「リソース投入を正当化できない」:いまだ IGTV に懐疑的なパブリッシャーたち

長編動画の主要プラットフォームになるというインスタグラム(Instagram)の夢が始動して1年。その歩みは遅々としている。

さまざまな大手パブリッシャーがIGTVを利用しているが、その大部分はいまだ実験と位置づけており、専用のリソースを投入しているパブリッシャーはほとんどいない。大きなハードルのひとつはマネタイズの手段がないことだ。FacebookのWatch、Snapchat(スナップチャット)のディスカバー(Discover)、YouTubeの同様のコンテンツには、ミッドロール広告やプレロール広告が挿入されている。7月上旬、インスタグラムは新たにIGTV用のブランデッドコンテンツツールを発表。あらゆる企業、クリエーターのアカウントが有料パートナーシップを明示できるようになった。ただし、正式な広告ユニットへの言及はなかった。もうひとつの問題は、インスタグラムのフィードとユーザープロフィールにIGTVを配置し、その存在を正当化しようという努力もむなしく、オーディエンスの認知度と関心が十分に高まっていないことだ。簡単に言えば、パブリッシャーはまだIGTVを逃してはいけないチャンスと思っていない。

BuzzFeedは消極的

「ミッドロール広告もプレロール広告もないため、コンテンツにリソースを投じることを正当化するのが難しい。そのため、ほかのプラットフォーム向けにつくったコンテンツを流用しているのが現状だ」と、BuzzFeedビデオ(BuzzFeed Video)の編集ディレクター、メイシー・ティンポーン氏は話す。「ただやみくもに流用するのではなく、ほかで上手くいっているものを選択している。Snapchatの場合、コンテンツで利益を得る手段が最初からあったため、オリジナルコンテンツに投資することは理にかなっていた。しかし、IGTVの場合は正当化できない」。

ソーシャルメディアをまたいだ投資で知られるBuzzFeedだが(Snapchatでは7月初旬に毎日配信の番組を開始したばかり)、IGTVに関しては慎重だ。ほかのプラットフォーム、具体的には、SnapchatとYouTubeから流用した動画でIGTVのチャンネルを運営している。たとえば、7月9日には、寿司職人が安い寿司を批評する動画が配信されたが、これはもともとYouTubeで400万回以上も再生された動画だ。

IGTVは間違いなく、視聴者を獲得しているが、インスタグラムの閲覧者ほど巨大な数ではない。アップトピア(Apptopia)によれば、2018年6月のリリース以降、IGTVのアプリは全世界で約790万回ダウンロードされている。もっともダウンロード数が多かったのは、リリース直後の2018年6月だ。アップトピアの試算では、アプリの月間アクティブユーザー数は180万人。インスタグラムの10億人を超える月間アクティブユーザー数とはかけ離れている。ただし、デスクトップ版またはモバイル版の専用アプリをダウンロードしなくても、インスタグラムのユーザーはIGTVを視聴できる。

インスタグラムのフィードでIGTVのコンテンツをプレビューできるようになったり、ヨコ型動画に対応したりするなど、インスタグラムは製品に改良を加えており、パブリッシャーはまだIGTVに関心を持ち続けている。BuzzFeedのティンポーン氏によれば、確証はないものの、インスタグラムがティーザー動画を追加してから、IGTVの動画を見る人が増えているという。

前向きなパブリッシャー

メレディス(Meredith)はIGTV独占コンテンツに力を注いでいる。この1年間に、13ブランドで20のIGTV専用番組が立ち上げられた。リアルシンプル(Real Simple)のビューティー番組、ハローギグルズ(HelloGiggles)の告白番組、イーティング・ウェル(Eating Well)のビーガン料理番組などだ。動画の数は200本近くに上り、再生回数の合計は約4000万回、1本当たりの平均は2万回以上だ。4月時点の総再生回数は2000万回だった。同社の動画担当シニアバイスプレジデント、アンドリュー・スナイダー氏によれば、再生回数の1本平均が50万を超えるシリーズも4つあるという。

「我々の調べでは、メレディスのプロパティをフォローしている人々は1日30回以上もインスタグラムを開く。我々のオーディエンスは高エンゲージのタテ型のモバイルプラットフォームを好み、我々もそこで動画をつくることに慣れている。そのため、我々はIGTVを異なるタイプの動画を制作、配信する手段と見なした」と、スナイダー氏は話す。

ほかのパブリッシャーも、インスタグラムの若いユーザーに長尺のコンテンツを配信する実験場と捉えている。たとえば、CNNはIGTV専用コンテンツとして、特定の人物を主役にした物語を制作している。インスタグラムの人気者を取り上げた動画もある。2月7日はダンサーのドンテ・コリー氏3月6日はビューティーブロガーのシャローム・ブラック氏5月3日はメイクアップアーティストのハン・バンゴ氏が出演した。CNNはテレビ番組のクリップも共有しているが、IGTVが5月からヨコ型動画に対応し、以前より視聴しやすくなった。7月9日には、アンダーソン・クーパー氏によるインタビューを抜粋し、女子サッカー米国代表チームの副キャプテン、ミーガン・ラピノー氏からドナルド・トランプ米大統領へのメッセージを配信した

CNNのソーシャルメディア、新興メディア担当エグゼクティブプロデューサー、アシュリー・コディアンニ氏は「素晴らしいテレビインタビューには特別な瞬間がある。ラピノー氏のインタビューもそのひとつで、IGTVにぴったりだと思った。女性たちが勝利を祝う姿を皆が見ていたためだ。我々にとって最高の報道、ジャーナリズムのいくつかはテレビで起きている。IGTVはそうしたテレビの特別な瞬間をZ世代のオーディエンスに届ける手段だ」と話す。

「IGTVはSnapchatに近い」

ESPNもインスタグラムを積極的に活用しており、テレビの枠を超えてオーディエンスを拡大し、特に女性とZ世代にリーチする場所と捉えている。デジタル、ソーシャル担当シニアバイスプレジデントのライアン・スプーン氏は、インスタグラムではグラフィック、画像、人物によるストーリーテリングを重視していると説明する。IGTVに関しては、ESPNとスポーツセンター(SportsCenter)のインスタグラムアカウントに、特定の番組を含む動画を投稿する実験を行っている。ESPNのIGTVアカウントでは、トレバー・スケールズ氏の「ホワッツ・グッド(What’s Good)」という番組を配信している。「スペース・ジャム2(Space Jam 2)」をテーマにした6月26日のエピソードは、再生回数が100万回を突破した。

「スケールズ氏の『ホワッツ・グッド』は好調だ。カジュアルな雰囲気の番組で、スポーツだけでなくポップカルチャーも取り上げている。『ゲット・アップ(Get Up)』『ファースト・テイク(First Take)』など、(テレビ)番組も良い仕事をしている。我々は本物の成長を目の当たりにしている。うまくやれば、かなりの人々を引き付けることができる」と、スプーン氏は話す。

デジタル動画パブリッシャーのジェリースマック(Jellysmack)はBuzzFeedと同様、既存のコンテンツをIGTVに流用している。以前はFacebookに力を入れていたが、最近はSnapchatとIGTVを含むインスタグラムを重視している。インスタグラムのビューティー・スタジオ(Beauty Studio)というアカウントには、IGTVの動画が59本投稿されているが、そのうち23本は100万回以上再生されている。500万回に到達した動画も13本ある。ゲーモロジ―(Gamology)というアカウントにも、再生回数100万回を突破した動画が24本ある。

ジェリースマックの共同創業者兼CEOのマイケル・フィリップ氏は「さまざまなフォーマットをテストしたが、コンテンツのパフォーマンスに関しては、(インスタグラムの)フィードはFacebook、IGTVはSnapchatに近い。バイラル動画というより上質なコンテンツだ。だからこそ、我々はほとんどの番組で司会者を起用し、ときにはナレーターも使っている」と話す。

分析と収益化の手段が必要

IGTVへの投資を継続するには、分析とマネタイズの手段が必要だと、パブリッシャーは口をそろえる。Facebookはビドコン(VidCon)に先立って行われるクリエイター・デー(Creator Day)で、インスタグラムのフィードとIGTVを対象にしたインスタグラムのインサイト、コンテンツ管理、パブリッシングツールをFacebookのクリエイタースタジオ(Creator Studio)に統合すると発表した。しかし、パブリッシャーが求めているのは、オーディエンスのアクセス経路に関する詳細と属性データだ。

CNNのコディアンニ氏は、マネタイズの手段がない限り、IGTVはオーディエンスと触れ合う場所になると考えている。

「我々はとても強力なオーディエンスに接近し、関係を構築していると思う。彼らは次世代のオーディエンスだ。次の望みは明白で、マネタイズの手段を求めている」と、コディアンニ氏は語った。

Kerry Flynn(原文 / 訳:ガリレオ)