いま再評価されはじめた、インスタグラムの「 IGTV 」

インスタグラムのスマッシュヒット「ストーリーズ(Stories)」のおかげで、IGTVは長らく陽の当たらぬ存在に甘んじてきた。そのIGTVが、無期限で自宅に閉じ込められたユーザー向けに、大量のソーシャルコンテンツを次々と繰り出すビューティブランドのあいだで、新たな関心を集めている。

IGTVはインスタグラムが提供する長尺動画の投稿機能だが、その命運については、2018年6月の導入以来、憶測が絶えない。この1月、インスタグラムのホーム画面からIGTVボタンが削除された。テッククランチ(TechCrunch)とセンサータワー(Sensor Tower)の調べによると、IGTVの単体アプリをダウンロードしたユーザーは、1月現在で、わずか700万人だった。ちなみに、TikTok(ティックトック)の同時期における新規ダウンロード数は15億件にのぼった。

「IGTVは立ち上げ当初から曲折続きだった」。そう語るのは、インフルエンサーマーケティングエージェンシーのインフルエンスセントラル(Ingluence Central)を創業し、同社の最高経営責任者(CEO)を務めるステイシー・デブロフ氏だ。「私の知るかぎり、オーディエンスの創出やユーザーの注目度という点で、IGTVが大ヒットしたことなど一度もない。ブランドが追求する戦略のトップ10入りすらしたことがない」。

IGTVに再注目するブランドたち

だが、新型コロナウイルスの感染拡大によるシャットダウンが全米に広がるなか、一部のビューティブランドが、しばらく放置していたIGTVへの動画投稿を再開しはじめている。たとえば、グロッシア(Glossier)の直近の動画投稿は3月25日だが、これは2019年9月以来の投稿となる。KKWビューティ(KKW Beauty)も3月25日以来、6本のIGTV動画を投稿しているが、やはり2019年11月を最後に投稿が途絶えていた。また、MACコスメティクス(MAC Cosmetics)も昨年10月を最後に新規の投稿がなかったが、3月27日に再開している。

「外出禁止が始まる以前、IGTVへの動画投稿は6本程度にすぎなかったが、ここ最近、12本程度追加した」と、ハムニュートリション(Hum Nutrition)のブランドディレクター、エリカ・タム氏は打ち明ける。タム氏によると、同社はインスタグラムライブ(IG Live)よりも、IGTVを優先している。「すでにいくつもの動画をインスタグラムライブに投稿してきた。決して悪くはないのだが、通知設定や制限時間など、ユーザーにとっての使い勝手は必ずしもよくない」。

比較的小規模なブランドも、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)を契機に、IGTVを活用しはじめている。

「コロナ禍以前にIGTVを使ったことは一度もない。我々はまったくの初心者だ」。ネイルケアブランドのテンオーバーテン(Tenoverten)を立ち上げたナディーン・アブラムシク氏はそう打ち明ける。ニューヨークのネイルサロン5店舗の閉鎖を余儀なくされて以来、同社はIGTVを活用して、自宅で使えるネイルケア製品を中心に、ネイルカラーのオンライン販売に注力している。「我々はニーズのあるところに行くだけだ。見る人がいなくなれば、あるいはこちらのコンテンツが底をつけば、そこで打ち止めにする」。

クリエイターたちの動きも再燃

セレブたちも、IGTVへの投稿を活発化させている。たとえば、キム・カーダシアン氏は3月26日を皮切りに、3本の動画をIGTVに投稿している。この本数は、同氏が2019年11月から今年3月26日までに投稿した動画の本数に等しい。また、同氏によるIGTVへの動画投稿は1月を最後に途絶えていた。

インスタグラムも、インフルエンサーたちにもっと作品を投稿してもらうため、金銭的なインセンティブを提供する広告プランを打ち出すなど、IGTVでの創作活動を後押ししている。ブルームバーグ(Bloomberg)の報告によると、インスタグラムは3月半ばに一部の動画クリエイターに接触し、IGTV動画の広告収入のうち、55%をインフルエンサーの取り分とする提案を行った。これはYouTubeと同じ分配比率である。

IGTVに対するブランドのアプローチは一様ではない。一部のブランドは、IGTVの開始以来、コンスタントに動画を投稿してきた。そしてタルト(Tarte)やモーフィー(Morphe)など、外出禁止令が発出される以前から、高いエンゲージメントを享受しているブランドもある。たとえば、モーフィーは、美容YouTuberのジェームズ・チャールズ氏と、韓国コスメのインフルエンサーであるポニー氏をフィーチャーした動画を2月2日に投稿し、92万6000回の再生回数を達成した。同じ動画をYouTubeのアカウントでも配信しているが、こちらの視聴は74万4000回だった。

インスタグラムライブとの比較

他方、現下の情勢に合わせてソーシャル戦略を見直すにしても、IGTVにいまだ懐疑的なブランドもある。多くはインスタグラムライブ(IG Live)に重点を置いているが、こちらもまた、インスタグラムでは不遇の機能だった。Facebookが3月24日に発表したところによると、インスタグラムライブとFacebookライブ動画の再生回数が1週間で倍増し、米国がコロナ危機に見舞われてからこちら、全般的な視聴時間も70%増加しているという。なお、IGTVに関する具体的な数字は公開されていない。

「うちではインスタグラムライブに注力している」と、コスメブランドのヌードスティックス(Nudestix)を創業したテイラー・フランケル氏は語る。「従来のIGTVよりも、エンゲージメントの点で、やや反応がいい」。

ただし、フランケル氏によると、自社のフィードでの動画投稿と比べれば、IGTVを優先しているという。「どういうわけか、顧客のエンゲージメントは、通常のインスタグラム動画よりもIGTVのほうが良い」。

フランケル氏の話では、IGTVのエンゲージメントも、昨年11月および12月に比べて、3月と4月は増加している。動画再生回数は39%増、「いいね」は36%増、コメント数は59%増だった。同氏によると、ヌードスティックスでは、IGTVを「フォロワーのための学習コンテンツのライブラリ」と見なしている。

最右翼のストーリーズも活発化

一方、インフルエンスセントラルのデブロフ氏は、コロナ関連の外出禁止令にかかわらず、IGTVの活用は、ブランドやインフルエンサーたちの将来的な活動全体の「ほんの一部」にとどまるだろうと見ている。

「爆発的な成長を遂げているのはインスタグラムの『ストーリーズ』だ」と、デブロフ氏は指摘する。インスタグラムで中間層に位置するインフルエンサーたちは、現在、ストーリーの投稿1件につき平均で12000件のエンゲージメント(いいねやコメント)を獲得しているが、外出禁止がはじまる以前は1000件程度にすぎなかった。

LIZ FLORA(原文 / 訳:英じゅんこ)