6300億ドル(約92兆9000億円)の規模を持つデジタル広告業界に大きな変化が訪れている。先行きの見えないなかで、独立系の大手アドテク企業が優位に立とうと競い合っているのだ。
この1年半、DSP企業とSSP企業は従来のメディア取引の境界を曖昧にするような製品を次々と提案している。口火を切ったのは、DSPのザ・トレード・デスク(The Trade Desk)が立ち上げた「オープンパス(OpenPath)」だ。
その後、SSPの大手企業が同様の動きを見せる。マグナイト(Magnite)とパブマティック(PubMatic)は今年初め、独自の「バイサイド製品」を相次いで立ち上げた。こうした動きはいずれも、(歴史的に複雑化した)アドテク業界でプレイヤーが淘汰される予兆と広く受け止められている。ザ・トレード・デスクが最近、「パブリッシャーやSSPに価格戦略を指示させない」との意向を示したことは、競争の激化を示す新たな兆しだ。
収益モデルの移行
4月には、パブマティックが「アクセス・メンバーシップ・プログラム」と呼ばれる会員制プログラムをパブリッシャーに提案していることが、米DIGIDAYによって報じられた。セルサイドの匿名情報筋の話によれば、マグナイトも最近になって、同様の提案を行っているという。
両社は米DIGIDAYの問い合わせに対し、現在進行中の取り組みがあるかどうかも含めて、詳細を明らかにしなかった。ただし、両社の関係者はいずれも、ソフトウェア製品の価格設定に近い収益モデルに移行できるチャンスに言及している。
パブマティックのラジーヴ・ゴエルCEOは8月、米DIGIDAYの取材でこのような動きについて問われた際、製品発表に関して「話せることは何もない」としながらも、「当社は常にテストを行い、顧客と共に新しい製品の可能性を探っている」と付け加えた。
同じくマグナイトも、メディア手数料の徴収やプログラマティック広告の収益分配といったこれまでのやり方に加え、「サービス利用料」や「会費」の徴収を検討しているようだと、セルサイドの複数の匿名情報筋は述べている。このような報道についてマグナイトの広報担当者に問い合わせたところ、担当者は電子メールで、会社として意欲的にテストを行っていると回答しながらも、その意図を明らかにはしなかった。
「マグナイトはダイナミックな価格モデルを提供している。当社はかなり前から、会費を自社製品の価格体系に組み込んでおり、顧客が利用する技術やサービスのレベルに応じてさまざまな価格を用意してきた」と、広報担当者はメールで回答した。
6300億ドル(約92兆9000億円)の規模を持つデジタル広告業界に大きな変化が訪れている。先行きの見えないなかで、独立系の大手アドテク企業が優位に立とうと競い合っているのだ。
この1年半、DSP企業とSSP企業は従来のメディア取引の境界を曖昧にするような製品を次々と提案している。口火を切ったのは、DSPのザ・トレード・デスク(The Trade Desk)が立ち上げた「オープンパス(OpenPath)」だ。
その後、SSPの大手企業が同様の動きを見せる。マグナイト(Magnite)とパブマティック(PubMatic)は今年初め、独自の「バイサイド製品」を相次いで立ち上げた。こうした動きはいずれも、(歴史的に複雑化した)アドテク業界でプレイヤーが淘汰される予兆と広く受け止められている。ザ・トレード・デスクが最近、「パブリッシャーやSSPに価格戦略を指示させない」との意向を示したことは、競争の激化を示す新たな兆しだ。
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収益モデルの移行
4月には、パブマティックが「アクセス・メンバーシップ・プログラム」と呼ばれる会員制プログラムをパブリッシャーに提案していることが、米DIGIDAYによって報じられた。セルサイドの匿名情報筋の話によれば、マグナイトも最近になって、同様の提案を行っているという。
両社は米DIGIDAYの問い合わせに対し、現在進行中の取り組みがあるかどうかも含めて、詳細を明らかにしなかった。ただし、両社の関係者はいずれも、ソフトウェア製品の価格設定に近い収益モデルに移行できるチャンスに言及している。
パブマティックのラジーヴ・ゴエルCEOは8月、米DIGIDAYの取材でこのような動きについて問われた際、製品発表に関して「話せることは何もない」としながらも、「当社は常にテストを行い、顧客と共に新しい製品の可能性を探っている」と付け加えた。
同じくマグナイトも、メディア手数料の徴収やプログラマティック広告の収益分配といったこれまでのやり方に加え、「サービス利用料」や「会費」の徴収を検討しているようだと、セルサイドの複数の匿名情報筋は述べている。このような報道についてマグナイトの広報担当者に問い合わせたところ、担当者は電子メールで、会社として意欲的にテストを行っていると回答しながらも、その意図を明らかにはしなかった。
「マグナイトはダイナミックな価格モデルを提供している。当社はかなり前から、会費を自社製品の価格体系に組み込んでおり、顧客が利用する技術やサービスのレベルに応じてさまざまな価格を用意してきた」と、広報担当者はメールで回答した。
メディアマスの倒産による影響
マグナイトとパブマティックが最初に提案を行ったのは2023年7月より前の話だが、メディアマス(MediaMath)の破産に直面した両社が、シーケンシャル・ライアビリティ条項を契約書に盛り込むことを決めた後だったことを考えると、興味深いタイミングといえる。
メディアマスの倒産により、パブマティックは1040万ドル(約15億3300万円)、マグナイトは1260万ドル(約18億5800万円)の負債を抱えることになった。だが、最終的に損失を被ったのはパブリッシャーだ。そのため、メディアオーナーは近い将来、この両社が新たに課そうとしているアドテク料を警戒するようになるだろうと、複数の情報筋は指摘している。
セルサイドのコンサルティング企業ビーラーテック(Beeler.Tech)を創業したロブ・ビーラー氏によれば、多くのパブリッシャーは自社を守る方法を探っているところだという。そのうえで、従来型のSSP企業から提供されるSaaS的な製品がリスキーなバイサイドパートナーとの取引リスクを相殺できるなら、受け入れられる可能性はあると語った。
「現時点では、メディアマスの問題の処理に関して、(パブリッシャー側に)一定の反感がある」と、ビーラー氏は言う。「どういう経緯だったのかを知りたがっている人は大勢いる」。
会員であることの価値
業界コンサルタントのルル・フォンマニー氏が米DIGIDAYに語ったところによれば、多くのパブリッシャーは、アドエクスチェンジやSSPのようなサプライサイドのアドテクで「会員」としての資格を確保しておきたい考えだという。その方が広告主との接点が増えるため、(理論的には)「アドテク税」の負担が減ると考えられるからだ。
フォンマニー氏はこの問題を、「卸売りで買うか小売りで買うかの違い」にたとえた。とはいえ、SSPが提供するSaaS的な製品を最大限に活用できるノウハウを備えた企業は多くないと、同氏は見ている。
「過去を振り返れば、会員であることの価値を高めるためには、膨大な量の取引を行う必要がある」と、フォンマニー氏は米DIGIDAYの取材に対して述べている。そのうえで、「このような製品を提案されたパブリッシャーは、その見返りに何を得られるのかをはっきりさせる必要がある」と付け加えた。
[原文:Magnite and PubMatic’s recent SaaS proposals herald ad tech’s shifting sands]
Ronan Shields(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:島田涼平)