メディアバイヤーたちは、Facebookの広告担当者から返事が来ないのは、特段目新しい問題ではないというが、Apple iOS 14のアップデートを前に、ここ数カ月、この問題がひどくなっているという声も聞かれる。
メディアバイヤーたちは、Facebookの広告担当者から返事が来ないのは、特段目新しい問題ではないというが、Apple iOS 14.5のアップデートを前に、ここ数カ月、この問題がひどくなっているという声も聞かれる。
「以前なら数週間で問題が解決できた」と、匿名希望のメディアバイヤーは語る。「最近は、4〜5カ月も問題が続いているのに、いまだに答えがない。一部のクライアントでは、そのためにプラットフォームを変更せざるを得なくなり、広告費をGoogleやYouTubeに移している」。
当然、バイヤーが抱える問題はそれぞれ異なる。また、彼らの多くは、D2Cブランドのパフォーマンスマーケティングを専門に扱うバイヤーだ。広告アカウントがロックされたという話もあれば、アカウントが停止されてしまい、何回も問い合わせたにもかかわらず、Facebookからの返事がろくに来ないという話もある。Facebook広告マネージャのバックエンドに関する問題が増えたというバイヤーもいる。あるバイヤーは、一部のアカウントで、キャンペーンレベルでの指標の計算ができなくなったそうだ。また別のバイヤーは、アトリビューションの問題を挙げている。こうした状況から、バイヤーたちは、戦略的な決定を行い辛くなっているという。
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広告費を投下しているかどうか
「確かに、レスポンスはかなり悪くなっている」。こう述べるのは、過去15年間にわたり、ブランドのメディア戦略に携わってきたペイドサーチとソーシャルメディアのエキスパート、スーザン・ウェノグラード氏だ。同氏は最近、広告アカウントがロックされた際、回答が得られないという状況に遭遇した(その後、同僚に助けを求め、対応してもらった)。「彼らは、もっと広告費を使って欲しいときにしか、連絡をしてこない。もちろん、皆がそうというわけではない。自分の担当でもないのに、私のアカウント復活に力を貸してくれた人物もいた。しかし、そうした例は、決して多数派ではないようだ」。
デジショップガールメディア(DigiShopGirl Media)のCEO、カティア・コンスタンティン氏によると、Facebookの広告担当者が対応してくれるかどうかは、その担当者にもよるが、そのアカウントが成長しているか、つまり投下される広告費が増えているかにもよるという。なお、ここ数カ月間に同氏がやり取りを行っている担当者に関しては、「久しぶりに最高」だと付け加える。
この問題について尋ねられたFacebookのスポークスパーソンは、「完璧に対応できているとは言い切れないかもしれないが、我々はパンデミックのなか、エージェンシーが困難に対応できるよう、かつてないほど支援に力を入れている」と答えた。「当社は、各種ツールやトレーニングを通して、エージェンシーのコミュニティの長期的な成長に力を注ぎ続けており、コロナ禍で仕事を失ったエージェンシーのための無料研修プログラム『Rise(ライズ)』も開始している」。
バイヤーたちは諦めムード
Apple iOS 14.5のトラッキングに関する変更が間近に迫るなか、バイヤーたちはもはや、この問題を自力で乗り切るしかないだろうと考えている。
実際、前出のウェノグラード氏も「バイヤーは自力で解決していくことに、慣れる必要がある」と述べる。さらに同氏は、特にキャリアを積んでいないバイヤーの場合、プラットフォームの仕組みを理解しようとする際に、Facebook側に頼りすぎている感が否めない、と補足する。「Facebookの広告担当者は、質問に答えないが、それは単に答えられないからなのか、答えるつもりがないのかはわからない。それはともかく、iOS 14.5のアップデートで、我々は未知の領域に足を踏み入れることになる。そのとき重要なのは、バイヤーが自身でテストを行い、学び、適応していくことだ。iOSのアップデートに伴い、Facebookもそれなりのダメージコントロールを行うだろうが、よい解決策はあまり期待していない」。
レスポンスの悪い担当者、さらには広告パフォーマンスを巡る問題も相まって、広告費をTikTok、Snapchat、YouTube、Googleなど、ほかの広告プラットフォームに移行せざるを得ないというバイヤーもいる。
進むFacebook離れ
実際、パフォーマンスマーケティングを扱うエージェンシーでは、すでに何カ月も前からプラットフォームの多様化が進みつつある。
デシベル(Decibel)のCEOであるジェロミー・ソネ氏も、レスポンスの悪い広告担当者を相手にしなければならない経験を経て、プラットフォームの多様化を推進。クライアントのFacebook向けの広告費を減らしているところだという。
「我々はここ半年間ほど、この問題に関して議論を続けていた。いよいよ緊急性が高まって、好転する見込みがないことが明らかになった1カ月前くらいから、実行に移しはじめた」。
KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)
ILLUSTRATION BY IVY LIU