サードパーティーCookieは間もなく姿を消す。そしてそれは広告収入で営む、既存ビジネスモデルの根幹を揺さぶることになる。そんな状況の中、Amazonが新たに立ち上げた、広告プラットフォーム、Amazon Advertisingはその能力を誇示している。
念のために書くが、サードパーティーCookieは間もなく、世界のインターネット網から姿を消す。そしてそれは、中核をなす、広告収入で営む、既存ビジネスモデルの根幹を揺さぶることになる。
根幹を揺さぶるとはつまり、同分野の最大手勢でさえ存続が危ぶまれる、ということであり――Appleのプライバシーの扱いに苦慮するメタ(Meta)を見れば、それは一目瞭然だ――Google Chromeも、2024年のサードパーティーCookie終了に向けて準備を進めている。
そんな状況の中、Amazonが新たに立ち上げた、そしていつかはAppleおよびGoogleによる従来のオンライン広告ツールの浸食との勝負を強いられる広告プラットフォーム、Amazon Advertisingは、いわば筋肉を見せつけるかのように、その能力を誇示している。
Advertisement
どこが新しい?
Amazon Advertisingは4月27日、自社DSPの新たな機械学習機能を発表した。Googleのディスプレイ&ビデオ360(Display & Video 360)やトレードデスク(The Trade Desk)といったライバルと競合する、サードパーティーが使用できる広告枠購入ツールだ。
同社DSPの担当によれば、Amazonは何年も費やしてこれら新機能を開発した。その目的は、サードパーティーCookie後に残るわずかな信号を利用し、広告主が所望するオーディエンスへのターゲティングに寄与することにあるという。
Amazon DSPのアドバタイジングサイエンス部門ディレクター、ニール・リクター氏が米DIGIDAYに語ったところによると、広告主がファーストパーティデータを同社のデータクリーンルームであるAmazon Marketing Cloudに入れ、各々が所望するオーディエンスを特定することで、それが可能になるという。
「今回のアップグレードは、我々のパフォーマンスアルゴリズムと緊密な関係にある」と氏は説明する。「2022年10月、Amazonの年次カンファレンス、unBoxedで発表したのは、アクセサビリティに関することだが、いまはそれを、これら新たな予測モデルに基づき、向上したパフォーマンスへと転換しているところだ」。
結果
Amazonのプレスリリースによれば、同社DSPにおける今回の機械学習アップデートは、広告主による予算配分の形成の一助にもなり、広告キャンペーンの予算に応じた、理想的な期間での実施にも寄与するという――ちなみに、それは最近メタの自動化プラットフォームに降りかかった災難でもある。
Amazonが2022年を通じて実施した内部試験によれば、計14万回に上る広告キャンペーンでこのアップデート機能を試した広告主の感想は、以下のとおりだ。
- CTRが12.6%上昇
- ROASが34.1%上昇
- CPCが24.7%減少
- それまでアドレス不可能だったインベントリにおけるアドレサビリティが20%~30%上昇
「1%の改善がどれだけ広告主のためになるのか、弊社は十分に理解しています。この数字からおわかりのとおり、これらの新機能はエンゲージメントおよびROASの改善に大いに寄与しています」と、リクター氏はプレスリリースで言い添えている。
なぜ今なのか? 反応は?
非Cookieターゲティングの必要性がなおいっそう喫緊の課題となり、広告主が取引先のアドテク企業数のさらなる縮小に向かういま、Amazonとしては、同社DSPのモデルベースオーディエンス方法論によって、他との違いを見せたいところだろう。
この結果は、Amazonの最新四半期報告として出されたものでもある。同社には、Amazon Advertisingの推進力による(さらなる)多大な収益増の報告が期待されている。ちなみに、今回の発表は5月1日に予定されているAmazon New Frontに1週先んじてなされたものでもある。
インサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)のアンドルー・リプスマン氏は米DIGIDAYの取材に応え、AmazonのDSPがGoogleのディスプレイ&ビデオ360といった既存勢からマーケットシェアをさらに奪うつもりなら、こうした漸進の実証は不可欠だと指摘する。「マーケットはいま非常に混み合っており、これはこの先どの大手広告プラットフォームにも起きることなのだが、Amazonには今、より多くの価値を創造し、諸問題の解決に役立つ、という利点を示す必要がある」。
一方、マーケティングコンサルティングサービスCvEのグローバルSVP、ロバート・ウェブスター氏は米DIGIDAYに対し、これらのアップデートにより、Amazonがライバル勢の中で頭ひとつ抜ける可能性はあるが、同社DSPに喝采を贈るのは、いくつかの疑問が解消されてからだと、指摘する。
「Amazonのそれはユーザーインターフェースの点で最も進んだDSPとは言えなかった。実際、もしもAmazonのデータがなかったら、いま、主要DSPではなかったはずだ」とウェブスター氏。「とはいえ、彼らが機械学習を利用して、Apple機器といったCookieが制限された環境におけるリーチの促進を目指しているのは、ほぼ間違いと断定できる」。
「ただし、いくつか疑問もある。たとえば、さらなるリーチはどこから来るのか? そのクオリティと効果測定をどう検証するのか?」と、ウェブスター氏は言い添える。
[原文:The Rundown: Amazon’s DSP trumpets its cookies-less targeting capabilities]
Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)