巨大な消費財メーカーや小売業者は、自社に関する膨大なソーシャル上での情報発信を抱えることになる。個人だけの能力でこれらを処理するのは難しく、ソーシャルを通じて自社のブランディング、あるいは顧客経験の最大化を図るためのソフトウェアは近年存在感を増している。
巨大な消費財メーカーや小売業者は、自社に関する膨大なソーシャル上での情報発信を抱えることになる。個人だけの能力でこれらを処理するのは難しく、ソーシャルを通じて自社のブランディング、あるいは顧客経験の最大化を図るためのソフトウェアは近年存在感を増している。
スプリンクラー(Sprinklr)は、シンガポール国営投資会社テマセクがリードする7月の投資ラウンドで1億500万ドル(約105億円)の出資を受けた。評価額は18億ドル(約1800億円)に上っている。顧客はナイキ、マクドナルド、JPモルガンチェースなどだ。
スプリンクラーの製品は企業のソーシャルメディア上の活動におけるさまざまな能力を拡大するという。「メールマーケティングはもう完成している。では、何がこれからコミュニケーションの中心になってくるかというときにソーシャルだとなった」とセールス部門マネージャーの野村肇氏は話した。ソーシャルメディア用のB2Bソフトウェアという領域に絞ると、スプリンクラーはAdobe、オラクル、セールスフォースと競合している。創業7年のスプリンクラーの強みはこの部分に強く集中していることかもしれない。
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アカウント&ストラテジー担当ディレクター岩崎多聞氏は「ブランド中心だった世界がソーシャルの登場で、顧客中心に変わった。意見も言えるし、何でも言える。これをどうやってマネージするかが課題になってくる」と指摘する。「メディアみたいに買い付けして出していけばいいというものじゃない。出してみてもどうなるかはコントロールできない。だからマネージが重要だ。ブランドが企業中心から顧客中心に変わるときに、スプリンクラーが重要な手段になる」と語った。
顧客中心時代のソーシャル運用とは?
スプリンクラーのソフトウェアが提供する機能としては、ソーシャルメディアのコンテンツのプランニング、パブリッシング、測定だ。それから、ソーシャル上の企業の顧客のトラクションをテキストマイニングで拾い上げる。「拾い上げた情報を開発、カスタマーサービス、営業、Web担当など適切な部門に、自動的に選り分ける」と野村氏は語った。「ネガティブな情報発信に対しては、早急の対応が可能になり、要望、意見は商品開発に活用する。さらにバズのようなものを検知した場合には投稿、広告によるマーケティングでアプローチできる」。

セールス部門マネージャーの野村肇氏(撮影:吉田拓史)
米国に拠点を置くスプリンクラーだが、野村氏は「アジアにはアジア特有のチャネルがある。日本だったらLINE、中国だったらWeChat(微信)というように。どんどんコネクトしていきたい」と語った。
デジタルコンサルが企業の戦略策定したあとにスプリンクラーが採用されるケースなど、現在の業界の多様化を織り込んで、座組みはかなり柔軟になっている。岩崎氏は「企業がデジタルトランスフォーメーションを実現するべきときだ。数年遅れると取り返すのには倍の時間がかかる」と語っている。
Written by 吉田拓史
Photo by Sara Bergström