標準、アトリビューション、測定。どれも最高の興奮を巻き起こすような言葉ではないかもしれないが、悪意ある集団はそうした無関心にこそ儲けの種を見出す。
その一方で、これらの概念が6270億ドル(約90兆円)規模のデジタルメディア産業の金の流れを決める大きな柱であることを考えれば、その重要性に関心を持つ気持ちにもなれるのではないだろうか。
最近報じられたいくつかのニュースでも、標準化されたメディア測定の重要性が浮き彫りになっている。
広がる混乱
最初のニュースは、プログラマティック広告の透明性に関する調査の発表だった。この調査によるとANA(全米広告主協会)とPwCが観測した広告インプレッションの5つにひとつがいわゆる「MFA」サイトで表示されているという。ちなみに、MFAサイトとは何かについて業界で一致した「公式」見解はない、という点には注意すべきだ。
その後しばらくして別の調査が発表され、四半期で総額77億ドル(約1兆1100億円)に上るYouTubeの広告費に対し、広告主たちが実際に何を得ているのかに深刻な疑問が投げかけられた。報告書を作成したアダリティクス(Adalytics)は、YouTube広告の広告主たちが何年もミスリードされていたと主張する。ここで問題となっているのは、Google独自のスキップ可能なインストリーム動画広告、トゥルービュー(TrueView)だ。
具体的には、何十億ドルという大金が独立系Webサイトおよびモバイルアプリ上で流れる、小規模の目立たないアウトストリームのオートプレイ、またはインターステイシャル(隙間的)な動画広告ユニットに費やされ、何万にも上るサードパーティから成るGoogle動画パートナー(Google Video Partners、以下GVP)のネットワーク上に配信されていたという。
Googleはアダリティクスの告発と同日に、アダリティクスが「代用的な手法」を用いて、GVPに関して「極めて不正確な主張を行っており、信頼性がない」と激しい反論を発表した。
Googleのグローバルビデオソリューション部門ディレクターであるマーヴィン・レナウド氏は、「主導権は広告主にある」と訴え、広告がYouTubeで流れているのか、GVP経由でサードパーティのWebサイトで流れているのかを「明確に把握できる」と主張している。
Google側の主張
だが、米DIGIDAYが取材した情報筋のすべてが、選択肢が明確に示されているというレナウド氏の主張に同意しているわけではないようだ。
発表以来論争を呼んでいるレナウド氏のブログ投稿に7月13日付で更新された部分には、「アダリティクスの報告書の主な調査結果は、第3者によって信頼性がないと判定された」とある。また、「当社では第3者との提携を拡大し、Googleまたは認定された第3者企業を通じてYouTubeおよびGVPに対する信頼感をさらに高めていく」と記されていた。
レナウド氏は、「当社の広告ソリューションによって実現される値が信頼でき、業界標準に準拠していることを保証するため、当社のビューアビリティ測定ツールおよび無効なトラフィックに対する対策は、メディア・レーティング・カウンシル(Media Ratings Council、以下MRC)の監査・認定を受けている」と続ける。
さらに、「GVPにおけるビューアビリティと無効なトラフィックに関しては、Ads Data Hub経由でダブルベリファイ(DoubleVerify)、Integral Ad Science(以下IAS)、モート(Moat)といった独立した第3者によるアドベリフィケーションを行っている。このような取り組みをさらに強化するため、IASとの提携を拡大し、近い将来にGVPのインベントリーに関してブランドセーフティとブランドスータビリティ(ブランドとの適合性)の測定も提供する」とある。
標準、アトリビューション、測定。どれも最高の興奮を巻き起こすような言葉ではないかもしれないが、悪意ある集団はそうした無関心にこそ儲けの種を見出す。
その一方で、これらの概念が6270億ドル(約90兆円)規模のデジタルメディア産業の金の流れを決める大きな柱であることを考えれば、その重要性に関心を持つ気持ちにもなれるのではないだろうか。
最近報じられたいくつかのニュースでも、標準化されたメディア測定の重要性が浮き彫りになっている。
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広がる混乱
最初のニュースは、プログラマティック広告の透明性に関する調査の発表だった。この調査によるとANA(全米広告主協会)とPwCが観測した広告インプレッションの5つにひとつがいわゆる「MFA」サイトで表示されているという。ちなみに、MFAサイトとは何かについて業界で一致した「公式」見解はない、という点には注意すべきだ。
その後しばらくして別の調査が発表され、四半期で総額77億ドル(約1兆1100億円)に上るYouTubeの広告費に対し、広告主たちが実際に何を得ているのかに深刻な疑問が投げかけられた。報告書を作成したアダリティクス(Adalytics)は、YouTube広告の広告主たちが何年もミスリードされていたと主張する。ここで問題となっているのは、Google独自のスキップ可能なインストリーム動画広告、トゥルービュー(TrueView)だ。
具体的には、何十億ドルという大金が独立系Webサイトおよびモバイルアプリ上で流れる、小規模の目立たないアウトストリームのオートプレイ、またはインターステイシャル(隙間的)な動画広告ユニットに費やされ、何万にも上るサードパーティから成るGoogle動画パートナー(Google Video Partners、以下GVP)のネットワーク上に配信されていたという。
Googleはアダリティクスの告発と同日に、アダリティクスが「代用的な手法」を用いて、GVPに関して「極めて不正確な主張を行っており、信頼性がない」と激しい反論を発表した。
Googleのグローバルビデオソリューション部門ディレクターであるマーヴィン・レナウド氏は、「主導権は広告主にある」と訴え、広告がYouTubeで流れているのか、GVP経由でサードパーティのWebサイトで流れているのかを「明確に把握できる」と主張している。
Google側の主張
だが、米DIGIDAYが取材した情報筋のすべてが、選択肢が明確に示されているというレナウド氏の主張に同意しているわけではないようだ。
発表以来論争を呼んでいるレナウド氏のブログ投稿に7月13日付で更新された部分には、「アダリティクスの報告書の主な調査結果は、第3者によって信頼性がないと判定された」とある。また、「当社では第3者との提携を拡大し、Googleまたは認定された第3者企業を通じてYouTubeおよびGVPに対する信頼感をさらに高めていく」と記されていた。
レナウド氏は、「当社の広告ソリューションによって実現される値が信頼でき、業界標準に準拠していることを保証するため、当社のビューアビリティ測定ツールおよび無効なトラフィックに対する対策は、メディア・レーティング・カウンシル(Media Ratings Council、以下MRC)の監査・認定を受けている」と続ける。
さらに、「GVPにおけるビューアビリティと無効なトラフィックに関しては、Ads Data Hub経由でダブルベリファイ(DoubleVerify)、Integral Ad Science(以下IAS)、モート(Moat)といった独立した第3者によるアドベリフィケーションを行っている。このような取り組みをさらに強化するため、IASとの提携を拡大し、近い将来にGVPのインベントリーに関してブランドセーフティとブランドスータビリティ(ブランドとの適合性)の測定も提供する」とある。
明確となったもの
状況が、スパイダーマンがお互いを指さすミームのような様相を呈してきたのはこのあたりからだ。すべての中心に、「いったい誰が監視者を監視するのか」という疑問がある。
ここで、そこまでの数カ月のうちに膨らんできた主張の対立や言葉の誤用(そのほとんどは思い込みや「中途半端な真実」に起因している)を、なんとか整理しようと立ち上がったのが、MRCだ。
MRCのSVPであるロン・ピネリ氏は公式声明で、「我々はもっと明確でなければならないことに気が付いた」と述べている。声明はアダリティクスに送られたもので、米DIGIDAYが確認をとっている。「MRCのGoogleに対するファーストパーティコンテンツレベルのブランドセーフティの監査/認定は、YouTubeのみに限定されるものだが、YouTubeの一部(マストヘッド、ライブストリーム、Kids)は含まれていない。GVPに関しては対象に一切含まれていない」。
このほかに明確にされた点としては以下のものがある。
- Googleのブランドセーフティについては、いかなる形でも認定されたサードパーティはない
- MRCではAds Data Hub経由のGoogleの活動について報告するサードパーティツールを監査しない
- ダブルベリファイとモートの監査は行っているが、IASの監査は「開始されていない」
- Googleの測定とAds Data Hub経由でのサードパーティへのデータ送信はMRC認定を受けている
MRCのピネリ氏の主張の全文はここで読めるが、そこには第3者測定を提供するプロバイダーがGVPデータを受け取り始めているという話があることについて重要な補足がある。
「これは報告の際には別に分けられ、認定されていないものとして除外されているはずであり、その確認を進めているところだ」とピネリ氏は書いている。「これはサードパーティによる直接的な独立した測定とは見なさず、当サイトではサードパーティによる報告、認定状では独立した第3者の計算および報告、と示している」。
Googleの情報筋は、同社が公的な声明でも、業界団体やクライアントとの会話のなかでも、GVPのキャンペーンを測定する第3者プロバイダーがMRC認定を受けていると
公に主張したことはないと強調する。ただし、GoogleはそのようなMRC認定を2021年以来維持している。
公正を徹底する
その後MRCの情報筋が米DIGIDAYに語ったところによると、MRCはこの議論の双方と連携し、現在は対立を深めてきた両者の主張の基となっている矛盾する数値の照合を図っているところだという。
将来的にはこのようなことがもっと明確になるように、MRC(そのルーツは政府のメディア測定規制の必要性を回避するために、そのような機関が必要であると考えた1960年代の議会委員会に遡ることができる)は、より公正を徹底するための対策も検討している。
「MRCはサービスを認定するたびに認定状と呼ばれるものを渡している。それには何が認定されたのか、除外事項は何かが非常に明確に示され、測定指標の網羅的なリストなどが記載されている」と、MRCのある情報筋は米DIGIDAYに語った。
「認定状はMRCのサービスを通して公開されている。MRCでは認定状をまとめたリストを発行して詳細な内容がすべて確認できるようにできたらとても役に立つのではないかと、検討を始めている」。
[原文:The Media Rating Council is angling for better clarity in an era of compounding complexity]
Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)