アドテクの分野では、ソフトウェアライセンシングモデルは議論を呼んできた。ブランドとベンダーは興味を示している一方で、エージェンシーたちはまだそこに追いついていない。
アドテクベンダーがライセンステクノロジーを推奨する明白な理由は、彼らの投資家たちが、メディアバイイングを排除することではなく、商品の売上を向上してほしいからだ。しかし、それだけでない。業界では多くの人が、SaaS(ソフトウェアとしてのサービス)と呼ばれる、サブスクリプションベースのビジネスモデルの方が、より透明性をブランドに提供でき、データの所有権も渡すことができると信じている。
アドテクの分野では、ソフトウェアライセンシングモデルは議論を呼んできた。ブランドとベンダーは興味を示している一方で、エージェンシーたちはまだそこに追いついていない。
アドテクベンダーがライセンステクノロジーを推奨する明白な理由は、彼らの投資家たちが、メディアバイイングを排除することではなく、商品の売上を向上してほしいからだ。しかし、それだけでない。業界では多くの人が、SaaS(ソフトウェアとしてのサービス)と呼ばれる、サブスクリプションベースのビジネスモデルの方が、より透明性をブランドに提供でき、データの所有権も渡すことができると信じている。
広告主が興味をもつ理由
「ブランドはダイレクトで透明な取引をテックベンダーと結ぶことで、予算のコントロールをできる。また、固定されたSaaSタイプのモデルと、コストが不透明な変動モデルと、どちらがビジネスとしてより良いのか、自分で決めることもできる。そのため、より多くの広告主が興味を示している」と、アドテク会社サイズミック(Sizmek)の国際売上・ビジネス開発のシニア・バイス・プレジデントであるアンドリュー・ブルーム氏はいう。
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デロイト・デジタル(Deloitte Digital)のマーケティング・顧客分析のプリンシパル、エド・シー氏も同じ意見をもっている。透明性はライセンステクノロジーそのものよりも、マーケターが自分たちのファーストパーティデータと、サードパーティデータを自社内で所有・活用でき、デジタル・サプライチェーン全体を見渡すことができる点にあると語った。
全米広告主協会(ANA)の最近の透明性レポートでも見られたように、現在、普及している多くのビジネスモデルにおける透明性の欠如から、アドテクは不透明な印象をもたれている。ライセンステクノロジーを用いれば、ブランドはエージェンシー、ベンダー、そしてコンサルティング会社のどこと仕事をすべきか、選択肢に柔軟性をもつことができるし、また上級のマーケターであれば、社内プログラマチックを実現することすら可能であるとシー氏は言う。「最近のトレンドでプレッシャーが加わり、SaaSを考慮することは理にかなっていると認識されるようになっている」。
エージェンシー側の見方
しかし、グループMコネクト(GroupM Connect)のグローバルCEO、ルード・ワンク氏はライセンステクノロジーがアドテクの未来ではないと主張する。同氏によれば、ソフトウェアとテクノロジー開発と平行して、サービスとコンサルティングもますます重要になる。そして、誰が何を所有しているかというのは重要ではなくなるという。もっとも重要なのは「マーケティングの自動化(オートメーション)ではなくて、メディアバイイングのプロセスを自動化(オートメーション)することについて議論することだ」と語った。
エージェンシーたちがSaaSを導入するのが遅れているのには多くの理由がある。RTBプラットフォーム、ビーズワックス(Beeswax)のCEO、アリ・パパロ氏が次のような理由をあげた。エージェンシーたちは広告主と契約期間内の仕事をする。そのため、彼らは特定のテクノロジーに長期間携わるようなことにはならない。そのため、確実性をもってソフトウェアについて予測することができないのが一般だ。
エージェンシーはもちろん、収益性の高いトレーディングデスク運営はキープしたいし、現在のモデルに慣れているため変えたくないというのもある。SaaSを導入することでプログラマティックなサブスクリプションになった場合、エージェンシーにとっての課題は、テクノロジー費用をクライアントにどうやって割り当てるかである。
エージェンシーの付加価値
マーケターたちは通常、予算を2つのグループに分ける。メディア上の広告のペイド・インプレッションを生み出す「ワーキング・ドル(working dollars)」と、エージェンシー手数料から、制作費用、ソフトウェアまでを含む広告を作るための「ノン・ワーキング・ドル(non-working dollars)」だ。ライセンス・プログラマティック・プラットフォームの本当の成果が不確実である状況で、マーケターたちは「ノン・ワーキング」の費用を最小限に留めなければいけないため、彼らのCFOはアドテクのソフトウェア手数料を承認しないかもしれないのだ。
「SaaSの純粋な形で見つめ直せば、エージェンシーはテクノロジーのコストをクライアントに請求できなくなってしまう」と、アドテクのエグゼクティブは米DIGIDAYに語った。
サービスセールスとテクノロジーをうまく分けることができたエージェンシーには、SaaSモデルに移行するチャンスがある。「しかし、これは彼らのビジネスモデルにおいて根本的な変化をもたらすことになる、特にマージンの多くはメディアに埋もれているからだ」と、先述のアドテク会社、サイズミックのブルーム氏はいう。
プログラマティックソフトウェアのサブスクリプションを試すブランドがどんどんと増えてきているなかで、エージェンシーは広告購入プロセスの中心的な役割を依然として担うことにはなるだろう。エージェンシーはテクノロジーではなく、専門知識を通して、付加価値を加えていくべきだとビーズワックス社のパパロ氏は話した。
「多くの場合、マーケターたちはプログラマティックのトレーディング運営を行うスキルをもっていない。しかし、だからといってテクノロジーを所有するべきでないとはならない。オペレーション自体は外注してしまえば良い」。
Yuyu Chen(原文 / 訳:塚本 紺)
Image from Nathalie Owen