スナップ社(Snap)は、コマースにより深く入り込もうとしている。コレクションズ(Collections)といったショッピング可能な広告フォーマット、より精度の高い広告ターゲティング、そしてプラットフォーム内で直接販売を行う方法の導入と、ほかと比べてコマースを促進させる機能が盛りだくさんだ。
スナップ社(Snap)は、コマースにより深く入り込もうとしている。コレクションズ(Collections)といったショッピング可能な広告フォーマット、より精度の高い広告ターゲティング、そしてプラットフォーム内で直接販売を行う方法の導入と、ほかと比べてコマースを促進させる機能が盛りだくさんだ。
先日、Snapchat(スナップチャット)はショッピング可能なゲームをローンチした。これによって、アプリ内コマースをさらに進めた形だ。エンガジェット(Engadget)の報道によると、Snapchatはアディダス(Adidas)とパートナーを組み、限定ラインの野球用スパイクをプロモーションするという。その限定ラインのプロダクトを、Snapchat上のゲーム内で直接購入することができるのだ。
ほかにどのようなブランドとショッピング可能なゲームを制作するか、Snapchatは明かしていない。Snapchatのコマース部門グループプロダクト・マーケティングマネージャーであるキャスリーン・ガンバレーリ氏は、「ブランドが顧客と楽しく、誠実かつ、測定可能な方法でつながれるイノベーティブかつショッピング可能な体験をモバイル向けに促進したいと考えている」と、eメールで回答した。
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それでも、FacebookとGoogleと比較すると、スナップ社はターゲティングの洗練さと入札機能という点で劣っている。ブランドたちにアプリ内コマース機能に投資してもらうためには、広告プラットフォームを成熟させることが重要となるだろう。
D2C(Direct to Consumer)ブランドがFacebookとGoogleから広告支出を減らし、多様化させたいと考えているなかで、Snapchatには大きなチャンスが存在していると、以前も米DIGIDAYの兄弟サイトであるモダン・リテール(Modern Retail)は報道している。しかし、そのためには、ほかのプラットフォームと競争する必要があるだろう。そのなかでも特筆すべきは、ピンタレスト(Pinterest)だ。ピンタレストは新しいセールス部門を立ち上げ、D2Cブランドと直接取り引きをするなかで、より多くのD2Cブランドを引き寄せようとしている。
まだ初期段階のサービス
スナップ社がセルフサービス広告マネージャーを最初に展開してから、まだ2年しか経っていない。彼らの広告フォーマットは、ほかのデジタル広告プラットフォームと比較すると、まだ初期段階にある。そのため、これまでFacebookとGoogleに追いつくことが必要とされてきた。特にターゲティング・キャンペーン管理機能の展開において、だ。
ショッパブル(購入可能な)なAR広告といったアプリ内コマース機能への投資、そしてショッピファイ(Shopify)とパートナーを組んでの限定アカウント対象のアプリ内店舗のローンチといったことをSnapchatは行ってきた。しかし、ただシンプルに広告ユニットの種類を増やしたことが、Snapchatが行ったことのなかで、もっとも重要なことのひとつだった、とD2Cブランドをクライアントに抱えるエージェンシーたちは語った。
昨年9月、Snapchatはコレクション広告を展開した。これはブランドが複数のプロダクトをひとつの広告で見せることができる、カタログ形式の広告だ。ユーザーは、広告をタップして、プロダクトの詳細を得ることができる。また、最大3分の長さまで対応する長編動画形式の動画広告機能を導入した。Business Insider(ビジネスインサイダー)は、D2Cブランドは特にSnapchatディスカバー(Snapchat Discover)のストーリー広告に重きを置いて投資している、と報道した。
投資を増やした広告主の事例
D2Cアンダーウェアブランドであるミーアンディーズ(MeUndies)の成長戦略マネージャーであるメーガン・イップ氏は、年の前半と後半でSnapchat支出を倍増させたと、eメールで回答した。Snapchatがコンバージョン最適化をローンチしたあと、ミーアンディーズはSnapchat投資を増やしはじめたという。この機能は、昨年の6月に導入されたもので、ブランドたちはさまざまな種類のゴールを設定して、キャンペーンの最適化を行うことができるようになった。
イップ氏の回答によると、Snapchatがコンバージョン最適化をローンチする前は、「コンバージョンがない状態で、テストに5000ドル(約54万円)ほど支出していた」とのことだ。
「(コンバージョン最適化機能は)我々にとっては大きな変化だった。ただスワイプするだけのユーザーではなく、実際にプロダクトを購入する可能性があるユーザーを対象に最適化できるからだ」と、イップ氏は言う。Snapchatがコンバージョン最適化をローンチしてから、コンバージョンは増加している。とはいえ、イップ氏は具体的な数字は明かさなかった。
一部広告主のリアルな反応
しかし、すべてのブランドが望ましい結果を得られているわけではない。ヌーム(Noom)やアウェイ(Away)といったブランドと提携しているエージェンシー、デジガールショップ・メディア(Digigirlshop Media)のファウンダーであるカティア・コンスタンティン氏は、Facebookやインスタグラム(Instagram)と比較して、まだクリックスルー率(CTR)が高くないため、Snapchatにもっと投資するよう一部のクライアントを説得することができないと述べる。
「Facebookでは、2.5%のクリックスルー率を持つ動画ユニットを使える。Snapchatにおける現状の数字は把握できていないが、顧客にクリックさせるために必要なコストは、はるかに低い」と、彼女は言う。彼女のクライアントにとって、Snapchatのクリック単価はFacebookより70%安いと見積もった。
そのため、Snapchatは広告のシェアではFacebookとGoogleと比べて得ているパイは小さい。キャスパー(Casper)やコトパクシ(Cotopaxi)といったD2Cブランドが起用するワラルー・メディア(Wallaroo Media)のファウンダーであるブランドン・ドイル氏によると、彼のクライアントのうち約25%がSnapchat上で広告を購入しているという。そのうち、Snapchat上で費やされる予算は彼らの全体予算のうち10%であり、一方のFacebookは予算の40%、50%、60%を占めるという。
発展途上のプラットフォーム
SnapchatはFacebookと比べてユーザー層が若いこと、またピンタレストよりもオーディエンスの男女比が偏っていないことから、D2Cブランドの広告支出をより多く獲得するにあたって有利な点はある。イップ氏はFacebook広告のようなターゲティングオプションを増やして欲しいと述べる。また、コンスタンティン氏はSnapchatにより「スマート入札」の方向へとシフトして欲しいと考えているようだ。すべてのオークションにおいて、CPCやROASで最適化するために機械学習を利用するスマート学習に向けて、FacebookもGoogleも投資をここ数年増やしている。
「Snapchatはほかのプラットフォームが持っているようなターゲティング精度は持っていないと思う。しかし、ここ1年の成長を鑑みると、より多くの機能や改善が、今後12カ月で実現されると想像される」と、コンスタンティン氏は言った。
Anna Hensel(原文 / 訳:塚本 紺)