ポッドキャストの広告が成長著しい。SXMメディアのリジー・ウィドヘルム氏にインタビューし、シリウスXMホールディングスの統合広告販売組織がこれらの問題にどのように取り組んでいるのか、将来どのようなソリューションが登場するのか、そして2022年に業界はどこに向かうのかを聞いた。
現在、ポッドキャストの広告が成長著しい。日々、パブリッシャーおよび広告主から熱い視線が注がれている。エジソンリサーチによると、ポッドキャスト広告の収益は2021年には10億ドル(約1100億円)を超えると予想され、現在8000万人ほどの米国人がウィークリーポッドキャストリスナーになっている。これは2020年に比べて17%の増加である。ニューヨークタイムズの「ザ・デイリー(The Daily)」のような人気番組は、1日あたり400万回以上ダウンロードされている。しかし、この広告市場はまだ発展途上であり、その結果、広告主側では測定やターゲティング、プログラマティック広告のコードの挿入などについて生じている課題に取り組んでいる。
米DIGIDAYは、SXMメディア(SXM Media)の広告イノベーションとB2Bマーケティングのシニアバイスプレジデントであるリジー・ウィドヘルム氏にインタビューし、シリウスXMホールディングス(Sirius XM Holdings)の統合広告販売組織がこれらの問題にどのように取り組んでいるのか、将来どのようなソリューションが登場するのか、そして2022年に業界はどこに向かうのかを聞いた。
ウィドヘルム氏は、SXMメディアでシリウスXM、パンドラおよびスティッチャープラットフォームついて兼任管理している。彼女はパンドラ(2019年にSXMメディアに買収された)で16年近く働いたあと、2021年5月にこの役職に就いた。SXMメディアのプログラマティック広告ソリューションにより、広告主はパンドラ、スティッチャー、シリウスXMからインベントリ―(在庫)を購入できるだけでなく、NBCなどの外部パブリッシャーからのポッドキャストも購入できる。SXMメディアによれば、同社のポッドキャストネットワークは4500万人の米国のリスナーにリーチしている。
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――ポッドキャスト広告の収益は2021年には10億ドル(約1100億円)を超えると予想されているが、プログラマティック広告について言えば、収益全体の5%未満にすぎない。これはなぜだと思うか?
1億回のインプレッションがあるとしよう。実はもっと多いが、計算を簡単にするためだ。これらの番組の多くにおけるこうしたインプレッションのほとんどは、番組司会者が読んだ広告を聞いている。クリエイターは、こうすることで番組を信頼できるものにできると感じているか、または番組に登場するすべての広告を管理したいと考えている。
私たちはすべての番組に出向いて、ダイナミック広告挿入について話し合う必要がある。それとプログラマティック広告の本来の機能について。一つひとつの広告を承認するのではなく、各広告が番組に適切か否かを承認する役割をプログラムに任せる。これには非常に多くの質問が出る。クリエイティブの聞こえ方にどんなルールがあるか? 音楽の有無は? 私はこのマットレスの会社と独占契約を結んでいるので、他社は広告を出せないのか? などだ。
広告が番組中にどのように表現されるか、その技術的なプロセスのマネタイズを検討する必要がある。私たちはこれを1年以上前から行っており、傘下に5000以上の番組を持っているが、その多くは、番組でプログラマティック広告を配信できるように移行している。CPMは重要だ。広告を通じて自動的に購入までつなげられるブランドは優れたブランドであり、多くのクリエイターが私たちの番組中に広告提示するブランドに感銘を受ける。そして彼らは自分たちの番組がプログラマティックトランザクションモデルになるのではないかと胸を躍らせる。エコシステムを近代化するには少し時間がかかるが、市場全体を成長させる可能性は非常に高い。
――測定について、ポッドキャストにまだ存在するハードルにはどのようなものがあるか?
業界が実際に取り組むもうとしていることのひとつは、ダウンロードとインプレッションとの違いだ。このふたつについての定義は重要だ。番組をダウンロードして聴かなくてもダウンロードしたことになるが、インプレッションの場合は、実際に番組を読み込んで耳に音が流れてくることを意味する。つまり、オーディオアドを聞く機会となる。だから違いを理解することは重要だ。大事なのは、実際に番組を聞いている人であり、「配信通知をオンにしていたが聞かなかった人」ではない。
これは、業界で合意を得る必要があるもうひとつの測定領域だ。つまり、トータルのオーディエンスサイズ、広告主が利用できるインベントリーの合計をどのように測定するかだ。これらの課題はすべて、しかるべき特定の時間枠に発生している。だから一定の近代化がどうしても必要だ。
――広告主が直面しているこれらの課題解決に向けて、SXMメディアはどのような測定ツールを開発しているのか?
私たちは未来に向けて役立つアドテクと、未来に向けて役立つ測定ソリューションを提供している。実際、顧客は私たちのエコシステムを通じて計画から、生産、購入、測定までを一貫してできていると感じている。広告主は、計画ツールを欲しており、オーディエンスがどこにいるかを知りたいと考えている。当社のターゲティングソリューションにより、ブランドはトピックターゲティングが可能になり、ネットワークのオーディエンスを性別や地域別に理解することができる。ただしブランドは、慣れ親しんできたオーディエンスターゲティングを望んでいる。だから、販売後のROI測定は必須だ。私たちはベンダーと緊密に協力して、場所の測定、感情分析、オーディエンスのセグメンテーション、オーディエンスベースの購入戦術、そして広告主が期待する広告効果の測定に取り組んでいる。
――広告主が広告を購入たり、リーチしたいオーディエンスをターゲットにするのを支援するために、SXMメディアは広告主と協力してほかにどのような方法を用いているのか?
私たちは、広告主が効果的にマーケットプレイスを利用できるよう支援しており、その一環としてAQアカデミーを立ち上げた。これは一種のトレーニングアカデミーで、広告主がポッドキャスト市場へスムーズに参入できるよう支援することをはじめ、マーケターが十分な知識を持ったポッドキャストバイヤーになるためのプログラムを用意している。また、社内のクリエイティブコンサルタントが、クリエイティブのベストプラクティス事例集を作成している。これは、マーケターに司会者が読む広告や番組内のカスタム広告やアナウンサー形式の広告を購入する際の考慮事項などが書かれている。さらには、アナウンサーと司会者が読む広告の転換にどれくらい時間がかかるかについての解説なども含まれている。
私たちのサービスの強みは、月に1億5000万人のリスナーにリーチしていることだ。そのため、複数のアプリを横断して複数のデータ信号を見たり収集したりできる。私たちは、コンテクスチュアルターゲティングと組み合わせることができるポッドキャスティングのユーザーレベルでの真のオーディエンスターゲティングに有効なソリューション開発に取り組んでいる。ポッドキャスティングでは、オーディエンスとコンテクスチュアルの両方のターゲティングが重要となる。たとえば今あなたが聴取している番組、それがニュース番組か犯罪ドキュメンタリー番組かによって、別の種類の広告を配信する機会となる。コンテクスチュアルターゲティングは重要だが、それに加えて真のオーディエンス識別戦略は、この分野における成長の次の段階へと、私たちを本当の意味で押し進めている。
――プログラマティック広告は、一部の広告主にとって悩みの種のようだ。彼らは自動化によってアナウンサーが読むクリエイティブスポットをさまざまなポッドキャスト番組にダイナミック広告の形で挿入したいと考えているようだが、依然として司会者が読む広告が圧倒的に多い。なぜそうなのか?
すべてのポッドキャストが同じというわけではない。特定の番組では、コマーシャルの時間を挿入して、そこにアナウンサーが読む広告を簡単に入れることができる。それは優れて理にかなっている。だが、一部の番組は非常に内輪的であったり、非常に特殊であったりするため、アナウンサー広告が割り込むのは自然ではないケースがある。私たちがパートナーと行っているのは、広告を入れる適切なタイミングを把握することだ。テレビは長い間これを行ってきたし、フールー(Hulu)もだ。つまりは、これらすべての異なる番組のタイプで適切な処方箋、適切な広告枠を見つけることが非常に大切なのだ。
良い例をひとつ紹介しよう。「マミードゥームズデイ(Mommy Doomsday)」というポッドキャストを持つデイトライン(Dateline)を介したNBCニュースだ。これは2カ月ほど前にチャートのトップに躍り出た。レスター・ホルト氏やその他の番組出演者は、司会者広告を録音するつもりはなかったので、番組中の広告はすべてアナウンサーが読む広告であり、素晴らしいリスニング体験だ。これは、優れたコンテンツを持っていることを自負する巨大なメディアブランドの一例であり、チャート上位の番組を持ち、ブランドが優秀なため非常にうまく収益化できている。だから、誰もが不安からスタートしているわけではない。多くの人が、アナウンサーが読むクリエイティブプログラマティックトランザクションができることを理解している。これが今起こっていることだ。クリエイターやメディア企業は、最新の広告テクノロジーを活用することが、コンテンツを収益化し、かつ多様な広告主プールにアクセスできるようにもするための優れた方法であることを理解している。
[原文:SXM Media’s Lizzie Widhelm on the challenges advertisers face with podcast ad buying]
SARA GUAGLIONE(翻訳:SI Japan、編集:猿渡さとみ)