コンテンツ・レコメンデーションプラットフォームTaboola(タブーラ) CEOアダム・シンゴルダ氏は24日、日本の記者とのラウンドテーブルを行った。シンゴルダ氏はデジタル広告でバナーからネイティブへの移行が起きると主張し、広義のコンテンツマーケティングを宣伝するカテゴリーは今後5〜10年で1000億ドル(約12兆円)市場に成長すると語った。
コンテンツレコメンデーションプラットフォームTaboola(タブーラ) CEOアダム・シンゴルダ氏は24日、日本の記者とのラウンドテーブルを行った。シンゴルダ氏はデジタル広告でバナーからネイティブへの移行が起きると主張し、広義のコンテンツマーケティングを宣伝するカテゴリーは今後5〜10年で1000億ドル(約12兆円)市場に成長すると語った。
Taboolaの代表的なサービスであるコンテンツのレコメンデーションは場所、デバイスの種類、参照元、ソーシャルメデ ィア上のトレンドなど、数百のシグナルをリアルタイムで分析し、媒体内のレコメンドウィジェットを通じて、ユーザーがもっとも興味を示す可能性の高いコンテンツを選択・表示する。
近年は人々はマルチデバイスを利用し、それぞれのデバイスで多様な行動をとる傾向が強まった。「Taboolaは複数のデバイスを利用しているユーザーが誰であるかを特定しない。一例として、金曜日の朝にモバイルアプリで金融関連のコンテンツを読む人は、スポーツを好むということを特定している」。
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「興味深い点としては、Facebookの場合、ユーザーはFacebookに自分が誰であるかを教えている。Googleに関しては、何らかの目的に対して検索をする(インテント[意図]を示している)。TaboolaはAmazonに近い。誰であるかではなく、ユーザーの行動に基づいたサービスなのだ」。
行動データをさばくアルゴリズムは各国ごとにテイラーメイドにしているという。「すべてのマーケットはユニーク。日本市場は確実に独自の特性をもっている。東京と比べるとほかの地域は個別的な対応が必要だと考えている。Taboolaのアルゴリズムは人々がどこから来たかに着目している。ニューヨークのユーザーでも、ニューヨーク在住の人とサンフランシスコ在住の人で異なるコンテンツをレコメンドしている」
Taboolaはすでに50市場で展開しており、それぞれ異なるユーザーの行動が認められるそうだ。
成長するアジア太平洋、「ディスプレイvsネイティブ」
各種の調査により、アジア太平洋地域のデジタル広告収益は著しく成長し、北米を凌ぐサイズになろうとしていることが明らかだ。アジア太平洋はモバイル普及の速度が北米、欧州などの過去の例より速く、よりネイティブ広告が活躍すると指摘している。Taboolaはこの地域ではタイの最大規模オンラインメディア企業 Sanook!、インドのメディア大手ジャグラン・メディア・ネットワークと提携している。
シンゴルダ氏はデジタル広告の世界で、ディスプレイ広告からネイティブ広告への移転が起きると考えている。
「バナー広告は全世界で700億ドル(約820億円)を生み出している。最終的にバナー広告がネイティブ広告に取って代わられる。バナー広告の課題であるビューアビリティ(視認性)はTaboolaのサービスには余り問われないだろう。TaboolaのビジネスはCPC(クリック単価)モデルであり、クリックされない限り費用が発生しないからだ」
「ポストクリックアクイジション(クリック後の獲得)に関する測定を提供している。これはGoogleとの類似点だ」
「我々の差別化要因として、自分たちをサーチのようなカテゴリーとみていることが挙げられる。すでにポストクリックについては、検索マーケティングで示されることはすべて伝えている」。
Google vs Facebook vs そのほか
GoogleとFacebookの「ウォールドガーデン(壁で囲まれた庭)」に関してはどうだろうか。Taboolaのレコメンドエンジンは両者を経由しない形でオープンWeb/インターネット上のユーザーを回遊させる仕組みになっている。
「GoogleやFacebookは広告主を向いている。Taboolaは媒体社を向いている。我々は600人の従業員がいて、そのうち300人がエンジニアだが、彼らは媒体社のためのソフトウェアの開発に従事している」。
「ニュースルーム」という媒体社のコンテンツ製作、流通をサポートするツールを提供している。
「オープンWebの未来に懸念している。媒体社と力を合わせてオープンWebを成長させていきたいと考えているが、GoogleとFacebookのウォールド・ガーデンはとても強く、『強すぎる』と言ってもいい」。
「広告主が納得する、簡単な形で広告を出せる『何らかのツール』を出したい。Taboolaは中小企業と大企業にまったく同じツールを提供する。これにより中小企業のマーケティングを成功させる」
Google Adwards(検索広告)ははじめて個人、中小企業、大企業の広告手段をプログラマティックに水平化した広告商品であり、これにより事業にスケーラビリティ(拡張性)が生まれた。

アジア太平洋ではよりネイティブ広告が活躍すると分析するアダム・シンゴルダ氏
シンゴルダ氏はFacebookが大きな競争相手と考えていると話した。「Facebookのプロモートポスト(投稿を宣伝する)の収益は200億ドルに達した。Facebookがコンテンツマーケティングを宣伝するというカテゴリーを存在させているが、この機会をオープンWebにもたらしたいと考えている」。
「次の5〜10年の間に、コンテンツマーケティングを宣伝するというカテゴリーは1000億ドル(12兆円)を超える市場になると考えている」。
「手作業のコンテンツ承認」「検閲しない」
米国では偽ニュース、日本では「WELQ(ウェルク)」問題が起きており、ネットを流通するコンテンツの信頼性が問われている。GoogleやFacebookの選ばれたエンジニアたちが開発したアルゴリズムを、偽ニュースやグレーゾーンのコンテンツが「ハック」したのだ。これはTaboolaにも共通する。レコメンドウィジェットには、釣りのショッキングなタイトルが並ぶ場合が少なくない。
「100人のアカウントマネジャーがいて、手作業で各コンテンツの承認を行っている。ガイドラインに基づいて、マニュアル(手作業)で、何が許可されているかを規定している。アカウントマネジャーの上に10人のコンテンツをチェックする人がおり、状況をみている」。
日本ではコンテンツ承認する人をまず5人確保したという。「Taboolaのスタンスは、違法コンテンツに関しては違法、オピニオンに関しては、検閲はしない、ということだ」。
Written by 吉田拓史
Photo by Thinkstock