Spotify 、関心ベースの「ターゲティング広告」を強化へ : セルフサービスの「Ad Studio」で

Spotify(スポティファイ)が、まだサブスクリプション収益に後れを取っている同社の広告事業を拡大する取り組みとして、セルフサービスプラットフォームを改善している。Spotifyの音声広告からパフォーマンスとコンバージョンを促進できるかについての見方は、いまのところさまざまだが、特にもうひとつの重要な音声広告チャンネルであるポッドキャストがSpotifyで拡大していることもあり、広告バイヤーたちの関心は依然として高い。

Spotifyは2019年、セルフサービスの「Ad Studio(アドスタジオ)」に、デモグラフィクスと関心に基づくターゲティングなどのオーディエンス機能をさらに追加する計画だと、同社のパートナーソリューション担当グローバル責任者を務めるダニエル・リー氏は語った。同氏によると、Spotifyのセルフサービスによるファーストパーティセグメントは年齢、性別など、かなり基本的なものに限られていたが、現在、聴取習慣に基づいて「フィットネス好き」「母親」といった分類の導入を計画している。

Spotifyの野望

また、特定の広告主が把握している顧客とSpotifyのオーディエンスを照合できるオーディエンスアップロード機能の開発も進めている。導入する識別子の詳細については、リー氏は明かすことを断った。

Spotifyの収益の大半が広告のないサブスクリプションプロダクトにまだ頼り切っているなか、広告事業の拡大に力を入れているが、月間アクティブユーザーの大半はSpotifyのサービスにお金を出していない。Spotifyは2018年第3四半期の決算報告のなかで、収益の約10.5%が広告で、月間アクティブユーザーの57.1%が広告支援であることを明らかにした(多くが広告ブロックを使っている)。こうした数字は、2017年のデータから大きく変化していない。

「我々が目指しているのはすべてのチャネルを大きくすることだ。音声を通して見えてくる利点は、具体的には、画面がない状態の消費者にリーチする機会だ。コネクテッドカー、コネクテッドスピーカー、ゲーム機などの普及によってひたすら拡大している。こうした場面に適したブランドは、遮ることなくこうした体験のなかで価値を高めるチャンスだと我々は見ている」と、リー氏は語った。

広告主たちの本音

音声広告とSpotifyの組合せに、広告主は複雑な気持ちだ。あるダイレクトレスポンスの広告主は、音声広告は割り込む性質が強いところ好きではないとしながら、ポッドキャストは例外かもしれないと語った。メンズヘルスのスタートアップであるロウ(Ro)は、デジタル広告、テレビ、OOHなどに投資してきたが、音声広告については有効性がないことから、これまで注目してこなかった。

「Spotifyではこの数年、広告を実施しておらず、インターネットラジオによる持続可能で有効な成長を見つけようとすると、必ず苦労する。よりプレミアムなオーディエンスを有する有料版もあるポッドキャストの無料版に広告を出す場合には、そうした部分がついてまわる」と、ロウの共同創業者でCROのロブ・シュッツ氏は話す。

しかし、Spotifyの音声広告、動画広告、ブランデッドプレイリストに資金を出してきたブランドもいる。Spotifyによると、同社のセルフサービスプロダクトのAd Studioは2017年9月の公開以降、「たくさんの」広告主に使われてきた。Spotifyは2018年第2四半期の決算報告で、広告関連収益の20%以上がAd Studioとプログラマティック商品によるものだったことを明らかにしている。Ad Studioは米国、英国、カナダ、オーストラリアで利用可能で、費用は250ドル(約2万7000円)から。Spotifyはまた2018年に、サードパーティによる検証を改善するためニールセン(Nielsen)の「ブランドエフェクト(Brand Effect)」を採用した

仲介者の見立て

UMワールドワイド(UM Worldwide)で総合投資のマネージングパートナーとSVPを務めるジェニー・ラング氏は、エンターテインメント企業は音声広告に「協力」的だという。同氏のエージェンシーでは、小売業者や規模の小さいダイレクトレスポンス企業の関心も確認している。UMは大きなエージェンシーなので、Spotifyとの直接取引とプログラマティックによる購入を行っている。ラング氏によると、セルフサービスのプラットフォームであるAd Studioは、プログラマティックを用いたり、Spotifyとやり取りしたりすることなく、簡単にキャンペーンを実施したい小さな企業を対象にしている。

「利用されるプランとしては、(ポッドキャストではなく)いまだ音楽が標準的なものだろう。Ad Studioは、あまり使ったことはないが、多くの利点があることはわかっている」と、ラング氏はいう。「我々の小さなブランドには音声広告がないところがあり、そうしたところが大至急、手早く制作するということはあるかもしれない」。

Ad StudioでSpotifyに払う手数料は、米DIGIDAYがテストしたところ、配信広告あたり0.015ドルから0.025ドル。Ad Studioを使うバイヤーは、ディスプレイクリエイティブがある音声広告のみに限定される。広報担当者によると、キャンペーンが2万5000ドル(約270万円)を超えたバイヤーには、Spotifyは営業チームと仕事をするよう勧めている。営業チームは、動画やブランデッドプレイリストなど、ほかの広告フォーマットも提供できる。直接購入のCPMは、広告フォーマットによって幅がある。

愛用するバイヤー

独立マーケターのエミリー・ハリス氏はこの1年、アーティスト・ホーム(Artist Home)のティンバー! アウトドア・ミュージック・フェスティバル(Timber! Outdoor Music Festival)のようなライブ音楽とコミュニティのイベントを開催するクライアントに、SpotifyのAd Studioを使ってきた。Ad Studioでは、Spotifyのユーザーを位置、音楽のジャンル、アーティストの年代、デバイスなどでターゲティングできる。

「音楽イベントが出演者、特に大物のリスナーをターゲティングできるのはすばらしい。ポスターやディスプレイ広告を見ていないかもしれない人や、従来のラジオスポットを聴いていないかもしれない人にまとめて知ってもらうのに有効なのは間違いない」と、ハリス氏は話す。

しかし、セルフサービスのAd Studio自体はかなり制限がある。将来的には、「もっと下の」出演者のファンや、似通ったアーティストのファンをターゲティングできるなど、さらなるターゲティング機能がほしいと、ハリス氏は語った。ハリス氏はまた、Facebookでできるような、もっと一般的な関心のターゲティングも欲しいという。ほかにFacebookに似たピクセルトラッキングも、コンバージョンの指標がわかるようになるので、希望リストに入っている。

ハリス氏は多くのバイヤーと同じように、音声広告でディスカウントコードを使っている。コンバージョンの追跡を試みることができるのだ。ハリス氏は、コンバージョンの具体的な数字は明かさなかったが、Spotifyは「印象の埋め込みはうまくいっているようだが、ラストタッチのコンバージョン、そしてクリックはかなり少ない」と教えてくれた。

いままでにない展開

直接販売では、Spotifyはブランデッド体験の制作をより多くの広告主に奨励するなど、従来の広告枠を超えて拡大している。1月には、リスナーごとに毎週パーソナライズしている新しい音楽のプレイリスト「Discover Weekly(ディスカバー・ウィークリー)」のスポンサーにブランドがなれるようになったと発表した。

「ひとつ小出しにすると、プラットフォームの発見の部分に参加してもらえるよう、広告主たちと取り組んでいるのは事実で、この点によって我々は支持されている」と、Spotifyのリー氏はいう。「(オーディエンスの)獲得がうまく、彼らが好きなものや必要としているものを本当に予想できる。Discover Weeklyは、いちばん待ち望まれている」。

バイヤーたちによると、音楽以外に、ポッドキャストがSpotifyの大きな関心になっている。保有しているポッドキャストをカスタマイズするなり、既存のポッドキャストと組むなり、何らかの形でポッドキャストに取り組みたいと、クライアントからいつも聞かされていると、UMのラング氏は語る。

「Spotifyは、(ポッドキャストにおける)そうしたカスタマイズ体験の制作で、ブランドと密接に協力している。Spotifyのクリエイティブサービスはすばらしい」と、ラング氏は語った。「この分野にどのように参入できるか、実験して答えを出すのを本当に楽しみにしており、とても盛り上がっている。どのブランドもポッドキャストに進出したがっている」。

Kerry Flynn (原文 / 訳:ガリレオ)