Amazon 、プラットフォーム上の「ブランド管理」を強化:新しいポリシーの狙い

毎週月曜日にAmazonから自分たちの商品の注文書を受け取っていた出店ベンダーたちのうち数万社に、先日、急にAmazonからの注文書が届かなくなった。Amazon上で卸売ビジネスを行うブランドクライアントを抱えるAmazonに特化したエージェンシーエグゼクティブが複数、これを認めている。複数のベンダーの証言によると、この変更はどうも恒久的なもののようだ。プラットフォーム上でどのようにブランドが販売を行うかに関して、よりコントロールを握ろうとするAmazonの動きを示している。

取材に応えたエージェンシーのエグゼクティブによると、注文書を受けなかったベンダーたちにはいくつかの共通する特徴があるようだ。彼らのAmazonにおける年間のセールスは1000万ドル(約11億円)以下、そしてAmazon側で担当のベンダーマネージャーを割り当てられていなかったベンダーたちだ。また、彼らの多くが配送コストが高くつく、大きめのプロダクトを扱っていた。

3月4日の月曜日にベンダーたちが最初に受け取ったのは、Amazonからの自動生成されたメッセージであった。そこには注文書の不在は技術的なバグであると説明されていた。また、翌週には注文書が引き続き届くと書かれていた。カスタマーサービスへとつないだベンダーたちもまた、注文書の不在はエラーであると説明を受けたのである。しかし、火曜日には、ほかの数千ものベンダーたちもAmazonからのメッセージを受け取っている。それによると、今回の変更は恒久的なものであり、Amazonは彼らがマーケットプレイスにおけるサードパーティセラーとしてビジネスを行った方が、良い結果になると決断を下したとのことだ(※[日本版]編集部注:本記事の原文は、米DIGIDAYで3月6日に掲載されたもの。その後、Amazonは3月9日にこの決断をメールで撤回している。続報については、近日あらためて翻訳・掲載する)。

Amazonの新ポリシー

「プラットフォーム上でブランドたちがどこで、どのように販売を行うかをAmazon側が決めようとしはじめている。それはいまではかなり明確になっている」と語るのは、Amazon専門でフルサービスのエージェンシー業務を行うオクラ・パシフィック(Ocra Pacific)のCEOであるジョン・ジョルソ氏だ。「ファーストパーティ、サードパーティ、もしくはその両方、どちらになりたいかはブランドが決定できるという時代は終わった。いまでは財務データによって判断が行われているのがほとんどだ。全収益、カタログのサイズ、利益率だ」。

Amazonからの回答を集めたエージェンシーによると、あるベンダーは次のようなメッセージをAmazonから受け取ったという。「ベンダーセントラル(Vendor Central)アカウントの下でリストされているプロダクトは、Amazonのセラー(Seller)プラットフォームと関連した方が、セールスのポテンシャルが高いため、大量のベンダーコードがアクティベーション解除される」。

Amazonの広報担当者はeメールで次のようにコメントを回答した。「我々は定期的に、販売パートナーの関係性を審査し、修正する。そして顧客に提供する利便性、価値、セレクションをより改善するチャンスを確認したときには、変更を加える」。Amazon専門のエージェンシーのファウンダーのひとりはAmazon側に質問をし、シニアチームメンバーのひとりから回答を得ている。それによると、注文書に関する通告のなかには間違えて送られたものもあるが、その他は新しいポリシーに準じており、ポリシーに関してはそれ以上のコメントはできないとのことだった。

「ワン・ベンダー」の噂

Amazonの注文書は、一時停止されたり解除されることが定期的に起きてきた。その理由はケースによって異なる。しかし、このような形で大規模に注文書が解除され、ベンダーからの質問に対するAmazonの一貫性のない反応を見ると、何らかの大きな戦略シフトが起きているように思われる。ファーストパーティセラーであるベンダーセントラル(Vendor Central)と、サードパーティセラーによるセラーセントラル(Seller Central)をひとつのシステムに統合するサプライヤープラットフォーム、Amazonワン・ベンダー(Amazon One Vendor)が近いうちに到来すると言われている。これはリコード(Recode)が昨年秋に、最初に報じた。実装されれば、ファーストパーティ、サードパーティ、もしくはその両方、どの形態でAmazon上で販売するかサプライヤーが選ぶことはできなくなる。Amazonその決定を下すのだ。Amazonの広報担当者は現時点では、ワン・ベンダーと呼ばれるプログラムは存在していないと述べた。

小規模なベンダーに対する注文書を撤廃することで、Amazonは余分な脂肪を削ぎ落としていることになる。彼らが持つ貴重なリソースを使うに値しないレベルのビジネスを、セルフサービスのサードパーティシステムの方へと移動させているのだ。ワン・ベンダーの開始を示唆するような戦略の変更はここ1カ月だけでも3度目となる。ベンダーセントラル参加ベンダーのなかでも、ベンダーによる配送を行うアカウント(ドロップシッピングアカウント)は、今後ベンダーセントラルプログラムには参加できないと先日、伝えられた。また、年間のセールスがAmazon上で1000万ドルを超えるような大規模ブランドたちには、彼らがサードパーティマーケットプレイスで同時に行っているビジネスは排除されると通知を行っている。たとえば、Arエージェンシー・エグゼクティブによると、フォッシル(Fossil)はセラーセントラルでのサードパーティビジネスを今年ブロックされたという。彼らはファーストパーティビジネスとしてベンダーセントラルで稼働しているからだ。

ダイレクトセリングを試したいと思っているベンダーブランドたちを集めつつあった「ハイブリッドセリング」というモデルはどうやら、排除されつつあるようだ。

鏡のような存在

「Amazonが行うビジネスの両サイドで、ブランドがビジネスを行うことができたのは、意図しない結果であった」と、ジョルソ氏は語った。

端的に言うと、Amazon上のリテールビジネスから、なるべく自分たちの運営部分を減らしたいと、彼らは考えているわけだ。その結果、Amazon自身のリテールビジネスよりも速いスピードで成長しているサードパーティマーケットプレイスのボリュームを最大化しようとしている。ここでは、販売者たちはダイレクトビジネスをセットアップし、ダッシュボードをモニタリングし、さまざまなツールを使うことができる。Amazonプライムを使った配送を可能にする「フルフィルド・バイ・Amazon(Fulfilled by Amazon)」はそのひとつだ。アカウントマネージャーをつけることを販売者たちに進めるものの、このサービスには月額の料金がかかる。自分たちで値段を設定することができ、価格戦争や価格下落を避けることができるため、セラーセントラルを好むベンダーたちがいた。しかし、セラーたちの値段をコントロールするための対策をAmazonは最近になって導入しはじめた。あらゆるプロダクトに設定された最大小売価格がその一例だ。

ファーストパーティ側ではAmazonがキープしたいと考えている、ナイキ(Nike)やAppleのような選ばれたブランドとの関係にフォーカスが据えられる。それと同時に、Amazonのプライベートレーベルや限定プロダクトからなる「アワー・ブランド(Our Brands)」もフィーチャーされるだろう。

「セラーセントラルとベンダーセントラルは、ほとんどの点でお互いの鏡のような存在になっている。広告、マーケティング、アルゴリズム、こういった面ではふたつとも同じだ。価格設定とフルフィルメントにおいてのみ違いが見られる。ある段階においてはふたつは冗長にすら思える。端的に言って、Amazonはふたつの異なるビジネスを運営している。しかし一体何のためなのか」と、ジョルソ氏は言う。

「非常に悪い慣習だ」

小規模なブランドにとっては、ベンダーセントラルから切り捨てられることは、それほど深刻な事態というわけではない。しかし、注文書が何の事前通告もなく停止されたことで、混乱が生まれた。卸売モデルを通して売ることに慣れているブランドの場合、彼らのすべてが数週間でダイレクト販売のビジネスをローンチできるわけではない。また、小規模なビジネスにとっては、売り上げが少しでも停止してしまうことは、大きな悪影響になり得る。Amazon専門のエージェンシーエグゼクティブのひとりによると、サポートチームやベンダーマネージャーからの連絡内容がお互いに矛盾していたことも事態を悪化させた。

本件に関するバックラッシュが十分に大きければ、Amazonが今回の決定を覆す可能性はあると、ジョルソ氏は言う。最終的には、広範囲にどのような影響を与えるかはまだ推測に過ぎない。しかし、小規模なベンダーたちがセラーセントラルのアカウントをセットアップしなければいけないことは決定している。オクラ・パシフィック、コマース・カナル(Commerce Canal)、そしてイデオクリック(Ideoclick)のようなエージェンシーたちは、この移行をサポートするサービスを売り込んでいる。

「Amazonはもともと、ベンダーやサプライヤーと親密な関係を持ってはいなかった。しかし、今回の件は、関係性を無視するという点でも、ひとつ上のレベルに行ってしまっている」と、Amazon専門のエージェンシーであるボブスレード・マーケティング(Bobsled Marketing)のファウンダーであるキリ・マスターズ氏は言う。マスターズ氏は今回の注文書停止について最初にフォーブス(Forbes)に記事を書いた人物だ。「たった1日でこのような事をやってしまうのは、非常に悪い慣習だ」。

Hilary Milnes(原文 / 訳:塚本 紺)