Facebookが平均動画視聴時間の誇張という失態を軽視する一方で、Snapchat(スナップチャット)やTwitterなど競合プラットフォームの一部は、9月末にニューヨークで開催された広告の祭典アドバタイジングウィークに乗り込み、自社の優位性をアピールした。もちろん、Facebookを名指しはしないが。
Facebookが平均動画視聴時間の誇張という失態を軽視する一方で、競合プラットフォームの一部は、9月末にニューヨークで開催された広告の祭典アドバタイジングウィークに乗り込み、ソーシャルの巨人に対する自社の優位性をアピールした。もちろん、Facebookを名指しはしないが。
Snapchatの主張
たとえばSnapchat(スナップチャット)は、動画広告における音声の重要性を説いた。はじめてアドバタイジングウィークに出展した同社の最高戦略責任者、イムラン・カーン氏は、サウンドが大切だと指摘。その実証のため、2015年のホラー映画『ヴィジット(原題:The Visit)』の10秒の予告編を、音声オフと音声オンの2バージョンで再生した。
「控えめに言って、音声なしで再生される動画広告は、もはや動画ではない」と、カーン氏。「むしろ、動くバナーと呼ぶのがふさわしい」。
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カーン氏の発言の3カ月前、Snapchatは、同プラットフォーム上の動画(ユーザー生成コンテンツ、パブリッシャー制作コンテンツ、広告)の3分の2以上が音声オンの状態で視聴されていると発表した。この結果に、一部のマーケティング担当者は感銘を受けてきた。カーン氏のプレゼンのあいだ、映画会社ユニバーサルピクチャーズ(Universal Pictures)のデジタルマーケティング担当エグゼクティブバイスプレジデント、ダグ・ニール氏は、Snapchatが音声オンの状態を保って動画を配信していることを評価。「これは、ほかのソーシャルプラットフォームにはないことだ」と述べた。
Twitterの主張
これに負けじと、TwitterのCOOアダム・ベイン氏も、同社がローンチして間もないライブ動画プロダクトにおける広告の優位性を強調。同サービスにおける動画広告とは、「音声オンの動画、フルスクリーン動画、コンテンツ間のインタースティシャル動画広告」だという。
名指しこそしないが、両社とも明らかにFacebookに狙いを定めている。Facebookは1日の動画再生数が80億回を超えるまでに成長したが、ユーザーの大半はニュースフィード上で音声オフの動画を閲覧(あるいはスクロールして飛ばしている)。以前にも複数のパブリッシャーが、Facebook上の非ライブ動画の約85%は無音で再生されていると述べている(Facebookは8月、デフォルトで音声がオンになる動画のテストが初期段階に入ったと述べた)。
Twitterはさらに、提供する情報に関して、同社のライブ動画とFacebookの違い(そしてテレビとの類似点)を挙げた。それは、1分あたりの平均オーディエンス数の指標だ。Twitterはこれまでに、9月の木曜夜に行われた全米フットボール連盟(NFL)の2試合と、9月26日夜の大統領候補討論会で実施したライブストリーミングについて、総視聴回数とユニークビューワー数だけでなく、放送中の1分あたりの平均視聴者数を公表している。たとえば、最初にライブストリーミングを行った9月15日のNFLの試合では、1分あたりの視聴者数は平均24万3000人。2回目に実施した9月22日の試合では、平均32万7000人に増えたという。
「我々は(当社のプラットフォームを)オープンにするよう努め、できる限り多くの情報を提示するつもりだ」と、ベイン氏は語る。Twitterが1分あたりの平均視聴者数を公開するのも、こうした姿勢がひとつの理由になっている。「これは、ほかの誰もやっていないことだ。他社はオーディエンス数を出すだけで、透明性を欠いている」。
第三者機関との提携について
またしてもFacebook叩きに聞こえるかもしれないが、実際そうだ。先日、平均動画視聴時間を最大80%も誇張していたことを認めたFacebookに対し、マーケターやパブリッシャーからの批判が高まっている。ソーシャルメディアという「ユーザーを囲い込む(外部から利用状況が見えづらい)プラットフォーム」が公表するデータに対し、独立した第三者機関による測定や検証を求める声も多い。
説明責任をめぐる同様の問題に直面するSnapchatとTwitterは、モート(Moat)やインテグラルアドサイエンス(Integral Ad Science)といった第三者の測定ベンダーとのパートナーシップを強調している(ベイン氏いわく、Twitterはソーシャルネットワークのなかでいち早くモートを導入したとのこと)。
SnapchatやTwitterによるこうした動画への取り組みは、一部のマーケターから評価されている。とはいえ、マーケターの大半は、Facebookから予算を引き揚げるほどの大きな違いを感じていない。
だが、すべては規模の問題
「すべての広告に音声が必要なわけではない。差別化はいいことだが、Facebookへの好感度が下がるほどではない」と、アドバイイング企業メディアストーム(Media Storm)の最高デジタル責任者、チャーリー・フィオダリス氏は話す。「私がFacebook向けに制作したクリエイティブには、テキストだけ添えればいい。それでも動画だし、動画のインパクトがある」。
結局のところ、すべては規模の問題なのだ。Snapchatのデイリーユーザーは米国とカナダに6000万人いる。Snapchatが国別のデイリーユーザー数を公開したのは今回がはじめてで、全世界のデイリーユーザーは1億5000万人だ。これはインスタグラムに匹敵するが、そのインスタグラムはFacebookの広告ビジネス全体の一角を占めるにすぎない。Twitterの月間ユーザー数は3億1500万人。インスタグラムは5億人だ。
「規模こそが主要因だ」と、フィオダリス氏は指摘する。「だからこそ、GoogleとFacebookが(デジタル)広告費の85%を占めているのだ」。
Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)