Hulu(フールー)やプルートTV(Pluto TV)で毎回同じ広告を見させられて、ウンザリしたことはあるだろうか? この問題に嫌気がさしているのは、実はオーディエンスだけではなく、広告主も同じなようだ。実際マーケターはこれを問題視しており、今後ストリーミング広告に使う予算にも影響が出る可能性がある。
Hulu(フールー)やプルートTV(Pluto TV)で毎回同じ広告を見させられて、ウンザリしたことはあるだろうか? この問題に嫌気がさしているのは、実はオーディエンスだけではなく、広告主も同じなようだ。実際マーケターはこれを問題視しており、今後ストリーミング広告に使う予算にも影響が出る可能性がある。
広告の露出頻度はシンプルでありながら、明確な解決方法のない問題でもある。広告主は、商品に興味を持ってもらい、購買に至るまでに必要な広告の露出回数を把握している。逆に、どれくらい見ると露出が多すぎるかもデータとして持っているのだ。だが、統一された測定システムがないなかで、さまざまなストリーミングサービスで展開するキャンペーンを追跡して、一人ひとりへの露出過多について確認するのは容易ではない。ストリーミング広告市場が細分化している現状もこの問題に拍車をかけている。
PHDの最高メディア責任者を務めるアンソニー・コツィアスキー氏は、「さまざまな面で供給が細分化されており、精度の高い露出頻度の管理を行うのは、極めて困難だ」と明かす。
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いまのところ影響は少ない
ストリーミング視聴者に対する広告の配信頻度の管理は以前から広告主にとって悩みのタネだった。資金面でも企業数の面でもストリーミング広告市場が拡大しているなかで、配信頻度の管理に関する問題もまた大きなものとなりつつある。エージェンシー役員らによれば、現時点ではまだこの問題によって広告主からの広告費用が減じるには至っていないという。だが、もし広告のバイヤーが、オーディエンスが広告配信番組を嫌って避けるのを防ぐために過剰な露出を抑える方法を見出せば、市場に流れ込む資金が減る可能性はある。
ホライゾンメディア(Horizon Media)のテレビおよび動画ソリューション担当シニアバイスプレジデントを務めるサマンサ・ローズ氏は、「いずれは転換点に達し、流入資金が頭打ちになるのではないか」と語る。
ストリーミング広告の購入方法が多数あることも、配信頻度の問題に拍車をかけている。広告主が異なるソースから購入した広告が、同じストリーミングサービスで繰り返し流されるという現象が起きやすくなるためだ。
グループ・エム(GroupM)のマネージングパートナーと実装調査担当ディレクターを務めるエド・ガフニー氏は「デジタルインベントリーの購入をたとえば7種類ものソースから行えば、同じ広告が繰り返し流される可能性は高まる」と指摘する。
広告主が対応できること
広告主にとって配信頻度を管理するもっともシンプルな方法が、さまざまなストリーミングサービスやプラットフォームを扱うDSPなどの単一ソースを通じた取引を行い、購入プロセスを簡素化することだ。だが、このモデルでは販売側の力が強まりすぎること、そしてストリーミング市場を十分にカバーできる企業がいまだ存在しないことから実現の可能性は低い。
広告主は代わりに、さまざまな販売側から購入するにあたって、広告費用がどこで使われるかをコントロールする手法を採用するようになっている。たとえばHuluから直接広告を購入しているある広告主がいるとする。この広告主が、テレビネットワークから購入したパッケージにもHuluのインベントリーが含まれている場合がある。その際に、Huluに対してテレビネットワークと重複する部分のブロックを依頼するといった具合だ。さらに広告主が、広告を購入する各社に対してフリクエンシーキャップを設定する場合もある。
広告主が直面している問題が、異なるソースを通じて異なるサービスから広告を購入する場合におけるフリクエンシーキャップの設定だ。たとえばある広告主がHulu、プルートTV、YouTubeで広告を配信する場合に、各オーディエンスに対する1日あたりのフリクエンシーキャップを4回に設定したとする。それでも3サービスを通じて1人の視聴者に最大12回、同じ広告が配信される可能性がある。広告主の求めるフリクエンシーキャップをオーバーしてしまうのだ。「ユニークユーザーあたりの配信頻度をいかにコントロールするかが課題となっている」と、ローズ氏は語る。
ベンダーサイドの取り組み
PHDは、一部オーディエンスに対して過剰に広告が配信されないように、異なるインベントリーソース間におけるオーディエンスの重複問題に取り組んできた。同社は以下の3段階のプロセスによってクライアントのキャンペーンにおける配信頻度の平準化を行っている。
まずPHDは、自動のコンテンツ認識システムを活用してスマートテレビを通じた視聴コンテンツを追跡し、一元化された基準でテレビおよびデジタルプラットフォームにおけるオーディエンスの視聴パターンを把握する。さらにこの情報を活用して、オーディエンスに対する広告配信の重複を最小化するように、配信対象のサービスを選択する。そして毎日、配信されている広告の露出を測定し、各広告主が設定する配信頻度の範囲内に収まっているかを監視するという仕組みだ。コツィアスキー氏によれば、あるクライアントはこのプロセスによって動画広告予算の10%にあたる数百万ドルのコスト削減に成功したという。
広告販売側からすれば、自社サービスで広告が配信されないようにすることのメリットはあまりないかもしれない。どうせほかのサービスで大量に配信されてしまう可能性もある。結局のところ、こうした変化は広告主の主導で行うほかない。「これはクライアントの予算の問題だ。だからこそ、クライアント主導で変えていくべきものだろう」と、ガフニー氏は語る。
「いずれ話が変わってくる」
いまのところ、この問題によって広告主の予算の使い方に大きな変化が生じているわけではない。商品の販売促進にはやはり広告が必要だし、従来型のテレビの視聴数が減るなかでストリーミングのオーディエンスが増え続けているためだと、同氏は指摘する。だが同時に、広告の販売側と購入側のいずれも、この問題が大きくなるまで放置してはならないと警告している。これは同氏に限らず多く耳にする意見だ。
広告が過剰に配信されるようになれば、オーディエンスは広告なしのストリーミングに移行したり、Twitterでうんざりした広告をつぶやいたりするようになるだろう。「そうなれば話が変わってくる」というのが、ローズ氏の警告だ。
Tim Peterson(原文 / 訳:SI Japan)