セールスフォースはクラウド化の波に乗り、米国でクラウドCRM(顧客関係管理)のトップシェアを活かしながら、営業支援、カスタマーサービス、アプリ開発プラットフォームなどエンタープライズソフトウェアで急速に成長してきた。企業と顧客の接点をつくるマーケティングオートメーション領域では、500億ドル(約5兆円)企業はさまざまなサービスを包括する強みを活かせるか。米国外の売上比率を高めるきっかけを日本市場で掴めるか。
セールスフォースが7月20〜21日、虎ノ門ヒルズで開催した「Salesforce Summer 2016」。米セールスフォース・マーケティングクラウドCEOのスコット・マッコークル氏(TOP画像)はマーケティングキーノートで、モバイルが牽引する顧客中心世界が到来したことを指摘し、細分化した顧客の接点に対してシームレスで包括的なサービスを提供する必要性を強調した。モバイルのおかげで顧客は抱える問題解決までの速度を飛躍的に圧縮しているが、顧客は常によりよい体験を求めている。デジタルマーケティング上で重要な要素を、オーディエンス、コンテンツ、パーソナライゼーション、エンゲージメント、カスタマージャーニーの5点と主張した。
マッコークル氏はコンシューマーの間でFacebook、Twitter、LINEが利用されているが、それぞれ異なるレイヤーが形成されており、CRMを基点としたメールマーケティングは依然としてもっとも価値があるマーケティング方法と語った。ソフトウェア上で設計したカスタマージャーニーから、顧客の示すさまざまな反応に対し、ダイナミックコンテンツというパーソナライズされたメールを送付する。
セールスフォースはクラウド化の波に乗り、米国でクラウドCRM(顧客関係管理)のトップシェアを活かしながら、営業支援、カスタマーサービス、アプリ開発プラットフォームなどエンタープライズソフトウェアで急速に成長してきた。企業と顧客の接点をつくるマーケティングオートメーション領域では、500億ドル(約5兆円)企業はさまざまなサービスを包括する強みを活かせるか。米国外の売上比率を高めるきっかけを日本市場で掴めるか。
セールスフォースが7月20〜21日、虎ノ門ヒルズで開催した「Salesforce Summer 2016」。米セールスフォース・マーケティングクラウドCEOのスコット・マッコークル氏(TOP画像)はマーケティングキーノートで、モバイルが牽引する顧客中心世界が到来したことを指摘し、細分化した顧客の接点に対してシームレスで包括的なサービスを提供する必要性を強調した。モバイルのおかげで顧客は抱える問題解決までの速度を飛躍的に圧縮しているが、顧客は常によりよい体験を求めている。デジタルマーケティング上で重要な要素を、オーディエンス、コンテンツ、パーソナライゼーション、エンゲージメント、カスタマージャーニーの5点と主張した。
マッコークル氏はコンシューマーの間でFacebook、Twitter、LINEが利用されているが、それぞれ異なるレイヤーが形成されており、CRMを基点としたメールマーケティングは依然としてもっとも価値があるマーケティング方法と語った。ソフトウェア上で設計したカスタマージャーニーから、顧客の示すさまざまな反応に対し、ダイナミックコンテンツというパーソナライズされたメールを送付する。
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CRMに存在する比較的ロイヤリティを期待できる顧客以外の潜在顧客に対しては、デジタル広告機能「アドバタイジングスタジオ(Advertising Studio)」で広告を打てる。Facebookでは両者が提供するデータと、CRMの顧客情報をマッチさせた形で、顧客に対してターゲティングできるほか、顧客に似た潜在層(ルックアライク)や、細かくセグメントされた対象に対しても広告を打てる。メールと離脱気味の顧客に対する広告をジグザグに組み合わせたジャーニーマップと、パーソナライズされたクリエイティブにより、キャンペーンの最大化を目指せるという。
広告はCRMデータと照合
セールスフォースは今年5月にはGoogleと提携を結び、同社のカスタマーマッチを活用できるようになった。企業(広告主)のCRMにあるメールアドレスを、Googleにサインインしているか判別し、マッチングしたユーザーに広告を配信する。検索広告、Gmail広告、YouTube広告の3つだ。
セールスフォースはほかのクラウド・エンタープライズ・ソフトウェア事業者と同様、M&Aを積極的に進めている。6月、ECクラウドソフトウェアを提供するデマンドウェア(Demandware)を、28億ドル(約3000億円)で買収(かなりタフな交渉だったという)。今後はデマンドウェアをセールスフォースのプラットフォームに統合する見込みだ。
テクノロジー業界の次のトレンドと言われる人工知能(AI)については、セールスフォースは4月、ディープラーニング・スタートアップのメタマインド(MetaMind)を買収した。クラウド・ソフトウェアもAIの発展により変化の可能性を迎えているかもしれない。米セールスフォースCEOのマーク・ベニオフ氏は今年5月にこう語っている(BusinessCloudNews)。
セールスフォースや業界が大きく成長するための次の主要なトレンドはAIになるだろう。未来に目を向け、AIの強烈な進歩に目を向けると、それが機械学習であろうが、ディープラーニング(深層学習)であろうが、AIそのものであろうが、この種類のアプリケーションの内側に現れる潜在能力は、主要な成長の可能性になるだろう。
同社ベンチャーキャピタル(VC)部門は極めて積極的であり、有望なスタートアップへの投資数では、ネットスケープ創業者らが運営する有名VCのアンドリーセン・ホロウィッツを上回るとも言われる。日本のベンチャー企業29社にも投資しているという。
また、よく知られる営業支援以外にも、モバイルアプリの開発・運営プラットフォーム、アップクラウド(App Cloud)は同社サービスのなかで最も急速に成長している。1年3カ月間続く伸びの速度が保たれれば、今年の収益は13億ドルになると予測されている(関連記事)。
米国外での事業拡大がカギか
ガートナーの「CRMマーケットシェアリポート」によると、セールスフォースは2015年、全世界のCRMソフトウェアのマーケットシェアで19.7%と、トップを維持している。上位4社(ビッグ4)以外のグループのシェアは2007年の46%から2014年に55%まで拡大しており、業界は混戦模様になってきている。CRMベンダーのなかでオラクルがシェアをもっとも大きく減らしていると報じられているが、実際にはドイツのSAPが最大のシェア減プレイヤーだとガートナーは指摘している。
ガートナーは、2015年はクラウドCRMがオンプレミス(自社運用)を上回る変化の始まりの年であると指摘し、2025年にはクラウドCRMが市場の85%を占めるようになると予測している。同社はクラウドサービスにより収益を得ているベンダーの方がマーケットシェアを拡大していけるという(この調査は「CRMソフトウェア」というカテゴリーでのもので、セールスフォースなど各者のすべてのビジネスを含んでいない)。
ビジネスインサイダーによると、CRMソフトウェア収益を各社で比較すると、米国外での収益比率で、セールスフォースは32%と低く、最大市場の米国に依存している状況だ。米国外市場次第では他社に首位の座を譲り渡すこともありうる。日本市場は試金石になりそうだ。
Written, photograph by 吉田拓史