Medium のサブスク事業は、いかに成長してきたか?:シボーン・オコナー氏の挑戦

現在ブログプラットフォーム、Medium(ミディアム)の編集担当第1バイスプレジデントを務めるシボーン・オコナー氏は2017年秋、タイム(Time)誌の編集長のポストについていた。産休に入ったところで、大きな変化を求めていた。それはなんでもよかったが、Mediumの採用担当者から電話がかかってきて、新しい仕事について話を聞かないかと言われたとき、チャンスに飛びついた。

オコナー氏は、Mediumの創設者イブ・ウィリアムズ氏と、Mediumは広告から離れるという彼の決断を賞賛していた。その決断は、たくさんのパブリッシャーをプラットフォームに招きいれたあとで、レイオフと集中的な精査、そののちには戦略の放棄という大仕事につながった。オコナー氏もまた、リスクをとる準備ができていた。

オコナー氏は、「その頃の私は、キャリアのなかで大きな変化を求めていた。広告をベースにしたモデルのさまざまな制約に、フラストレーションが溜まる一方だった」と話す。

2017年はじめに広告からサブスクリプションへと収入の軸足を変えたことは、ベンチャーキャピタルで1億3200万ドル(約146億円)を調達したが、収入に関しては見せられるものがほとんどないMediumにとって危険な賭けだった。

Mediumに入って半年以上経ったいま、オコナー氏は自分の選択に間違いなかったと確信している。コムスコア(comScore)によると、Mediumの7月のトラフィックはほぼ2倍になり、ユニークユーザーは1300万人に達した。さらに重要なのは、月額5ドルを支払っているMediumの購読者の数は160%増え、95%の定着率を維持していると、Mediumはいう(同社は、予定より早く目標を達成したと言っているが、具体的な数字は明かそうとしなかった)。

この成長を牽引しているのが、プロとアマチュア、両方によるコンテンツのミックスだ。Mediumの広報担当者は、2018年1月~7月にMediumはコンテンツに200万ドル(約2億2000万円)を支出したという。そのほとんどはMediumの寄稿者プログラムの参加者に支払われている。ライターへの報酬は、読者の反応に基づいて購読料から支払われる。残りは健康や政治、テクノロジーなどのテーマごとの契約ライターに行く。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)などのパブリッシャーが提供するコンテンツに支払われるのは、ほんのわずかだ。

新たなアイデンティティの創出

オコナー氏の仕事は、読者が読みたいと思うコンテンツをプロ・アマチュア両方から集めることと、毎週5万人のライターが利用する、アルゴリズムで動くプラットフォームに人間によるキュレーションや編集判断を持ち込む方法を見つけ出すことだ。

編集とプラットフォームのアイデンティティのバランスをどうとるか、ほかのプラットフォームが抱えるのと同じ問題に、Mediumも直面している。同時に、既存のオーディエンスに対するサービスと新しいオーディエンス獲得に向けての投資、どちらにすべきかを決めなければならない。

「私は毎日、気がつくとコンテキストスイッチをたくさんやっている」と、オコナー氏は語る。「1日1日が大きく違う。それは私が部門横断的な仕事をしているからでもあるし、私が戦略を考え、同時にストーリーを編集し、人間を管理しているからでもある」。

Mediumでのオコナー氏の役割は、以前にやっていたことと似ているが、彼女がメディアの世界で20年間やってきたこととは違っている。

オコナー氏にとって馴染みのあることは、たとえば健康などの特定のテーマ分野にMediumが参加する手助けをしてくれる編集者を探して、群雄割拠のデジタルメディア界でMediumが競争に打ち勝てるようにすることだ。それはまた、風変わりな賭けをするという意味でもある。Mediumには、それを出版できると本の専門家に保証させる責任を一手に負うコミッショニングエディターがいる。

パッケージングやパーソナライズを通じての購読者探し

オコナー氏は、90人いるMediumのフルタイム従業員のおよそ20%を監督する立場にある。ウィリアムズ氏は、社内での重要性を考えるとオコナー氏のチームは比較的小さく、「もう少し拡大」することになるだろうと言っている。

オコナー氏にとってあまり馴染みのない仕事は、人々に購読させるコンテンツのライブラリー作りと、弾み車になる寄稿者プログラムの開発だ。このプログラムを通じてより多くのライターがより多くのコンテンツを制作し、さらに多くの購読者を惹きつけ、彼らが支払う購読料でさらに多くのライターを引き込もうというのだ。

読者を長くエンゲージさせるために、オコナー氏は、Mediumの製品担当バイスプレジデントであるマイケル・シッピー氏とともに、パッケージ化や配信の工夫を通じて、読者が見るユーザー生成コンテンツとプロが書いたコンテンツの割合のバランスを取っている。

ユーザー生成コンテンツを際立たせるために、オコナー氏のチームは2018年8月、コンテンツを雑誌にまとめ始めた。有害な男らしさを特集した号「マン・インタラプテッド(Man, Interrupted)」は8月はじめに登場した。

配信はもうひとつの要素だ。雑誌の創刊号に掲載したコンテンツをユーザーが確実に見るように、Mediumは、毎日配信するニュースレターに雑誌の一部を差し込んだ。

「製品は、いままで私が関わってきた何よりもはるかに洗練されている」と、オコナー氏。

パーソナライズは、購読者とそうでない人、どちらに対しても重要な戦略だ。オコナー氏とシッピー氏は2018年はじめにホームページのパーソナライズを止める決断をしたが、それ以外のMediumの製品――電子メールのニュースレターやアプリのコンテンツ、お薦め記事――の表面はすべて、何らかの形でパーソナライズ化されている。そして、パーソナライズ化されたコンテンツに神経をとがらせているパブリッシャーもいるが、オコナー氏は、トピックをベースにしないパーソナライズの方法もあるという。「我々がお薦めコンテンツを選ぶ方法はもっと洗練されている」。

オコナー氏にとってもうひとつの課題は、人々がそれに対してお金を払いたくなるくらいまでMediumの認知度を上げて、自己表現のためのプラットフォームとしてこれを使うことが快適だと世界中の人が思うようにすることだ。

「どれかひとつをすることは、もっと簡単だろう」とウィリアムズ氏。「でもそれだと、製品レベルか文化レベルのどちらかが不自然になる」。

人間的要素の導入

他のプラットフォーム、たとえばFacebookは、プロセスに人間の編集者が関わることについて曖昧な姿勢を示しているが、ウィリアムズ氏は、技術には限界もあることから、Mediumのエディトリアル製品に人間的要素を追加すると決めた。機械はストーリーの平均スクロール深度や読んでいた時間、シェア数、ハイライトを検知できるが、そのストーリーが実際にブランデッドコンテンツなのか、単なるアグリゲーションなのかを判断することは不得手だ

ウィリアムズ氏はさらに、2017年春にサブスクリプションモデルに軸足を変えたあとで、消費が購読に直接つながっていないことにも気づいた。

ウィリアムズ氏はこう語る。「人々が消費していると我々が以前思っていたものは、人々がお金を払うものと直接関係していないということがわかった。そこで我々は、人間によるキュレーションや人間の判断により重点を置くことに決めた」。

オコナー氏は、パーソナライズ化と人間による判断、両方に価値を見出している。「私には、この種の技術(パーソナライズ化)が存在するところで働いた経験がない。だが、まさしくこれがビジネスを前進させる力なのだ」と、オコナー氏は話す。オコナー氏は8月後半に、個人的なアドバイスを含むコンテンツの発行を開始するつもりでいる。そして、秋にはそれをまとめた書籍をMediumで出す予定もある。

「これをやっているあいだに、どこに空きスペースがあるかがわかってくるだろう」と、オコナー氏は語った。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)