調査会社などによる複数のレポートが、今後さらにプログラマティックがデジタル広告に組み込まれる未来を示唆している。プログラマティックは今年、デジタルディスプレイへの支出における、もっともポピュラーな手段になる見込みだ。また、中国のプログラマティック市場が成長を遂げつつあり、PMPの利用も同じく成長している。
プログラマティックの触手が、デジタル広告への支配力を強めつつある。
調査会社などによる複数のレポートが、今後さらにプログラマティックがデジタル広告に組み込まれる未来を示唆している。プログラマティックは今年、デジタルディスプレイへの支出における、もっともポピュラーな手段になる見込みだ。
また、いまなお、オープンエクスチェンジとアメリカのマーケットが世界のプログラマティック市場を支配している。だが、現在、中国のプログラマティック市場が成長を遂げつつあり、プライベートマーケットプレイス(PMP)の利用も同じく成長していることにも着目しておくべきだろう。
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とはいえ、その変化に色めき立つ前に、バナー広告は死んでいないことや、プログラマティックTVは依然として絵空事の域を出ていないことにも留意しておきたい。以下に、プログラマティック広告の世界情勢をまとめた5つのグラフを紹介する。
プログラマティックが形勢逆転
メディアエージェンシー、ゼニス(Zenith)のレポートによると、今年はプログラマティックがデジタルディスプレイ広告支出の大部分を占める最初の年になる見込みだという。メディア戦略企業マグナグローバル(Magna Global)でデジタルインテリジェンス部門のバイスプレジデントを務めるルーク・スティルマン氏は、PPC広告(Pay Per Click Advertising:クリック課金型広告)とソーシャルをさらに加えれば、総額で今年のデジタル広告費の75%近くをプログラマティックが占めることになるだろうと語る。
ゼニスによると、中国でプログラマティックに対して投じられる費用は、2016年の26億ドル(約3000億円)から2018年にはほぼ倍増の46億ドル(約5400億円)に達する見込みだという。ちなみにアメリカに関しては、プログラマティック広告費は240億ドル(約2兆8000億円、2016年)から377億ドル(約4兆4000億円、2018年)に跳ね上がるとゼニスは予測している。続いて、世界のプログラマティック広告費に対してアメリカが占める割合は、61.6%(2016年)から58.8%(2018年)へと、わずかに変動するだけのようだ。
プログラマティック広告への支出
バナー広告はいまなお健在
ここしばらく、業界観測筋はバナー広告を蔑んできた。だが、いまもバナー広告はプログラマティックにおいて主要部分だ。
マグナによると、プログラマティックへの支出の大部分は、いまもバナー広告に回されているという。動画が大幅に増加し、2020年までにバナーを上回ると見込まれているが、それでもバナーはプログラマティック広告費の34%を吸い上げるだろうとマグナは予測している。

フォーマット別に見た世界のプログラマティック支出
プログラマティックTVは時期尚早
調査会社eマーケター(eMarketer)は、アメリカにおけるプログラマティックTV広告費について、7億1000万ドル(約840億円、2016年)から44億3000万ドル(約5240億円、2018年)へ増加すると予測する。たしかに大幅な増加ではあるが、それでも44億3000万ドルという額は、TV広告費の総額の6%を占めるにすぎない。
広告管理ソフトウェアを開発するワイドオービット(WideOrbit)がメディアバイヤー215人を対象に調査したところ、TV広告費の大部分をプログラマティックに回していると答えた回答者は3%だけだった。バイヤーたちは、今後1年でプログラマティックに回すTV広告費を増やす意向を示したが、その割合がわずかであることに変わりはなかった。

TV広告費に占めるプログラマティックの割合
PMPの取引は増加
eマーケターの予測によると、世界のトップクラスの各プログラマティック市場における支出は、オープンな取引からプライベートマーケットプレイス(以下、PMP)へと動くようだ。PMPが勢いを増しつつあるのは、アドフラウド(広告詐欺)を減らすことができ、バイヤーとセラー(売り手)の両者が、誰と取引するのかをより管理しやすいからだと、eマーケターでプログラマティックアナリストを務めるローレン・フィッシャー氏は語る。
だが中国においては、PMPへの移行はアメリカやイギリスよりもずっと遅くなる見込みのようだ。「まだ中国はプログラマティック取引を採用するようになって日が浅い。現在の中国市場は、採用曲線より数年遅れている」とゼニスでフォーキャスト(予測)部門の責任者を務めるジョナサン・バーナード氏は語る。
セグメント別のデジタルディスプレイ広告費(eマーケター調べ)
Ross Benes (原文 / 訳:ガリレオ)
Image courtesy of Creative Commons