記事のポイント Snapchatは2023年4月に新設したARエンタープライズ部門を閉鎖。ユーザーと広告主向けにAR体験への投資は続ける計画で、既存の契約には影響がないとしている。 Snapchatの初期のAR戦略はモバ […]
- Snapchatは2023年4月に新設したARエンタープライズ部門を閉鎖。ユーザーと広告主向けにAR体験への投資は続ける計画で、既存の契約には影響がないとしている。
- Snapchatの初期のAR戦略はモバイルAR技術に焦点を当てていたが、ウェブベースのARへの投資が必要だと認識。ジェネレーティブAIの成長による競争の激化でサービスの差別化が困難になっていると認めている。
- 広告主はSnapchatへの予算配分に慎重になっており、広告予算の縮小と厳格な審査の中で主力チャネルに焦点を当てる傾向が強まっている。
SnapchatによるARエンタープライズ部門閉鎖の決定は、同プラットフォームのAR戦略の進展に疑問を投げかけている。
2023年4月に新設されたARエンタープライズ部門は、SnapchatのAR技術を自社アプリに統合する企業を支援するというねらいがあった。だが、CEOのエバン・シュピーゲル氏の短信によると、小売業の顧客のニーズを満たすためにAR機能を拡張するのに必要な投資とジェネレーティブAIの成長により、Snapchatにとって「サービスの差別化」がより困難になったという。
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AIの成長によって差別化が困難に
こうした動きはあっても、Snapchatはまだ、ユーザーや広告主のためにAR体験への投資を計画している。SoFiスタジアムを本拠地とするNFLのロサンゼルス・ラムズ(LA Rams)の今シーズンやアメリカン航空(American Airlines)のような有名ブランドとの既存の契約は影響を受けない、とスナップ(Snap Inc.)でスポーツ関連の提携の責任者を務めるアンモル・マルホトラ氏は語る。コメントを求めたところ、アメリカン航空からは回答がなく、ロサンゼルス・ラムズはこの件についてコメントを避けた。
「ARの重要度を引き下げているわけではない」とマルホトラ氏は言う。「実際、AR広告での取り組みを強化し、Snapchatユーザーに提供される基本的なAR体験を向上するためにリソースを戦略的に再配分しつつある」
9月27日にスナップの従業員に送られたCEOのシュピーゲル氏の短信によると、ARエンタープライズ部門に関するスナップの初期戦略は、モバイルAR技術に焦点を合わせていたが、やがて、Snapchatは、「技術的に複雑であると同時に顧客にとって魅力に欠けるウェブベースのARをサポートするために段階的に」投資する必要があることを学んだという。
また、ジェネレーティブAI機能の成長により、AR試用体験をめぐる競争が激化したことで、Snapchatのサービスの差別化がより困難になった。
「ARはリストのトップではない」
SnapchatによるそれまでのAR体験への進出には、『ブラックアダム』や『シャザム!~神々の怒り~』といった、多額の予算がかけられた映画および美容ブランドのロレアル(L’Oréal)とのコラボレーションも含まれる。
「スナップのARは、カーハート(Carhartt)の有名なさまざまな色のビーニー(ツバなしのニット帽)をバーチャルで試着できるなど、クライアントが他のプラットフォームでは提供できない独特な消費者体験を生み出す方法を提供してきた」と、広告エージェンシーのジャニュアリーデジタル(January Digital)で顧客戦略およびサービス担当シニアディレクターを務めるジェレミー・エクス氏は語る。「それが、雑然とした広告の山をかいくぐって、クライアントのカテゴリーの空白地帯に躍り出る手段だった」。
エクス氏はさらに言葉を続ける。「法人向けARサービスが規模拡大に苦労しても意外ではない。ブランドが投資に関する決定で優先順位をつけなければならない世界では、AR体験は未決事項リストのトップではない。予算が巨額なブランドは別として、大半のブランドにはもっと大事な仕事がある。ジェネレーティブAIの最新の進歩に伴って、他のあまりに多くの魅力的なサービスが、この半年間にマーケターの優先順位リストに入ってきた」。
広告主はSnapchatへの投資に慎重
DIGIDAYで以前報じたように、(Snapchatには)限界があると認識しているため、広告主はSnapchatに予算を配分するのをますますためらうようになっている。また、今年は広告予算が縮小され、よりいっそう精査されていることから、広告主は、ARのような試験段階の分野よりも主力チャネルに注力している、とTBWA\Chiat\Day NYのデジタルおよびソーシャル担当エグゼクティブディレクター、アンソニー・ハメル氏は説明した。
「経済が不安定な時代には、ブランドはパフォーマンスマーケティングにより重点をおいてきた。その結果、2番手グループのプラットフォームや試験的媒体が苦戦してきたのは間違いない。ARに輝かしい未来があることにはほとんど疑いを抱いていない。だが、ARはまだ新興技術だ」とメカニズム(Mekanism)の最高ソーシャル責任者兼パートナーであるブレンダン・ガハン氏は述べた 。
[原文:Snapchat sunsets its AR Enterprise division as it vows to give advertisers AR tools]
Julian Cannon(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:分島翔平)