アドテクノロジー業界にとって、モバイルDSP企業、アデルフィック(Adelphic)は異色の存在だ。8人からなる同社の経営チームは、女性が半数を占めている。こうなったのは特定の方針や人数枠を設けた結果ではないという。
アデルフィックの共同創業者兼最高戦略責任者(CSO)を務めるジェニファー・ラム氏は、女性社員が重役で活躍していることに関して、「常に最良の候補者を見つけて採用することを目指した結果だ。我々は単に、他社より大きな網を投げるのがうまかったのだろう」と述べる。
また、アドテク企業はいまやさまざまな才能をもつ人材を探す必要に迫られていると、ラム氏はいう。アドテク業界が進化して競争が激化するにつれ、とりわけ営業部門において、潜在的顧客をディナーに誘う以上のことができる才能が高く評価されるようになった。いまのアドテク企業は、人間関係の構築に長け、企業ブランドと製品に関する豊富な知識をもつ人物を求めている。
アメリカの場合、アドテクノロジーに関する、どのカンファレンスに参加しても、女子トイレには行列ができない。この業界も、ほかのテクノロジー業界と同じく、ほとんどの企業上層部は男性によって占められている。
だからこそ、モバイルDSP企業、アデルフィック(Adelphic)は異色の存在だ。8人からなる同社の経営チームは、女性が半数を占めているのである。
営業部門を率いるエミリー・デル・グレコ氏は、Googleで8年間DSP事業の構築に携わった経歴の持ち主。製品担当バイスプレジデントのヤエル・アヴィダン氏は米Yahoo!出身で、ビジネス開発担当バイスプレジデントのジーナ・キム氏はBlueKaiとオラクルでDMP(データ管理プラットフォーム)営業部門のトップを務めた人物だ。
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才女が才女を呼ぶ
こうなったのは特定の方針や人数枠を設けた結果ではない。そう話すのは、アデルフィックの共同創業者兼最高戦略責任者(CSO)を務めるジェニファー・ラム氏だ。同氏は女性社員が重役で活躍していることに関して、「常に最良の候補者を見つけて採用することを目指した結果だ。我々は単に、他社より大きな網を投げるのがうまかったのだろう」と述べる。
女性を重職に採用するほど、才能ある女性が集まりやすいという現象も起きた。デル・グレコ氏は、2011年にGoogleを離れてアデルフィックのナンバー2に就任すると、採用プロセスに新たな視点をもたらし、そのおかげでほかの女性幹部を呼び寄せやすくなったという。
ラム氏によると、「女性は同じ女性候補者に対して、男性とは違った見方をする傾向がある」のだそうだ。また、男性は女性リーダーを「強い」と見るよりも、「高圧的」で「攻撃的」という見方をしやすいという。
「偏見をなくした」結果
米DIGIDAYが2013年に調べたところ、上場しているアドテク企業の幹部35人のうち、女性はわずか3人しかいなかった。その状況は今もあまり変わっていない。アドテク企業マキシフィア(Maxifier)によれば、アドテク企業の現職CEOのうち、女性の割合はわずか2.9%だという。この数値は、『フォーチュン』誌が年1回発行する全米上位500社のリスト「フォーチュン500」に占める女性CEOの割合(4.8%)よりも低い。
上層部の男女比是正に関して、同様の改善を行っているアドテク企業はほかにもある。たとえば、クオリアメディア(Qualia Media)では、6人の役員のうち4人が女性だ。CEOのキャシー・リーク氏によると、役員の過半数を女性にしたのは意図的なものではなく、人事決定における「偏見をなくした」結果だという。
リーク氏は次のように述べている。「男性は偏見があることを頑として認めないが、それは内在的かつ潜在意識的なものだ。私はどの候補者にも等しく可能性があると思っている。だが、人事権をもつ人間が全員そう思っているわけではない」。
重要視される多様性
しかし、アドテク企業は、いまやさまざまな才能をもつ人材を探す必要に迫られていると、先述のアデルフィックCSO、ラム氏はいう。アドテク業界が進化して競争が激化するにつれ、とりわけ営業部門において、潜在的顧客をディナーに誘う以上のことができる才能が高く評価されるようになった。いまのアドテク企業は、人間関係の構築に長け、企業ブランドと製品に関する豊富な知識をもつ人物を求めている。
ラム氏は次のように述べている。「現在のアドテク業界を動かしている力として、テクノロジーとパートナーシップのもつ役割が以前よりもはるかに大きくなった。そのため、さまざまな経歴をもつ人々が集まりつつある。均一で、見た目も、話す内容も似通ったチームでは、多様性に富み、パートナーとさまざまなレベルで関係を構築できるチームには敵わない」。
男女同数の経営陣がアデルフィックの業務にどう役立ったのか、具体例をラム氏から聞くことはできなかった。しかし、多様な経験をもつ幹部がいることで、より多くの観点に基づいて決定を下せると、同氏は考えている。
次はエンジニアリング部門
経営陣改革に成功したアデルフィックだが、やるべきことはまだまだあることをラム氏は認めている。同社の社員は26%が女性だが、エンジニアリング部門に限っていえば、13%に過ぎない。ラム氏はその原因について、若い女性にとって技術職のロールモデルが少ないこと、またアデルフィックの本社があるボストンでは、その才能をもつ人々の数が全体的に少ないことを挙げている。
同氏は次のように述べている。「多様性のバランスを見直すことに関しては肯定的な意見が多いのだが、どうしても時間が必要だ。一夜にして変わるものではない」。
Ricardo Bilton(原文 / 訳:ガリレオ)
Image from ThinkStock / Getty Images