Snapchatが公式ストーリーを導入したのは2015年のことだった。だが、この機能はもっぱらリアーナのような有名人のみに使われていたと、エージェンシーの幹部たちは語る。そんなSnapchatが今回、公式ストーリーをインフルエンサーにも拡大した。その背景には、Facebookとインスタグラムの猛追が垣間見える。
グラフィックデザイナーのサイリーン・キアムコ氏(ソーシャルでは通称「CyreneQ」)は、Snapchatのフォロワー数が10万人を超えるインフルエンサーだ。2014年11月以来、Snapchat上で、ウォルマート(Walmart)、サムスン(Samsung)、バーガーキング(Burger King)といったブランドのインフルエンサーキャンペーンを実施してきた。
しかし、Snapchatの親会社のスナップ(Snap)は、インフルエンサー育成に積極的ではない。CyreneQ氏も、どうやればフォローと閲覧を増やせるのかについて、スナップから案内されたことはほとんどなかった。
だが、キアムコ氏は2017年8月23日(米国時間)、Snapchatから公式ストーリーアカウントを手配したいというメールを受け取った。これは、インスタグラムやTwitterにおける認証アカウントのようなものだ。つまり、Snapchatのユーザーがたとえば「アート」を検索した場合や、キュレーションされた「ライブストーリー(Live Stories)」のなかで、彼女のプロフィールが取り上げられるようになる。
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「大喜びしている」と、キアムコ氏は語る。「Snapchatは、以前はクリエイターやインフルエンサーをまったく認証しておらず、認証されるのは有名人のアカウントだけだった。数カ月前にはクリエイターに本当に興味を示していなかったのだから、これはスナップからの大きな一手だろう」。
メール内容
スナップからうれしいニュースです! あなたの公式ストーリーを手配したいと思います。認証アカウントのようなものです。
あなたが選ぶ絵文字トップ3を教えてください。
あなたのSnapchatアカウントでこのプロジェクトが進むことで、次のレベルに進まれることを本当に楽しみにしています。
インスタグラムへの移行
Snapchatが公式ストーリーを導入したのは2015年のことだったが、この機能はもっぱらリアーナやカイリー・ジェンナーのような有名人に使われていたと、エージェンシーの幹部たちは語る。そんなSnapchatが今回、公式ストーリーをインフルエンサーにも拡大したわけだ。
「Snapchatだけでやっているソーシャルスターたちは、ここしばらく、Snapchatに軽視にされているという苛立ちを表明し、インスタグラムのストーリーへと大挙して移っていた」と語るのは、 ウィー・アー・ソーシャル(We Are Social)でインフルエンサーとパートナーシップのマネージャーを務めるマリー・クレイブンズ氏だ。「ついにSnapchatが、インフルエンサーを取り戻して、その労をねぎらう試みを進めている」。
公式ストーリーのアカウントには特典がある。アカウント保有者が選んだ絵文字が名前の横に付き、特別な場合に特別仕様のフィルターが届く。いちばん大きいのはおそらく、検索結果で公式ストーリーアカウントの露出が高まる点だろう。キアムコ氏によると、ブランドにとってもソーシャルスターにとっても、Snapchat上でいかに見つけやすくするかが大きなハードルなのだ。

Snapchatからインフルエンサーに宛てたメールで説明されている、公式ストーリーの特典
スナップは、公式ストーリーが拡大中であり、これから数カ月間で「トップクリエイター」を増やすと認めた。トップクリエイターの定義については明らかにしなかった。
Snapchatの驕りと過信
スナップにとってこの1年は、Facebook傘下のインスタグラムに迫られ、厳しいものとなっている。5月の第1四半期決算報告では、総損失が22億ドル(約2400億円)で、ユーザー増が予想を下回ったことを明らかにした。
インフルエンサーの検索プラットフォーム、ハイパー(Hypr)のCEO、ギル・エイヤル氏は、Snapchatは2度の厳しい四半期を受けて早急に変わる必要があると考えている。エイヤル氏によると、同氏のエージェンシークライアントにおけるSnapchatでのインフルエンサーマーケティングは、この1年間で大きく減少しており、過半数がインスタグラムに転じている。Snapchatにアナリティクスがなく、また否定的なニュースがあるのが理由だ。
「プラットフォームにクールなところがあるのでインフルエンサーたちは居続けるだろう、という確信からインフルエンサーを完全にないがしろにしてきた結果、Facebookに出し抜かれたことをスナップは理解してきている」と、エイヤル氏は述べる。「Vineを覚えているだろうか? Vineも同じ間違いをおかし、インフルエンサーを迎え入れるのではなく疎外した」。
「遅すぎるかもしれない」
エージェンシーのアテンション(Attention)でプレジデントを務めるトム・ブオンテンポ氏は、Snapchatが公式ストーリーの特典を通じてインフルエンサーの支持獲得に努めているのは、停滞しているユーザー増加にテコ入れするためだろうと語った。それに、ソーシャルスターたちのコンテンツが増えれば、Snapchatにさらなる広告機会が生まれることになる。
「インスタグラムがストーリーをこれほど速く取り入れ、クリエイターたちがそちらに移っていくことになるとは、Snapchatは理解していなかった」と、ブオンテンポ氏は語る。「Snapchatは、オーディエンスの参加を維持するために、コンテンツクリエイターたちとの関係を変える必要が本当にある」。
一部のエージェンシー幹部は、すでに多くのクリエイターがほかのところで大きな基盤を築きはじめている現在、Snapchatがコンテンツクリエイターとの信頼を構築しようとしても、もう遅すぎるかもしれないと考えている。彼らはまた、スナップは公式ストーリーだけでなく、インフルエンサーたちに提供するアナリティクスツールも増やすだろうと予測している。
「いま、すでに(ソーシャルスターたちは)移動をはじめている。Facebookとインスタグラムのエコシステムが生み出しているマネタイズ機会と結び付きの大きさを考えると、(スナップが)対抗するのは難しい」と、インフルエンサーマーケティングのプラットフォーム、スピーカー(Speakr)の創業者でもあるCEO、マルコ・ハンセル氏は語った。
方針転換は功を奏するか?
Snapchatは、ソーシャルスターたちとの協力の仕方に関して進歩を見せている。キアムコ氏は2週間前、Snapchatのパートナーシップと製品プランニングチームに属する約5人の幹部とSkype会議を行ない、スナップのクリエイターとして自分が必要とする機能について議論をした。スナップのチームからは、このような会議をもっと開催したいという発言もあった。
「Snapchatが180度の転換を行っているのは本当にうれしい」と、キアムコ氏は語る。「彼らはコミュニティについて質問してきたし、どうすれば私たちのSnapchat体験がよりよいものになるのかに関心をもっていた。私だけではなく、ほかのクリエイターに話をしているとも言っていた」。
Yuyu Chen (原文 / 訳:ガリレオ)