Netflix 効果:映像パブリッシャーの「登竜門」となりつつある Netflix 案件

Netflix(ネットフリックス)は、Netflixオリジナルの番組を所有したがる傾向にある。そのため制作側からすると、長期的に得られる収益は限られたものになってしまう。だが、テレビ業界に進出したいと思っている製作者、とりわけデジタルパブリッシャーにとっては、Netflixとの契約は、ほかのコンテンツバイヤーからの注目を集め、より有利な条件を引き出す材料になりうる。

ここ数カ月で、BuzzFeed Newsやターナー(Turner)傘下のスーパー・デラックス(Super Deluxe)、フュージョンメディアグループ(Fusion Media Group)、Vox Mediaをはじめとするデジタルパブリッシャー各社が、ファニーオアダイ(Funny Or Die)やオウサムネス(Awesomeness)といったほかのデジタルパブリッシャーや制作スタジオに続いて、Netflixへの番組提供を発表した。

Netflixやテレビネットワークとの契約や進行中の交渉があるため名前は明かせないが、デジタルコンテンツの販売に携わる匿名関係者2人が明かしたところによると、Netflixとの契約によって、テレビネットワークやハリウッドのプロデューサー、はてはタレントにまで繋がりが生まれたという。そのうちの1人は、会社側で複数のテレビネットワークと10を超える番組について「意義のある話し合い」を進めており、こうした会話の機会が生まれ、話し合いの内容が前に進んだのも、Netflixとの契約があったからこそだと明かす。

この男性は、ケーブルネットワークとの会議に向かう途中に、米DIGIDAYのインタビューに対して、「放送局やケーブルネットワークから、より積極的なアプローチを受けるようになった」と語った。

他社への交渉で有利に

Netflixはほかにも、YouTube PremiumやFacebook Watchなどのデジタルコンテンツのバイヤーとの交渉にも影響を与えている。コンテンツ販売側の複数の関係者が、FacebookやYouTubeへの番組販売におけるここ最近の交渉で、予算拡大を含めてより有利な条件を引き出せるようになったと証言しており、その大きな理由にNetflixとの契約を挙げている。

関係者の1人はこれについて「Netflixに番組を提供しているのだから、もし番組を提供してほしいなら、もっとずっと良い条件でないと飲めない、と言えるようになった」と語っている。

Netflixは今年、最大で80億ドル(約8700億円)を投じて、700におよぶオリジナル番組を制作する予定だ。これがテレビ業界に進出したいと考えているデジタルパブリッシャーや制作会社にとっての新たな市場を生みだしている(Netflixの最高コンテンツ責任者を務めるテッド・サランドス氏は、Netflixが保有するオリジナル番組の75%は、同社の番組制作部門が制作していると語っている)。

Netflixとの契約条件

だが、Netflix側の条件には制限が多い。映画やテレビ番組の所有権を購入したがるためだ。所有権を売り渡すと、製作者側がNetflixオリジナルの番組から得られる収益は限られたものになる。制作費は得られるが、従来のテレビモデルで得られたような国際配信や番組販売による将来的な収益は得られなくなる。

ワーナー・ブラザース(Warner Bros.)やライオンズゲート(Lionsgate)といった映画やテレビの大手制作会社にとって、バックエンドの収益は重要な収益源であり、Netflixやテレビネットワーク、配信プラットフォームとの契約においても非常に重要な要素となっている。

Netflixとの契約はプロジェクトや制作会社、パブリッシャーごとに異なる。決して型にはまった契約を押し付けているわけではない。エンターテイメント業界に長く勤め、Netflixの契約にも詳しい関係者2人によると、Netflixは製作者側が国際配信や番組販売の収益をあげられないことへの埋め合わせとして通常より多い購入費を設定することで知られており、それだけでなく製作者側にゲーム化や商品化などの際の知的所有権を与えているという。Netflix(やテレビネットワーク)との共同制作契約を結んでいるコンテンツ販売会社もまた、知的所有権を保持できる可能性が高い。だがその場合は、収益でいずれ回収できることを見越してより多額の投資をしなければいけないというリスクが発生する。

Netflixとの契約のため匿名を条件に、アメリカの大手テレビ制作会社役員は次のように語った。「Netflixが成し遂げたことについて大きな敬意を払っているし、これからも彼らと業務提携を続けていきたいと思っている。それに現実に目を向ければ、従来のテレビ業界は決して順調とは呼べない」。

なぜ新興企業と手を組むか?

だが、Netflixはオリジナルの映画と番組をさらに増やしたいと思っているなか、疑問も存在する。とりわけ新しい儲けの多い収益源を求めてエンターテイメント業界に参入したばかりのデジタルパブリッシャーにとって、Netflixとの契約における価値は何なのかということだ。

エンターテイメント業界に長く務める関係者は「テレビ業界に参入したデジタル専門企業のなかには、ゲームや商品販売、テーマパーク、はてには国際販売の権利を放棄しているところが多い」と語る。つまりこうした企業がNetflixと契約しているのは、得られるものがそうした権利よりはるかに大きいからだ。

前述のアメリカのテレビ制作会社役員は「(デジタルパブリッシャーのなかには)Netflixに選ばれれば勝ち組という意識があるのは間違いない」と指摘し、次のように述べた。「これからも(Netflixが)年間に700の番組にゴーサインを出すといった話題で盛り上がり続けるかどうかは、わからない」。

Sahil Patel(原文 / 訳:SI Japan)