感情 にターゲティング!? 「デジタル音声広告」だからできること:TBWA HAKUHODO 大石氏&細田氏の見立て

デジタル音声メディアが、広告媒体として大きな注目を集めている。

音声メディアといえば、少し前まではラジオであり、音声広告といえばラジオCMを指すのが当たり前だった。しかし、2010年代に入り、インターネットを介したIPサイマルラジオサービスや、音楽ストリーミングサービスが登場するにつれ、音声メディア、音声広告とは別に、デジタル音声メディア、デジタル音声広告という区分ができた。

TBWA HAKUHODOでDisruption lab クリエイティブチームのクリエイティブディレクターを務める細田高広氏は、以下のように語る。「ラジオCMは、もともとコミュニティ向けに作る感覚がとても強かった。ラジオ番組の主な視聴者の年齢、性別、趣味、嗜好、好みの話題や番組コンテンツが愛されている理由などを理解したうえで、メッセージやストーリーを考える。メッセージを届ける相手の顔を具体的に想像しながら制作するのが、ラジオCMの特徴だ」。同氏は、音声広告はもちろん、さまざまな媒体をフィールドとし、Spotifyでの広告制作も経験している人物だ。

「解像度がぐっと上がる」

「デジタル音声広告の特徴も、基本的には音声広告と同じ」と、細田氏は説明する。ただ、Spotifyが提供する「Spotify デジタル音声広告」は、プログラマティックに配信されるため、メッセージを届ける相手の解像度がラジオよりもぐっと上がり、明確になるという。

世界最大の音楽ストリーミングサービスであるSpotifyは、2008年にサービスを開始したスタートアップ。全世界79以上の国と地域で展開され、グローバルの会員数は2.48億人、うち有料会員数は1.13億人を抱えている(2019年8月現在)。日本では2016年9月からサービスを開始した。

Spotifyの主な収益源は、「プレミアムプラン」の月額有料サブスクリプションとともに、「フリープラン」ユーザーへ提供される音声・動画・ディスプレイの広告収入だ。このうち音声広告であるSpotify デジタル音声広告については、世界的にも大きな成長を見せており、日本でも今後さらなる規模拡大が見込まれている。

「Spotifyデジタル音声広告が、これまでのラジオCMと大きく違うのは、ユーザーの置かれている状況と感情を理解したうえでメッセージを届け、アクションまでつなげることができる点だ」と、細田氏は語る。「人の感情に寄り添い、興味を喚起し、サイトに送客するまでを完結できるメディアはこれまでなかった」。

「Spotify デジタル音声広告だけで、マーケティングを完了できる」と語る細田氏

「Spotify デジタル音声広告だけで、マーケティングを完了できる」と語る細田氏

   

それを可能にするのが、Spotifyのファーストパーティーデータをもとにセグメントされた詳細なターゲティングだ。年齢、性別、住居エリア、天気、デバイスなどの「ユーザーデータ」、日常の習慣や気分、季節的なイベントなどのモーメントごとにまとめられたプレイリストの種類からターゲティングするプレイリストターゲティング、音楽のジャンルごとに区分けされた「ジャンルターゲティング」。これらを組み合わせることで、そのときその瞬間に聴いている音楽からユーザーのリアルタイムのモーメントを捉え、リーチを最適化することができるという。

エモーショナルターゲティングという発想

多彩かつ詳細なセグメントターゲティングによって、パーソナライズされた広告を表示するSpotify デジタル音声広告。細田氏が、Spotify デジタル音声広告に触れたときに興味深いと感じたのは、ユーザーがモバイルで聴いているのか、ラップトップで聴いているのか、聴取行動でセグメントできる点だったという。

「モバイルで聴いているということは、外出中の可能性が高い。つまり、スピーカーではなく、イヤホンをつけて、ひとりで聴いていると推測できる」と、細田氏。「時間帯のセグメントと掛け合わせれば、通勤中なのか、休憩中なのかも予測できる。たとえば昼間の聴取で、デバイスがラップトップならば仕事中だろうか」。

聴取行動がわかるだけでも、これだけのことが推測可能になるし、語りかける言葉もそれぞれ変わってくる。たとえばラジオCMだったら、ユーザーへ呼びかける言葉も「この広告を聴いているみなさん」程度の幅広さになってしまうが、詳細なターゲティングを行えるSpotify デジタル音声広告ならば、「モバイルでこの広告を聴いているあなた」と、一歩踏み込んで語りかけることが可能となるのだ。一対一でアプローチするようなスタイルは、特にイヤホンで聴いているユーザーに反応が良く、親密さを演出することができるという。

一方、細田氏とともに仕事をしている、TBWA HAKUHODO Disruption lab クリエイティブチームのコピーライター、大石将平氏は当初、プレイリストに合わせたターゲティングを実施すると面白いのではないか、と考えたという。「友情をテーマにした音楽が流れたあとに、友情を切り口にした広告を流すなど、音楽が喚起する感情に合わせたターゲティングは、Spotify デジタル音声広告ならでは。エモーショナルターゲティングではないが、そういったことが実現できたら面白いと感じた」。

音楽が喚起するこの感情こそ、Spotify デジタル音声広告がほかのデジタル音声広告と大きく異なるところだと、細田氏は指摘する。「一般的なディスプレイ系のデジタル広告だと、その瞬間のユーザーの感情までを想像してメッセージを届けることはできない。しかしSpotify デジタル音声広告なら、音楽によって引き起こされたユーザーの感情に寄り添い、気持ちのトリガーに極めて近いところに、最適な広告を当てることができる。これは革命的といってもいい」。

「感情にターゲティングできるのは、Spotify デジタル音声広告ならでは」と語る大石氏

「感情にターゲティングできるのは、Spotify デジタル音声広告ならでは」と語る大石氏

広告の「手前」と「後」

もうひとつ、Spotify デジタル音声広告とラジオCMとの違いは、Spotify デジタル音声広告には、広告の「手前」と「後」があるということだ。「手前」とは、ユーザーが広告の前に聴いていた曲やプレイリスト、聴いているデバイスのこと。「後」とは、表示された広告に従って取らせたいアクションのことを指す。

「トレーニング」というプレイリストの音楽を聴いているユーザーには、さまざまなデータからプログラマティックに判断されて、曲間のSpotify デジタル音声広告として、たとえばプロテインなど文脈に最適化された広告が流れる。しかも、音声とセットでデバイスのモニターに表示される、広告クリエイティブにショップリンクを記載すれば、購入までワンクリックで誘導できるのだ。

通常のラジオCMだと、商品への興味関心を喚起することはできても、広告を流した後のユーザー行動は基本的には追えない。もちろん、購買行動も記録に残らないということになる。つまり、Spotify デジタル音声広告最大の特長は、ブランディングとダイレクトレスポンスの両方を追求できる点にあると、細田氏は見ている。

「ユーザーの置かれている状況と感情を理解した上で、アクションまでを設計できる。感情に合わせ、興味喚起をして、サイトに送客するまでを完結できる音声メディアはこれまでなかった。ブランディングとダイレクトレスポンスを同時に実施できる広告と捉えることで、より大きな可能性が広がるのではないか」。

ラジオ番組と思わせる広告

現在、細田氏と大石氏は、Spotify デジタル音声広告で表示される、Spotifyの自社広告の制作に携わっている。彼らが担当するのは、Freeプランで利用可能なSpotifyの機能紹介をベースに新しい使い方を提案するための広告だ。どのようなクリエイティブが最適か、さまざまなトライを繰り返している。

なかでも、特に力を入れて実施しているのが、音声広告を活用してSpotify自体があたかもひとつのラジオ番組であるかのように感じられる演出だという。Spotify デジタル音声広告は、曲と曲のあいだに流されるので、たとえばJ-WAVE『GROOVE LINE』で人気を博した、秀島史香氏をはじめとするラジオパーソナリティに、しっとりとスクリプトを読んでもらい、まるでMCが差し込まれたような雰囲気になることを狙ったという。

このように、Spotify デジタル音声広告は、ネイティブアド的な雰囲気が求められることが多い。ユーザーの気分に寄り添いながら、かつ、自然にアクションを喚起するには、果たしてどういったクリエイティブが最適なのか、現在いろいろと試している最中だという。

ブランド資産としての音声

海外では、音声広告の誘導先として、Podcastをはじめとする音声コンテンツが一大ジャンルを形成している。日本でもスマートスピーカーの普及を契機に、音声コンテンツに目を向けはじめたブランドは増えはじめた。

「スマートスピーカーからアクセスされた場合、どういった音声コンテンツで対応すべきかを考えはじめたブランドが増えている」と、細田氏は語る。音声広告をきっかけとして、音声でインタラクションできるコンテンツをひとつでも作ってみれば、音声コンテンツを整備するひとつのきっかけになると、ひそかに期待を寄せているという。

最後に「2015年から日本でも、音商標が登録できるようになった。聴くだけですぐさまブランド名を想起させることができるサウンドロゴは、ブランドにとって大きな資産だ」と細田氏。「こういった音資産を活用することで、世代を超えてブランドへの愛着や絆を想起させることができる。音声コミュニケーションが常態化していくなかで、ブランドのイメージを表現する音を持つ必然性は、必ずやってくるはずだ」。

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Written by 内藤貴志
Photo by 合田和弘