若年層に支払い習慣を植え付ける、サブスク 企業たちの試み

月額や年額の料金を支払うことでコンテンツにアクセスできるようになる、サブスクリプション形式のパブリッシャーたち。彼らはいま、18歳から24歳のあいだのオーディエンスを重要なターゲットとして捉えている。コンテンツ、トーン、マーケティングを彼らに合うように修正し、ちゃんと若い人にもアクセスできるようにプロダクトを調整することで、定額を支払ってコンテンツを楽しむという習慣を若い世代のあいだで育成しようとしているのだ。

テレグラフ(The Telegraph)は2016年にプレミアムプロダクトをローンチした。これによってコンテンツの20%はペイウォールのなかへと入った形になる。その前は彼らのターゲットは35歳以上のオーディエンスだった。現在、彼らが抱えている有料ユーザーのなかでもっとも成長しているのは18歳から34歳のあいだのセグメントだ。この要因のひとつはアプリにある。ペイウォールがローンチされたとき、若いオーディエンスを念頭においてアプリデザインの刷新を行ったと、テレグラフの最高カスタマー責任者であるロバート・ブリッジ氏は語る。彼によると、無料読者から有料登録へのコンバージョンレートはアプリが一番高いものになっているという。

メディア企業はプリントとデジタル両方において、オーディエンスの年齢について心配をしている。若い世代のオーディエンスは、サブスクリプションを受け入れないのではないかと、彼らは恐れているのだ、とロイター・インスティチュート・デジタル・ニュース・レポート(Reuters Institute Digital NEWS Report)の編集者であるニック・ニューマン氏は言った。マーケットのなかでもハイクオリティセグメントにおいては、同じ年齢層を巡って非常に大きなバトルが繰り広げられている。次の世代の読者を育てるうえで、18歳から24歳のグループがいかに重要かということを誰しもが理解しているのだ。マーケットにおける競争は、価格帯も課題となっている。

若年層向けの各種試み

業界でよく語られる誤解のひとつに、18歳から24歳の人々はコンテンツにお金を支払わない、というものがある。ニュースに関しては特にそうだ。しかし、ロイター・インスティチュート・デジタル・ニュース・レポートが10月に出したデータによると、ニュースコンテンツに支払いをしても構わないと考える人々の割合は、年齢層に関係なく一定であった。もちろん、オンラインにおけるニュースに料金を支払うことはまだ珍しい。英国で昨年、オンラインニュースにお金を払った人は3%だけだった。ニュースにはお金を払わない理由は、別のところで無料で見ることができるからだと答えた人が54%だった。これはロイターのデータによる。

エコノミストは過去2年間、学生にターゲットを絞ったキャンペーンを戦略的に展開している。2017年6月に行われたコンテンツ主導のマーケティングキャンペーンがある。大学各地でイベントを行うと同時に、「未来の仕事」というテーマの記事を扱ったのだ。「未来の仕事」関連のコンテンツを閲覧したオーディエンスたちには、パブリッシャーが提供するサブスクリプションサービスの広告が提示された。クリエイティブ、デザイン、コピー、あらゆる要素がこの年齢層にターゲットを絞って制作された。コピーのひとつは「トレンドを起こすには、ハッシュタグだけじゃ足りない」というものだった。

1月にはファイナンシャル・タイムズ(Financial Times)は学校向けの無料アクセスキャンペーンを世界規模に拡大した。これは学校で学んでいることに関連性がある場合、ファイナンシャル・タイムズのコンテンツに学生たちはより興味を示すだろう、という考えに基づいている。英国でロイズバンク(Lloyds Bank)をスポンサーとして構え、2017年6月にこのキャンペーンがローンチした。そして1500校以上における、6000人以上の学生と教師がFT.comへの無制限のアクセスを享受している。このプログラムには70カ国以上において、さまざまな学校が登録をしている。学生であるあいだにブランドに馴染ませることで、卒業後もサブスクリプションを継続する可能性は増加するだろう。しかしまだ、このキャンペーンがはじまって1年しか経っておらず、ファイナンシャル・タイムズはまだ確固たる証拠を提出するには時期尚早だと述べた。

価格設定における問題

メディア所有者たちにとって18歳から24歳の年齢層をターゲットにするうえでの困難は値段設定だ。オンラインには無料でアクセスできるコンテンツがあふれている。その一方で典型的な月額購読は約26ポンド(約4000円)はする。ここには大きな隔たりがある。この年齢層が利用する、Netflix(ネットフリックス)やSpotify(スポティファイ)といったコンテンツ定額サービスの料金はその半分ぐらいだと、ニューマン氏は指摘する。

パブリッシャーたちはこういった幅のある価格帯で、さまざまなプロダクトを実験的に試してきた。たとえばニューヨーク・タイムズの「NYT Now」アプリがその一例だ。しかし、生き残っているものは少ないと、ニューマン氏は言う。ほとんどの場合、その原因は彼らのコアであるニュースプロダクトと競合を起こしてしまうからだ。彼らのコアのニュースプロダクトはどうしても高い価格帯にキープされなくてはいけないのだ。

学校に所属しているあいだだけ使える特定のeメールアドレスを利用して、学生相手にプロダクトを無料で提供することは簡単である。一方で、誰かが24歳だからといって安い価格帯でプロダクトを提供するのは仕組み上難しい。

長期的に重要な戦略

すべてのパブリッシャーたちが、ソーシャルプラットフォーム上ではより若いオーディエンスたちがアクセスしやすいようニュースコンテンツを調整している。そして、サブスクリプション形式を採用しているパブリッシャーたちは、長いあいだソーシャルメディアを使って若い世代へのアピールを繰り返してきた。

しかし、それもオーディエンスがすぐには有料登録はしないだろうという予測のもとである。Snapchat(スナップチャット)では、テレグラフは過去3カ月以上にわたって月平均で490万人のユーザーにリーチしたという。これは、アプリ制作チームと同じチームによって作られたコンテンツを通して達成されたと、ブリッジ氏は説明した。

「この(Snapchatの)オーディエンスの33%が18歳から24歳のあいだであり、31%が17歳以下であるということを考えると、これは非常に大きなインパクトを持つことがわかる。我々の戦略は長期的なものだ。(Snapchatで)ユーザーが準備できれば、次のプロダクトへと誘導することになる。この場合、それはアプリになる」と、彼は語った。

Lucinda Southern(原文 / 訳:塚本 紺)