多くのブランドにとってソーシャルメディア上の認証バッジは、彼らが真っ当なビジネスを行なっていることを示すものだ。そんななか、インスタグラムの認証バッジは、すべてのプラットフォームのなかでもっとも排他的なものとなっている。エージェンシーのトップによると、インスタグラムの秘密主義と選り好みは強まるばかりだという。
多くのブランドにとってソーシャルメディアのプラットフォーム上の認証バッジは、彼らが真っ当なビジネスを行なっていることを示すものだ。そんななか、インスタグラムの認証バッジは、すべてのプラットフォームのなかでもっとも排他的なものとなっている。エージェンシーのトップによると、インスタグラムの秘密主義と選り好みは強まるばかりだという。
複数のエージェンシーによると、エージェンシーやブランドが認証バッジを得るための主な方法は、彼らのインスタグラムアカウント(正規アカウント)のなりすましが存在していること、あるいは偽アカウントが今後できる可能性についてをインスタグラムのレップに証明することだという。認証バッジを求める規模の大きなブランドであれば、その企業規模や人気を引き合いに出すことで、偽アカウントが彼らになりすます可能性があることを示せる。
Facebookやインスタグラムとの関係性を強めたり、多額の予算をつぎ込むのもひとつの方法だ。「正直いって、(認証バッジを得るうえで)一番簡単な方法は、広告費用を投入することだ」と、デジタルエージェンシーのクラウドタップ(Crowdtap)のCEO、マット・ブリットン氏は語る。
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だが、規模の小さいブランドにとっては、何者かによって作られた偽アカウントが彼らのアイデンティティーを盗もうとすることは、そう起こらないため、認証バッジへの道のりは遠くなる一方だ。
これまでの経緯
2014年12月、インスタグラムはユーザーによる正規アカウントのなりすましを防ごうと、ブランドやセレブに対して認証バッジを導入した。ブリットン氏によると、以前までユーザーはFacebookやTwitterと同様のプロセスで認証を申請できたという。だが2015年9月、インスタグラムは突然、ユーザーからのバッジ申請を拒否しはじめ、エージェンシーやブランドに対しては、プラットフォーム上で代表者に話を通すという選択肢を残した。現在、プラットフォームのヘルプページには、「現在、認証バッジの申請・購入を行うことはできません」と記されている。
ワンダーソース(Wondersource)のメディアマーケティング部門でアソシエイトディレクターを務めるアリソン・ブリート氏は、インスタグラムの認証バッジを手に入れるために新興ブランドとともに働いているが、昨年からこのプロセスがどんどん不可思議で融通の利かないものになっていることに気づきはじめた。そして彼女は、2016年の初頭にクライアントがFacebookとインスタグラムの双方のプラットフォームで認証バッジを得る際に、インスタグラムとのやりとりはなく、Facebookのレップと直接連絡をとっていたことを思い返し、こう語った。
「Facebookとインスタグラムは同じ会社なので、Facebookで認証を得ることが近道だといわれた」。基本的に、ブランドがFacebookで認証バッジを受けるということは、インスタグラムでの認証バッジも得られることを意味していたと、ブリート氏は語る。しかしいまとなっては、Facebookのレップから「認証された」からといって、必ずしもインスタグラムでの認証バッジを得られるわけではなくなってしまった。現在クライアントとともにそのプロセスに取り組んでいるブリート氏は、「いまや簡単ではなくなった」と語る。「彼らは2つのプラットフォームを分けて話をするようになった」。
エージェンシーはまた、ブランドが認証されたかどうかも知らされなくなったことを主張している。その代わりに、ブランドが認証バッジを得るために動いているかどうかに関わらず、アカウント上に認証バッジが無作為に表示されるようになったという。
ステータスの象徴
数多くのエージェンシーのトップによると、インスタグラムで認証されるということは、ブランドにとって非常に重要だという。特に良く知っているブランド名の横に青いバッジがあることが、インスタグラムのユーザーにとって当たり前となったいま、この青いチェック柄のバッジは、ブランドに対する消費者目線での信頼感を与えている。「ユーザーは認証されていないブランドへのリーチに消極的になるかも知れない」と、ディジタスLBi(DigitasLBi)でソーシャル戦略のシニアバイスプレジデントを務めるジル・シャーマン氏は語る。
認証バッジを得ることは業界内のあいだでのブランドの信頼性を高めるためにも役立つ。「誰かがなりすましたくなるような、正真正銘のブランドとして認識されている、ということは業界の認知を得るうえで重要なことだ」と、ブリート氏は語る。
さらに、認証バッジを得たブランドは、たとえばインスタグラムのストーリー上の外部リンクのような、アカウントのマネタイズに役立つようなインスタグラムの機能にいち早くアクセスできる。インスタグラムのアルゴリズムは、認証されたブランドのコンテンツを目に付く良い場所に配置したり、エンゲージメントにおいても有利になるように仕向けているとの噂もあると、エージェンシーのハイパー(Hypr)のCEO、ジル・エヤル氏は語る。
デジタルエージェンシーのヒュージ(Huge)でマネージングディレクターを務めるジェイソン・シュロスバーグ氏によると、ブランドが認証されていない場合には、そのアカウントが認証に値するほど重要なものではないというメッセージが送られるという。「認証自体がそのブランドやセレブに『価値がある』ことを意味するようになった」と、彼は語る。
認証バッジを求めるあまり、姑息な手口を使う者も出てきている。9月はじめ、マッシャブル(Mashable)は、インスタグラムに通じている仲介業者が認証のために最大1万5000ドル(約167万円)を要求する闇取引があったことを暴露した。だが、このやり方は危険を伴う。最大7000ドル(約78万円)で認証バッジを販売している「ジェームズ」という名前のインフルエンサーがマッシャブルに語ったところによると、インスタグラムはこうした取引に関わった者を解雇しているという。1年前は、1週間で5人にインスタグラムの認証バッジを渡すことができたが、現在は1週間に2人だけとなっている。
ブランドは自身のブログやインスタグラムで、認証を得ることが困難になっていることを批判してきた。クリエイティブエージェンシーのマーカス・トーマス(Marcus Thomas)でPRアカウントのスーパーバイザー兼コンテンツストラテジストのアンバー・ボーイズ氏は、ホームエディット(The Home Edit)というハウスマネージメントの商材を扱うeコマースのブランドをインスタグラムでフォローしている。彼女によると、このブランドは数週間前、認証がされないことに対する不満を自身のインスタグラムストーリーでぶちまけているのを見たという。その後、ホームエディットは認証バッジを手に入れたが、これはブランドが声をあげたからだとボーイズ氏は考えている。米DIGIDAYはこのブランドからコメントをもらうことはできなかった。
「正式なシステムがない」
インスタグラムの認証プロセスは謎に包まれているため、エージェンシーはその理由を知ることができない。「正式なシステムがなく、すべては舞台裏で行われている」とシュロスバーグ氏は語る。
専門家の意見では、プラットフォームがより多くのビジネスを引き付けるようになってくるにつれ、インスタグラムは認証システムを完璧にコントロールすることでブランドのなりすましアカウントが初期の頃のように蔓延しないことを保証したいのだという。
デジタルエージェンシーのドラムロール(Drumroll)でマーケティングやビジネス開発部門でディレクターを務めるステファン・ボイドック氏によると、インスタグラムは認証プロセスを厳しくしているが、アプリケーションのプログラミングインターフェースの認証プロセスに対しても同じことを行なっているという。インスタグラムが認証プロセスを厳しくしているかどうか、また受けている認証依頼の数などは教えてはくれないだろうが、とあるスポークスマンは「スパムや偽アカウント、そしてその他不正を重大問題として扱っている」と語った。
さらなる意見として、インスタグラムはすべての申請に目を通す時間がない、ということがある。実際、ビジネスは驚異的なスピードでインスタグラムにのしかかっている。eマーケター(eMarketer)によると、2017年、アメリカのビジネスの71%近くがインスタグラムを導入しているが、これは49%だった2016年の2倍近い数字だ。7月末、インスタグラムは1500万のビジネス用のプロフィールがあり、3月の800万から増えたことを発表した。ビジネスユーザーが増えるにつれて、より多くの認証依頼を受けていることで、新興ブランドが認証を得ることが困難な状況となっていると、エヤル氏は語る。
専門家の意見では、インスタグラムの認証システムは自動化されておらず、それぞれのアカウントは人の手によって審査されるため、すべての新しいビジネスにとって、認証を得るのは至難の業だ。それに加え、インフルエンサーやセレブからの認証依頼もある。インスタグラムが認証バッジを導入したときのユーザー数は300万人だったが、現在は700万人のユーザーを抱えている。「インスタグラムは申請で溢れかえっているに違いない」と、シュロスバーグ氏は語る。
認証アカウントの発行を厳しくしているプラットフォームはインスタグラムだけではなさそうだ。ブリート氏は、最近はTwitterの認証プロセスも面倒になってきている様子が見てとれるという。3カ月ほど前、ワンダーソースはとあるブランドのTwitterアカウントの認証バッジをプラットフォームの代表に依頼した。ブリート氏によると、代表の回答は、このブランドのアカウントはいくつかの異なるチームによる審査が行われる、というものだった。こうして「いくつかの扉は閉められた」状態になったが、このブランドはいまだに認証を得られていない。「これらのプラットフォームはより信頼性の高い認証方式を模索していて、申請者に対して簡単にはバッジを与えなくなっている」とブリート氏。「これはもう、インスタグラムだけの話ではなくなっている」。
Ilyse Liffreing(原文 / 訳:Conyac)