを中心としたサブスクリプション型プロダクトで、読者の閲覧量にもとづきパブリッシャーに収益の50%が支払われる。

パブリッシャーがスマートニュースから得られる収益源は、ライセンス料だけではない。参加パブリッシャーは自社コンテンツに表示されるディスプレイ広告を販売することもでき、その収益は100%パブリッシャーの取り分となる。ジャロスロフスキー氏は、最近Apple Newsのディスプレイ広告インベントリー(在庫)を使ってパブリッシャーがよくやっているように、このディスプレイ広告インベントリーを利用して、パブリッシャーにたとえば自社のニュースレターやポッドキャストなどを宣伝することを推奨しているという。

「多くのパブリッシャーが、それぞれ満たしたいファネルを持っている」と、ジャロスロフスキー氏は話す。「そこで私は彼らに、その広告から得られる収益が重要でないのなら、何かほかの目的に利用するといいと勧めている」。

「Smartモード」への是非

スマートニュースが5年前に米国でローンチされた当初、同アプリの主要な機能のひとつに「Smartモード」と呼ばれるものがあった。地下鉄の車内など、電波の悪い環境でアプリを閲覧するユーザー向けに、パブリッシャーの記事を高速で読み込む機能だ。ユーザーは、広告も含めテキスト以外のほぼすべてを取り除いたSmartモードで記事を閲覧するか、あるいはパブリッシャーのモバイルウェブ版の記事を読むか選択することができた。SmartView Firstでは、パブリッシャーはSmartモードの記事に表示される広告を販売することが可能だ。パブリッシャーが販売しない場合、スマートニュース側がそのインベントリーをプログラマティックに販売する。

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スマートニュースのユーザーは、パブリッシャーの記事をアプリのWebモードとSmartモードのどちらで閲覧するか選択できる。

とはいえ、このプログラムに好意的なパブリッシャーばかりではない。SmartView Firstに参加していないあるパブリッシャーの関係筋は、これに参加することは、問題のある慣行を容認するのと同じだと述べている。

「私が思うに、彼らはすでに我々のコンテンツをホストしており、場合によってはコンテンツを奪い取ってさえいる」と、ある不参加パブリッシャーの幹部はいう。「我々からすれば、後ろ暗いビジネス慣行に承認を与えているように見える」。

パブリッシャーへの影響力

米国においてスマートニュースの生み出す参照トラフィックが、インターネット全体に占める比率は小さい。パセリ(Parse.ly)のネットワーク上で計測されたこの1カ月間の参照トラフィックのうち、スマートニュースが占めたのは0.6%となっており、「Yahoo News」(0.5%)やLinkedIn(リンクトイン)(0.3%)は上回ったが、Flipboard(フリップボード)(1.4%)には及ばない。当のスマートニュースによると、同アプリのダウンロード数は5000万回を超え、Google Playストアではニュースアプリのトップ5の常連、AppleのApp Storeでも15位前後につけている。また、9月の全世界月間アクティブユーザー数は2000万人を記録したという。あるSmartView First参加パブリッシャーは、スマートニュースにおけるオーディエンスが前月比で5~10%増加していると報告している。

スマートニュースでは、パブリッシャーがGoogleアナリティクス(Google Analytics)やコムスコア(comScore)などのオーディエンス測定ピクセルをSmartView Firstページに設置することを許可している。すなわちオーディエンスをカウントできるわけだが、今回取材した関係筋たちの話では、パブリッシャーがSmartView Firstから得る収益は、モバイル広告インベントリーの取引からではなく、あくまでライセンス料だという。

「彼らの長期的戦略としては、パブリッシャーをアプリのネイティブに移行させたいのだろう」と、あるSmartView First参加パブリッシャーの関係筋は述べている。「そして移行しないパブリッシャーの優先度を下げるつもりだ」。

ジャロスロフスキー氏によると、スマートニュースのアルゴリズムは、SmartView Firstのコンテンツを直接優先することはしておらず、ユーザーがより多く、より長くエンゲージするコンテンツを優先しているという。そのふたつの要素は、SmartView Firstが促進するものだ。

サスティナブルなやり方

米国でスマートニュースにコンテンツを配信しているパブリッシャー370社のうち、SmartView Firstに参加しているパブリッシャーは10%に満たないが、今後はこのプログラムを確実に成長させていきたいと、ジャロスロフスキー氏は述べている。

「我々は、SmartView Firstプログラムを持続可能な形で構築することに非常に力を入れている」と、ジャロスロフスキー氏はいう。「これまでにいくつかの競合や競合候補が登場したが、彼らは短期間に多くの予算を投じて、そして消えていく。あるいは、パブリッシャーと手を組むのでなく、パブリッシャーを犠牲にしてビジネスを構築しようとするところもある。我々からすれば、どちらのやり方も理にかなっていない。我々が目指すのは、ユーザー、パブリッシャー、そしてスマートニュースと、関わる全員の利益が尊重され、インセンティブが一致するようなプログラムを構築することだ」。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)