Shopify(ショッピファイ)は、マーチャント(加盟店)により多くのB2Bツールを提供するため、卸売プラットフォームのフェール(Faire)との関係を強めている。
フェールは9月27日、Shopifyが同社の株主になったことを発表したが、契約の正確な条件は明らかにしていない。この契約の一環として、テック大手であるShopifyは、自社のマーチャントに対し、新しい卸売顧客を探すためにフェールのプラットフォームを使うよう推奨する。またこの契約により、フェールの既存の売り手はShopifyのPOSシステムにアクセスできるようになる。この契約は、ShopifyがD2Cウェブサイトに留まらず、より多くの場所で販売する大規模なマーチャントを取り込もうと、グロシエ(Glossier)やブルックリネン(Brooklinen)などの企業が独自のB2B戦略を構築するのを支援するツールを作り出そうとしている時に実現したものだ。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
Shopify(ショッピファイ)は、マーチャント(加盟店)により多くのB2Bツールを提供するため、卸売プラットフォームのフェール(Faire)との関係を強めている。
フェールは9月27日、Shopifyが同社の株主になったことを発表したが、契約の正確な条件は明らかにしていない。この契約の一環として、テック大手であるShopifyは、自社のマーチャントに対し、新しい卸売顧客を探すためにフェールのプラットフォームを使うよう推奨する。またこの契約により、フェールの既存の売り手はShopifyのPOSシステムにアクセスできるようになる。この契約は、ShopifyがD2Cウェブサイトに留まらず、より多くの場所で販売する大規模なマーチャントを取り込もうと、グロシエ(Glossier)やブルックリネン(Brooklinen)などの企業が独自のB2B戦略を構築するのを支援するツールを作り出そうとしている時に実現したものだ。
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直販・卸売業務をシームレスに
2017年に創設されたフェールは、店舗でより多くの商品を扱いたいと考えている独立系小売店と、卸売ビジネスでより多くの販売先を探しているブランドとを結び付けてきた。現在は10万以上のブランドと取引しており、同社によると、合わせて1000万点近くの商品を取り扱っているという。フェールの収益は、プラットフォームで完了した取引に課せられる手数料から得ている。
フェールの共同創設者でCEOを務めるマックス・ローデス氏によれば、Shopifyは10カ月以上前に、より密接なパートナーシップについて交渉するためフェールに連絡してきたのという。この契約は、Shopifyがフェールを「卸売のリーダー」であり、マーチャントに推奨したい業者であることを認める「強力な認証」だと、同氏は語る。
「Shopifyにもっとも期待している理由は、当社のマーケットプレイスの両側に存在する小売業者やブランドの多くが、Shopifyのユーザーでもあるということだ」と、同氏は述べる。ブランド側と小売業者側の両方で、フェールとShopifyの顧客が「かなり重複している」といい、「我々双方にとって拡大している」と付け加えた(ローデス氏は、それ以上の詳細は語らなかった)。
さらに、Shopifyがフェールの株主になるということについて、「Shopifyが我々を企業として信用し、我々がブランドと小売業者に対する卸売の未来を代表しているという事実の裏付けだ」と、ローデス氏は述べている。
「フェールとの戦略的なパートナーシップによって、Shopifyのマーチャントがフェールの卸売マーケットプレイスを通じて新しい卸売バイヤーを簡単に見つけられるようにし、小売業者がフェールの大規模なブランドネットワークからシームレスに商品を仕入れできるようにすることで、B2Bコマースを拡張するという我々の戦略をさらに推進できる」と、Shopifyの商品ディレクターを務めるアニーカ・カーン氏はプレス声明で述べた。
卸売事業を刷新
この投資は、Shopifyがこの18カ月にわたって、より多くのB2Bマーチャントに対応するため、製品に変更を加えてきたなかで行われた。6月には卸売事業を刷新し、Shopify Plus(ショッピファイプラス)のマーチャントが、消費者向けビジネスに使用しているのと同じプラットフォームから「B2B on Shopify(ビーツ―ビー・オン・ショッピファイ)」を使ってほかの事業者に商品を販売できるようにした。また昨年は、米国のB2Bベンダーがセルフサービスで決済できるよう、バランス(Balance)プラグインを導入した。1月には大規模なエンタープライズ小売業者向けに、コンポーザブル・コマース・スタックを提供し、チェックアウトなどShopifyのコア機能のどれを使うかを選択できるようにした。
フェールとの統合は、マーチャントと提携するB2BソフトウェアプロバイダのいくつかにShopifyが出資する最新の例でもある。昨年には、クラビヨ(Klaviyo)をShopify Plusのマーチャント向けの推奨メールソリューションパートナーにした。それと引き換えに、データ収集およびマーケティング自動化プラットフォームであるクラビヨの3%の権利を獲得したと、インフォメーション(The Information)が報じた。またShopifyは、貨物転送サービスプロバイダのフレックスポート(Flexport)の権利も13%保有している。
この新しいパートナーシップの一環として、Shopifyを使用しているブランドは、完全に統合された1つのフェール販売者チャネルを使って、すべての卸売パートナーへの注文を管理できるようになる。さらに、フェールが作成するストッキスト(Stockist)マップを自社ウェブサイトに掲載することができるようになり、買い物客はそのブランドの商品を扱っている近くの店舗を確認することができる。
「このような統合によって、フェールで商品を購入すると、自動的に自社のShopifyのPOSに直接インポートされるように設定できる。これで多くの時間を節約でき、はるかに効率的となる。これは、我々の顧客の作業を簡単にする方法として多く求められている機能のひとつだ」と、フェールの最高商品責任者を務めるアミー・ボラ氏は述べた。
Shopifyとフェールをつなげるユーザー体験
マーチャントはこれまで、卸売で大量に注文した商品をShopifyで認識させるため、手作業でデータを入力することに多くの時間を費やす必要があった。「Shopifyのようなプラットフォームとフェールをつなげるユーザー体験はこれまでなかった」とガートナー(Gartner)のディレクターアナリストを務めるカッシー・ソチャ氏は述べている。
クロスセリングプラットフォームのコンビクショナル(Convictional)の共同創設者でCOOを務めるクリス・グルーシー氏は、フェールとの契約は、「Shopifyが研究開発の焦点をB2Bコマースではなく、B2Cコマースに当てることをしっかりと選択していることを示すものだ」としている。同氏は、Shopifyが「B2Bマーケットプレイス機能について、競合力のある製品を開発するのではなく、外注している」と語る。実のところ、コンビクショナルはShopifyのShopify Collective(ショッピファイコレクティブ)のような新製品と多少競合している。どちらのツールも、マーチャントが自社ウェブサイトでほかのブランドの商品を販売できるようにするものだ。
この契約は、フェールにとって方向性の転換点となり、同プラットフォームの成長を促進させるだろうと、ローデス氏は語る。「Shopifyは何百万もの小売業者やブランドを保有している。Shopifyはこの分野のリーダーであり、内部の我々に対してであれ、世界に対してであれ、我々がコマース分野において強い影響力があるというお墨付きを得たのだと考えている」と同氏は述べる。
[原文:Shopify takes a stake in Faire, makes it the recommended wholesale marketplace for merchants]
Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Faire