ソーシャルリスニング 業界、相次ぐ「企業合併」で急成長

ソーシャルリスニングを手がけるクリムゾンヘキサゴン(Crimson Hexagon)とブランドウォッチ(Brandwatch)が10月4日(米国時間)、両社の合併を発表した。これは、リンクインフルエンス(Linkfluence)がスクープイット(Scoop.it)を買収したのに続く動きだ。4月にも、メルトウォーター(Meltwater)がシソモス(Sysomos)を買収している。一連の動きは、彼らが提供しているB2Bプラットフォームの成熟化が進み、ソーシャルメディアが顧客インサイトの獲得源として認められつつあることを示すものだ。

ブランドウォッチにとって、いまは創業以来の大きなチャンスだ。2005年の創業当時、Facebookは登場から1年も経っておらず、YouTubeは設立されたばかりで、インスタグラム(Instagram)、Twitter、Snapchat(スナップチャット)、Pinterest(ピンタレスト)は存在すらしていなかった。こうしたソーシャルメディアに広告を出すことが一般的になるのは、何年もあとのことだ。だがいまは、デュオポリーの2社(GoogleとFacebook)がデジタル広告の世界で盛んに活動し、インスタグラムが新興企業に宣伝の場所を提供し、Twitterがニュースやコメントをシェアする場として頭角を現している。

ソーシャルメディアが消費者のあいだで普及し、マーケターにとってその価値が高まるなか、ソーシャルリスニングへの関心は強まっていった。ブランドウォッチは、2011年にシリーズAラウンドで150万ドル(約1.6億円)の資金を調達したのを皮切りに、2014年には2200万ドル、2015年には3300万ドル(約25億円)の資金を確保した。クリムゾンヘキサゴンも、2010年に200万ドル(約2.2億円)の資金を調達したあと、2011年に500万ドル(約5.6
億円)、2016年に2000万ドル(約22億円)の資金を獲得している。さらに、資金は競合企業にも流れ込んだ。スプリンクラー(Sprinklr)の創設者は、自らのビジョンを実現するツールを開発するために同社を立ち上げ、これまでに2億2850万ドル(約257億円)の資金を調達している。

「消費者が力を持ち、ブランドがメッセージを伝える力を失っている状況は、私にとって都合のいいものだ。しかしいま、ブランドが力を得るには、耳を傾けることが必要になる。その作業を我々はソーシャルメディア分析と名付け、4~5年後にはソーシャルリスニングと呼ぶようになった」と、ブランドウォッチの創業者兼CEO、ジャイルズ・パーマー氏は語った。

欠かせない業界統合

そして、今回の合併だ。メルトウォーターでプロダクト担当エグゼクティブディレクターを務めるニクラス・ド・ベッシュ氏によれば、業界の統合は欠かせないことだという。ソーシャルメディアの成長に遅れないようにするには、さまざまなチャネルや言語で自然言語処理や人工知能(AI)などの高度な技術を用いる必要があるからだ。

「多くの小規模なプレイヤーは、単独で生き延びていけるほどの勢いもなければ、成長もしておらず、そのためのリソースもない。ほかの企業との提携や合併によって、製品や顧客基盤を拡大する必要があるのだ」と、ベッシュ氏は語った。

業界関係者のなかには、この業界が力を持つようになるまで時間がかかると主張する者もいた。ブランド各社がソーシャルメディアを社内のどのチーム(マーケティングチーム、リサーチチーム、新たに結成したデジタルチームなど)に担当させればいいのかを判断するのに、ある程度の時間が必要だからだ。そしてこの数年間、企業の間でデータサイエンティストを採用し、社内のすべてのチームにデジタルを導入する動きが増えたことが、ソーシャルリスニングプラットフォームの必要性を拡大し、業界で勝者と敗者を作り出してきた。最大の勝者は、もっとも多くの資金を集めたスプリンクラーだといって間違いないだろう。

「ソーシャルリスニングは新しいものではないが、つい最近まで、これを理解していたのは若いマーケターやデジタルネイティブ世代だけだった。彼らは、キャンペーンがうまくいくかどうかを確かめるには、ソーシャルメディアの声に耳を傾ける必要があるとわかっていたのだ。いまは、マーケティング、消費者のインサイトの獲得、市場調査にも必要だと考えられている」と、リンクインフルエンスのCEO、ギョーム・デクギス氏はいう。

ソーシャルリスニングの価値

ソーシャルリスニングを手がける企業は、業界の統合が進むほど、数多くのケーススタディを蓄積し、ソーシャルリスニングが重要になる理由を示せるようになる。たとえFacebookの利用が落ち込んだり、データプライバシーに対する監視の目が厳しくなったりしてもだ。

ブランドウォッチで最高マーケティング責任者を務めるウィル・マックイーン氏によれば、世界有数のアイスクリームメーカーであるユニリーバ(Unilever)は、暑くなると人々がアイスを求めるという考え方が事実かどうか、テストしたことがあった。その結果、人々は天気が悪くて屋内にいるときのほうが、アイスを買うようになることがわかったという。

マインドシェア・ノースアメリカ(Mindshare North America)のリサーチおよびソーシャル担当ディレクター、ジェシカ・プラッセル氏によれば、同社はオンラインでの人々の会話を分析するのに自社技術を利用しているが、クライアントのニーズによっては、他社のプラットフォームを補完的に利用しているという。たとえば、リアルタイムの情報を増やしたいとか、複数のデータセットをひとつのシステムに統合したいといった要望があった場合にだ。

「ブランドはソーシャルリスニングの価値を認めている。コメントを評価したり、ブログやフォーラムで起こっていることを分析する以上のことができるからだ。消費者から無理に話を聞かなくても、彼らがどのような話をしているのかがわかる」と、プラッセル氏は述べている。

とあるブランドの活用事例

ソーシャルリスニングは、エージェンシーがこうした人々の会話に影響を与える方法を見つけ出すのに役立つものだ。プラッセル氏によれば、あるセレブが最近、彼女のクライアントの消費財(CPG)ブランドのことを冗談めかして語ったことがあった。彼女のチームは、その動画に対してリアクションを起こすかどうかの判断を迫られたため、そのセレブの発言に人々が賛同しているかどうかをソーシャルメディアで分析した。その結果、チームはこのジョークに乗ることを決定し、そのブランドのマスコットを使って同じような動画を作成したという。

「素早い決定ができたのは、ソーシャルリスニングの助けがあったからだ」と、プラッセル氏は語った。

もちろん、ソーシャルリスニングは、ブランドやエージェンシーが意思決定プロセスで利用する手段のひとつにすぎない。マインドシェアは、世界各地にある自社のオフィスに「ザ・ループ(The Loop)」と呼ばれる部屋を設置している。この部屋には大型ディスプレイが備え付けられているが、そこにはソーシャルリスニングのデータだけでなく、販売実績や業界予測のデータも表示されているのだ。

インサイト主導型へと進化

ソーシャルリスニングを手がける企業やマーケターは、今回の合併を歓迎している。

大手テレビネットワークに好感度測定などのサービスを提供しているキャンバス(Canvs)の創業者兼CEO、ジャレド・フェルドマン氏は、統合によって似たようなソリューションを開発する企業が少なくなるため、イノベーションが進む可能性が高まると述べている。

「この市場はインサイト主導型へと大きく進化している。何が起こっているのかを明らかにするよりも、そのインサイトから人々について何がわかるのか、将来についてどのような予測が成り立つのかを理解することが重要なのだ」とフェルドマン氏は語った。

真の統合は、まだ先の話

ソーシャルリスニングプラットフォームや業界全体の未来は、ソーシャルメディアから得られるインサイトと以前からある指標の組み合わせにも影響されると業界観測筋は考えている。

「真の統合は、新興企業、既存企業、従来型の測定企業、それにソフトウェア中心の企業を巻き込む形で起こらなければならない」と、ブランドウォッチのパーマー氏はいう。「我々は、顧客の声を聞くことのできる場所ならどこにでも顔を出し、消費者に関する膨大な知識を提供する必要があるのだ」。

Kerry Flynn(原文 / 訳:ガリレオ)