「前例のない事態だ」:クリテオ は、いかにAppleのIDFAポリシー変更へ適応するか?

Appleは間もなくプライバシーポリシーを変更し、同社がユーザーの端末にランダムに割り当てる匿名ID、いわゆるIDFAの取得について、広告主にユーザーの同意を求めることになる。これにより、アプリを所有する企業、アプリへ広告を打つ企業、その広告効果を測定する企業のすべてが影響を受けることが予想される。リターゲティング広告に精通する企業クリテオ(Criteo)も例外ではなく、その衝撃に備えて態勢を整えている。

クリテオは7月最終週の前半、第2四半期のアーニングコールにおいて、Appleによる変更と「ヨーロッパにおける同意バナーのさらなる厳格化」により、第3四半期は「300万ドル(約3.1億円)の逆風」が見込まれると、投資家に伝えた。欧州司法裁判所は、ウェブサイトによる個人情報の収集にはユーザーの明確な同意を必要とする旨の裁定を2019年に下した

IDFAポリシーの変更が第3四半期に及ぼしうる甚大な影響力を声高に唱えるのは、尚早とも言える。Appleの発表によれば、iOS14のリリースは9月も半ばになってから――同四半期が終了する2週間前――であり、しかもすべてのAppleユーザーが新OSに移行するにはしばらくの時間を要すると思われるからだ。一方、米投資会社JMPセキュリティーズ(Securities)のアナリストらは7月最終週の前半、Appleによるこの変更により、第4四半期におけるクリテオの減益は2000万ドル(約21億円)、2021年には6000万ドル(約63億円)以上に上りうると、リサーチノートに書いた。

「[IDFAの変更によって]何がどうなるのか、推測はきわめて難しい。前例がないからだ」と、クリテオのCEOメーガン・クラーケン氏は、米DIGIDAYに語った。

「クリテオは絶好のポジション」

ユーザーのオプトイン率がきわめて低い場合、またはAppleが最終的にIDFAの完全廃止を決めた場合、広告主は別種のオーディエンスデータへの最良のアクセス手段を持つアドテクパートナーを選ぶことになると、クラーケン氏はいう。

「最悪のシナリオの場合、あくまで推測の域を出ないが……クリテオは絶好のポジションにいると、私は考えている。我々は充実したデータセットを、そしてコンテクスチュアルなことができる能力を有しており、しかもそこからプロバブリスティック(確率的)なものに、さらにはそのデータをデターミニスティック(確定的)なものにも拡大していける能力がある。したがって、きわめて有利な立場にあると言える」。

クリテオは2万社以上の広告主と4700社のパブリッシャーの情報を統合したファーストパーティデータを持っていると、クリテオはいう。そのIDグラフにはユーザー25億人分のデータがあり、「そのうち98%はクッキーよりも確実な識別子を有している」と、クラーケン氏は先のアーニングコールで述べた。たとえばそれは、ハッシュ化したメールアドレスやポイントカード情報などであり、いずれもプライバシーは保護されていると、同氏は米DIGIDAYに語った。

Appleの意図は不明だが

「平均的な[DSP(デマンドサイドプラットフォーム)]の場合、ブランドのファーストパーティデータに対し、そのレベルのアクセス手段はまず持っていない」と、米独立系リサーチ会社フォレスター(Forrester)のプリンシパルアナリスト、ジョアンナ・オコネル氏はいう。「ただし、だからといって[Appleが間もなく実施するIDFAの変更による]影響をまったく受けない、というわけではない――というかむしろ、影響は誰にも免れられない――だからこそ、現在、IDインフラの構築についてこれほど多くの労力が割かれている。何かするしかないことは、誰の目にも明らかだからだ」。

Appleの意図は不明だが、アプリ・トラッキング・トランスパレンシー・フレームワーク(ATT Framework)を読む限り、同社のいう広義の「トラッキング」禁止は、eメールリストや代替IDの共有など、IDFA以外によるデータ漏洩の制限も含むと思われると、アリート・リサーチ(Arete Research)のインターネットエクイティリサーチアナリスト、ロッコ・ストラウス氏はeメールでの質問に答えた。

クリテオのそれのようなIDソリューションは、たとえユーザーがトラッキングをオプトアウトしたとしても、ユーザーレベルのターゲティングを可能にする回避策になりうるが、AppleにはSafariブラウザにインテリジェント・トラッキング・プリベンション(ITP)機能を導入した先例があることから、今後、それらも阻止してくる可能性はあると、ストラウス氏は重ねて指摘する。

「Appleにはたしかに、パブリッシャーのCRM(顧客関係管理)システムやサーバーサイドのアクティビティに対する制御力はない――よって、パブリッシャーはログインの必要条件として、メールアドレスを以前にもまして要求することになるだろうが――Appleには、サーバーサイドでID/メールアドレスの共有を探知した場合、(一時的に)アプリをブロックすることもできる」とストラウス氏はいう。

クリテオの対応策と業績

今年前半、クリテオは同社いわく「取り消し可能なアイデンティフィケーションシステム(revocable identification system)」への取り組みを始めた――ユーザーが自身のプライバシープロファイルにアクセスし、複数のウェブブラウザおよびアプリの垣根を越えるターゲット法について、自ら選好をアップデートできるポータルだ。このシステムをオープンソースとし――つまり、クリテオを含め、どの商業組織の所有物にもせず――すべてのアドテクベンダー、パブリッシャー、広告主がアクセスできるものにすることが、基本概念であり、クリテオは2020年度第4四半期までの完成を目指している。

「これが完成すれば、ユーザーが、つまりIDの本来の所有者が再び主導権を握ることができる。ブラウザやOSから主導権を取り戻せる」と、クラーケン氏は語るとともに、同システムの開発は「有力企業の後押しを受けており、すでに弾みがついている」と延べ、具体的な社名は挙げなかったが、支援するパブリッシャーおよび広告主の存在を明らかにした。

第2四半期、クリテオは同期のトラフィック獲得コストを差し引いて1億8000万ドル(約190億円)、前年比18%減の収益を報告した。これは、観光や実店舗リテールといった業界のクライアントが支出を停止または抑制する一方、ミッドマーケットやD2C企業が事業活動を維持または活性化するなか、予想を上回る好成績だった。

クリテオは新型コロナウィルス渦による同期の純損益を4100万ドル(約43億円)と計上した。第3四半期の収益を1億7100~1億7300万ドル(約181億〜183億円)、前年同期比20~21%減と予測し、コロナウィルスによる損益を4000万ドル(約42億円)と見積もっている。

[原文:‘There is no precedent to this’ How Criteo plans to adapt to Apple’s IDFA privacy update

LARA O’REILLY(翻訳:SI Japan、編集:長田真)