スナップ(Snap)は、スナップチャット(Snapchat)で重要なオーディエンスとのつながりを広げたい美容品ブランド向けに、新しい一連の広告およびマーケティングツールの運用を開始する。
米ニューヨークで9月14日に開催された2023年ビューティーサミット(2023 Beauty Summit)で、ライブでないビューティーレンズ(Lenses)、ビットモジ(Bitmoji)用のメイクアップドロップ、「トータルテイクオーバー(Total Takeover)」という広告ツールなどの開発を近日中に開始することを発表した。また、NYX(ニックス)との「ビューティーベスティー(Beauty Bestie)」というAR体験のパートナーシップを公表したとともに、ブランドがターゲットを絞ったメッセージングを行うために「My AI(マイエーアイ)」の会話から主要な検索用語を抽出する方法も公開した。
スナップは、人々が世界、お互い、そして好きなブラントと関わる方法を「変革する」可能性がARにあると考えていると、同社のアルカディアクリエイティブスタジオ(Arcadia Creative Studio)のグローバルディレクターを務めるレッシュ・シド氏はセッションで語った。サミットを通して、各ブランドはスナップチャットとのパートナーシップから得られた価値について語った。たとえばエスティローダー(Estée Lauder)はスナップが抱えている多数のミレニアル世代利用者を例に挙げた。そして、スナップはARにおいて、「テクノロジーとイノベーションを真に理解している」ブランドとさらに提携を進めていきたいと、シド氏は述べた。
独自の方法による投資回収
スナップは何年にもわたって、メイベリン(Maybelline)やロレアル(L’Oréal)などのブランドとともに、スナップチャットの利用者がファンデーションやマスカラなどの美容品を「トライオン」できるようなライブのAR(拡張現実)フィルターに取り組んできた。同ブランドによると、スナップチャットのカメラでは「毎秒」約67の美容フィルターが参照されている。美容品はスナップチャットの最大のカテゴリーのひとつで、フィルター(スナップチャットではレンズと呼ばれる)だけでなく、クリエイターと共同でのライブのビューティーショーなども主催しており、利用者はメイクアップ、スキンケア、ヘアケアなどの知識について「My AI」のメッセージングボットに質問できる。
スナップはこれらのツールによって、バイトダンス(Byte Dance)やメタ(Meta)などとは違う独自の方法で投資回収をめざしていると、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)のマーケティング、小売、テックブリーフィング担当シニアディレクターを務めるジェレミー・ゴールドマン氏は米モダンリテールに語った。
「ここで重要かつ興味深いことのひとつは、ブランドに対して新しい指標のことを考えさせ、そこから一定のROI(投資回収率)を定量化できることだ。ブランドがARの使用によって売上を増やせるなら、そのブランドは投資を次第に増やすようになるだろう」と、同氏は述べている。
ゴールドマン氏は、スナップショットの扱いにくい要素のひとつは、「プラットフォームの動力学」で、ユーザーはスポットライト(Spotlight)タブよりもレンズやチャットに傾倒することだと認めている。「重要なのは、その注目を新たな方法で収益化することだと思う」。
スナップの第2四半期の収益は10億6800万ドル(約1580億円)で、前年の11億1100万ドル(約1640億円)よりも減少している。しかし同時に、純損失は4億2200万ドル(約625億円)から3億3700万ドル(約499億円)に減らすことができた。毎日のアクティブな利用者数は前年比で14%増加し、3億9700万人に達した。
スナップによると、スナップチャットの利用者のうち2億5000万人以上は、毎日ARを利用しており、「長期的な観点から、特にARの長期的な可能性を実現するため重要な部分には投資を続けていく」と、シュピーゲル氏は決算発表で述べた。発表の一部と、新しいサービスをブランドが使えると予測される時期について、以下に記す。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
スナップ(Snap)は、スナップチャット(Snapchat)で重要なオーディエンスとのつながりを広げたい美容品ブランド向けに、新しい一連の広告およびマーケティングツールの運用を開始する。
米ニューヨークで9月14日に開催された2023年ビューティーサミット(2023 Beauty Summit)で、ライブでないビューティーレンズ(Lenses)、ビットモジ(Bitmoji)用のメイクアップドロップ、「トータルテイクオーバー(Total Takeover)」という広告ツールなどの開発を近日中に開始することを発表した。また、NYX(ニックス)との「ビューティーベスティー(Beauty Bestie)」というAR体験のパートナーシップを公表したとともに、ブランドがターゲットを絞ったメッセージングを行うために「My AI(マイエーアイ)」の会話から主要な検索用語を抽出する方法も公開した。
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スナップは、人々が世界、お互い、そして好きなブラントと関わる方法を「変革する」可能性がARにあると考えていると、同社のアルカディアクリエイティブスタジオ(Arcadia Creative Studio)のグローバルディレクターを務めるレッシュ・シド氏はセッションで語った。サミットを通して、各ブランドはスナップチャットとのパートナーシップから得られた価値について語った。たとえばエスティローダー(Estée Lauder)はスナップが抱えている多数のミレニアル世代利用者を例に挙げた。そして、スナップはARにおいて、「テクノロジーとイノベーションを真に理解している」ブランドとさらに提携を進めていきたいと、シド氏は述べた。
独自の方法による投資回収
スナップは何年にもわたって、メイベリン(Maybelline)やロレアル(L’Oréal)などのブランドとともに、スナップチャットの利用者がファンデーションやマスカラなどの美容品を「トライオン」できるようなライブのAR(拡張現実)フィルターに取り組んできた。同ブランドによると、スナップチャットのカメラでは「毎秒」約67の美容フィルターが参照されている。美容品はスナップチャットの最大のカテゴリーのひとつで、フィルター(スナップチャットではレンズと呼ばれる)だけでなく、クリエイターと共同でのライブのビューティーショーなども主催しており、利用者はメイクアップ、スキンケア、ヘアケアなどの知識について「My AI」のメッセージングボットに質問できる。
スナップはこれらのツールによって、バイトダンス(Byte Dance)やメタ(Meta)などとは違う独自の方法で投資回収をめざしていると、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)のマーケティング、小売、テックブリーフィング担当シニアディレクターを務めるジェレミー・ゴールドマン氏は米モダンリテールに語った。
「ここで重要かつ興味深いことのひとつは、ブランドに対して新しい指標のことを考えさせ、そこから一定のROI(投資回収率)を定量化できることだ。ブランドがARの使用によって売上を増やせるなら、そのブランドは投資を次第に増やすようになるだろう」と、同氏は述べている。
ゴールドマン氏は、スナップショットの扱いにくい要素のひとつは、「プラットフォームの動力学」で、ユーザーはスポットライト(Spotlight)タブよりもレンズやチャットに傾倒することだと認めている。「重要なのは、その注目を新たな方法で収益化することだと思う」。
スナップの第2四半期の収益は10億6800万ドル(約1580億円)で、前年の11億1100万ドル(約1640億円)よりも減少している。しかし同時に、純損失は4億2200万ドル(約625億円)から3億3700万ドル(約499億円)に減らすことができた。毎日のアクティブな利用者数は前年比で14%増加し、3億9700万人に達した。
スナップによると、スナップチャットの利用者のうち2億5000万人以上は、毎日ARを利用しており、「長期的な観点から、特にARの長期的な可能性を実現するため重要な部分には投資を続けていく」と、シュピーゲル氏は決算発表で述べた。発表の一部と、新しいサービスをブランドが使えると予測される時期について、以下に記す。
「撮影後フィルター」
これまでのスナップチャットのARレンズは、利用者が見た目やエフェクトをリアルタイムで試せるものだった(「犬耳」や「虹を吐く」エフェクトがその例だ)。スナップは新たに「撮影後フィルター」機能を追加した。これは利用者がカメラを使用してすでに撮影した画像に、あとから特殊効果を適用できるものだ。
このような体験は、美容品ブランドにとって「静的な画像以外のものを提示する新しい方法」になると、スナップのCPG(消費者向けパッケージ商品)責任者を務めるミシェル・ネビット氏は米モダンリテールに語った。「ブランドはカスタムのクリエイティブを作成して追加できる」。多くの場合、これはステッカーやアニメーション付きグラフィックだと、同氏は説明している。スナップチャットの利用者はこれらの画像を保存したり、友人に送信したりできる。
ビットモジの「ビューティードロップ」
コミック作成アプリのビットストリップス(Bitstrips)は、利用者がカートゥーンのアバターを作成できるステッカーアプリとして、ビットモジを2014年に公開した。スナップチャットは2016年にビットストリップスを1億ドル(約148億円)で買収したのち、その機能を自社アプリに組み入れ、利用者がメッセージにビットモジのステッカーを含めて送信したり、スナップに貼り付けたりできるようにした。
ビットモジの利用者はファッションを取り換えられるが、ブランドのメイクアップルックをテストすることはできなかった。しかし、これはビューティードロップ(Beauty Drops)という新機能によって変わることになる。スナップチャットのビューティードロップは、現実のドロップに対応するもので、リップスティック、チーク、アイシャドウなど期間限定の商品を仮想リリースする。利用者はドロップを見つけてクローゼットに保存し、自分のアバターに着けることができる。それによって、チャットからスナップマップまで、そのユーザーのビットモジが通用するすべての場所で、その外見が適用されることになる。
スナップはエルフビューティー(e.l.f. Beauty)と独占パートナーシップを締結し、最初のドロップは数カ月以内にリリースされる予定だ。
拡張された「My AI」ターゲット指定
スナップは2月に、スナップチャットアプリ内に搭載された「My AI」という新しいチャットボットをリリースした。同社によれば、1億5000万人を超える人々が100億を超えるメッセージを「My AI」に送信した。今日までに2300万を超える会話が美容に関するもので、利用者は「髪を何色に染めたらいいだろう?」や「ネイルポリッシュを取り除くにはどうすればいい?」といった質問をしている。
スナップは現在、マーケティングのターゲットを指定するためにAIキーワードをブランドと共有する方法をテストしはじめている。現在のところは、広告主に対して、スナップチャットライフサイクルカテゴリーズ(Snapchat Lifestyle Categories、SLC)と呼ばれるもの、つまり、スナップチャット利用者が見ているコンテンツを反映したメインカテゴリーに関する見識を提供している。今は「My AI」との会話で得られた「ヘアケア」、「スキンケア」などのキーワードをそれらのSLCに折り込むことができる。これによって、「スナップチャットの利用者がアプリで見る広告の関連性が増大する」と、同社は述べている。
それに加えて、「My AI」内のスポンサー付きリンクにより、「現在の会話に関連するパートナーとコミュニティを結び付ける」早期テストも行っていると、同社は述べている。これによってパートナーが「自社の商品に関心を示したスナップチャットの利用者とつながる」ために役立つと、同社はブログ投稿で述べている。
これらの機能は、スナップが注目をさまざまな形で収益化するのに役立つよう設計されているようだと、ゴールドマン氏は述べている。たとえば、「キーワードを探せる、または感想を見られるなど、すべての注目を把握し、対象のブランドの商品を販売できる」。
より相互的なパートナーシップ
スナップは11月、「ビューティーベスティー」と呼ばれる新しいパートナーシップをNYXとのあいだで開始した。これによって利用者は、NYXのプロのメイクアップアーティストによりデザインされ、利用者のカラーパレットや気分に基づいておすすめされる毎日のメイクアップルックを試してみることができる。
利用者は「ビューティーベスティー」のツールを開き、頭を左右に傾けて「サンセットシェード」や「ひんやりしたトーン」などのプロンプトを選ぶ。さらに利用者がオプションを選ぶと、「ビューティーベスティー」は特別な「今日のルック」を提示する。利用者が「ビューティーベスティー」を長く使用するほど、個別化されたルックがおすすめされる。利用者はルックを保存して評価してから友人に送ることができると、アルカディアのシド氏は米モダンリテールに語った。
「これらのルックの素晴らしい点は、ハロウィンの時期ならハロウィン向けになることだ。プロムの時期にはそれに応じたルックになる。レッドカーペットのシーズンなら、レッドカーペット用のルックから選ばれる。このように、トレンドのカルチャーに応じたルックを選ぶことができる」と、同氏は述べている。
スナップがNYXとともに「ビューティーベスティー」の開発をはじめたのは2月で、ARブランド付き体験のより相互的な例だとみなしている。「ビューティーベスティー」は買い物可能でもあり、商品がおすすめされるときは「もっと見る」ボタンも表示され、NYXプロフェッショナルメイクアップ(NYX Professional Makeup)ウェブサイトにリンクする。
[原文:Snap announces new tools designed to get more beauty brands investing in its AR experiences]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Snap