リセールが人気を集めているが、長期的な収益性に関する疑問は根強く残っている。パンデミックの影響で需要は急増したものの、安定した成長戦略のためにはインフラコストの問題や、ビジネスモデルの持続性など解決すべき課題も多い。さらにリセールの活況を見たブランドがインハウス化に取り組む動きも見せている。
リセールが人気を集めているが、長期的な収益性に関する疑問は根強く残っている。
今年に入って、クローゼットを整理する時間の余裕が人々に生まれた。これを受けて、リセールプラットフォームに対する需要が急増している。メルカリ(Mercari)やポッシュマーク(Poshmark)といったP2Pサイト、リアルリアル(The RealReal)やベスティエール・コレクティブ(Vestiaire Collective)といったホールセール系サービスは、ユーザーとリセールを委託する売り手双方を従来とは異なる文脈で結びつけつつある。
いま、需要は活況を呈している。米DIGIDAYの姉妹メディア、モダンリテール(Modern Retail)が今年おこなったインタビューのなかで、ポッシュマークのCEOであるマニッシュ・チャンドラ氏は「ほぼ1秒にひとつ売れている」と述べている。
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ポッシュマークの登録ユーザー数は6000万人。同社は現在IPOの準備を進めている。ベンチャーキャピタルの支援を受けるメルカリも、成長が利益を生んでいるようだ。8月に第4四半期業績が発表されると、同社の株価は約25%跳ね上がった。決算報告書を見ると、メルカリは同四半期に黒字を計上したことがわかる。米国事業を担うメルカリUSも前年比183%の成長を記録し、1億ドル(約104億8600万円)のGMV(総流通額)を達成している。
困難が待ち構えるリセールモデル
パリに拠点を置くベスティエール・コレクティブは今春、約6500万ドル(約68億1600万円)の資金を調達した。同社のサービスを利用するメンバー間のコミュニティーインタラクションは、ロックダウンに入って最初の数週間で10倍に増えた。同社が7月に発表した半期報告書によれば、5月の顧客注文は前年比で19%増加している。
委託販売プラットフォームのスレッドアップ(ThredUp)が今夏発表した年次報告書を見れば、同社の「コロナ禍による小売不振を回避できる」実力のほどがうかがい知れる。5月、記録的な数のユーザーが同プラットフォームを訪問、これを受けてロックダウン期間中のアクティビティも増加した。パンデミック前の数字と比較すると、訪問者の滞在時間は37%増加した。
また、リアルリアルが5月に発表した最新の第1四半期決算によれば、同社の総売上は前年比で11%の成長を記録し、7820万ドル(約82億円)となった。GMVも15%増加し、2億5760万ドル(約270億1250万円)となった。
しかし、これらの企業が成長するにしたがって、とりわけ小売各社がリセールプログラムのインハウス化への投資を考えるようになっているいま、その成長戦略には、より厳しい監視の目が注がれるようになっている。
インフラコストの増大
こうした高需要には金がかかる。市場調査会社フォレスター(Forrester)の首席アナリストであるスチャリタ・コダリ氏によれば、中古品販売サイトの多くは現在、新規ユーザーの獲得を目的として、送料を一部負担しているという。スレッドアップなどほかの企業は、ユーザーから送られてくる衣類を、タイプ別に分けてアップロードし、リセールしている。控えめにいっても、このようなインフラには大きなコストがかかる。「彼らがこうした負担をどのようにして売り手や買い手にシフトしていくつもりなのかは、私にもわからない。この点が今後の最大の課題なのかもしれない」と、同氏は語る。
そして、こうしたインフラの構築は安くない。パンデミックブームの渦中においては特にそうだ。リアルリアルの直近の四半期収益によれば、同社の純損失は3830万ドル(約40億1600万円)だった。今年、一時的な黒字を達成したメルカリも、世界全体では1億8000万ドル(約188億7500万円)の営業損失を出した(2019会計年度は1億1000万ドル[約115億3480万円]だった)。
モダンリテールが先日行ったインタビューのなかでメルカリUSのCEOであるジョン・ラガーリング氏は、中古品販売サイトはこの需要を満たすべく何年も前からインフラ構築に取り組んできたと述べている。
いかに持続性を構築するか
ファーストディブス(1stDibs)やクロノ24(Chrono24)、ゴート(GOAT)といったニッチカテゴリーのリセールサイト(それぞれ、中古の家具、腕時計、スニーカーを販売)は、カジュアルファッションを売るユーザーに依存しない、サステナブルなビジネスを構築することにおいて成功を収めるかもしれないとコダリ氏は話す。「これらの商品はプライスポイントが高く、購入するのは主にコレクターたちだ。配送は問題ではない」と、同氏は語る。「量産品のほうが、事業を長く続けていくのははるかに難しい」。
ダイヤモンドを専門に扱うC2Bラグジュアリーマーケットプレイス、ワージー(Worthy)でCOO(Chief Operating Officer)を務めるスティーブン・シュナイダー氏も、同じ意見を口にする。コロナ禍が始まって間もない頃こそ、同社は売上の急落に見舞われたが、4月以降は前月比で2桁の成長を記録している。「売りたいと思っている消費者は増加している」と、スナイダー氏は語る。
このタイミングで高価な宝石を手放すという決断の背景には、キャッシュフローの必要性や、離婚率の上昇といった社会的要因があると、同氏は考えている。「ワージーの顧客基盤の一角を成しているのは、離婚した女性たちだ」と、同氏は語る。ワージーの収益性について具体的に語ることは避けたシュナイダー氏だったが、「いつか」実現するであろう黒字への道のりをアシストしてくれる優位性として、同社のカテゴリーをあげた。
ブランドがリセール事業に進出
リセールプラットフォームが直面しているもうひとつの逆風は、プログラムのインハウス化を進めるブランドだ。ポルシェ(Porsche)やBMWといった自動車メーカーが認定中古車をコントロールするようになったのと同じように、ブランドも「いずれはリセール事業を自社所有する」ようになるのではないかと、フォレスターのコダリ氏は予測する。これはブランドが自らリセールをおこなうという意味だけでなく、自社の中古品を鑑定・販売しているローカルなリセールストアを活用することも含まれる。
ブランドとのリセールパートナーシップは、コロナ禍による外出禁止令が出される前からすでに増加傾向にあった。レント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)は1月、同社にとって最新となるノードストローム(Nordstrom)との提携「RTRリバイブ(RTR Revive)」を発表した。これにより、レント・ザ・ランウェイのアイテムをノードストロームの一部店舗で購入できるようになる。
スレッドアップも、ギャップ(Gap)やメイシーズ(Macy’s)、JCペニー(JCPenney)といった小売業者との提携を介して、自社のB2Bサービスを成長させてきた。この提携の狙いは、スレッドアップの商品をこれら小売業者の店舗で販売することにある(つい先日、もっとも新しいパートナーとしてウォルマート[Walmart]もそこに加わった)。10月には、これまでずっとサードパーティのリセールに抵抗感を示してきたグッチ(Gucci)も、リアルリアルと提携を結んだ。
一方で、いまなお中古品販売を自社で行うことにこだわりを見せている小売業者やブランドもある。リーバイス(Levi’s)は10月、古着ファンのあいだで広まる同ブランドの人気を活用するための新たな買い戻しプログラム「リーバイス・セカンドハンド(Levi’s SecondHand)」を発表した。ノードストロームも1月、レント・ザ・ランウェイとの提携とは別に、自らリセールショップ「シー・ユー・トゥモロー(See You Tomorrow)」を立ち上げテストを開始した。ニューヨーク市内にある同社の新しい旗艦店には、シー・ユー・トゥモローのための店舗内店舗も設置した。
しかし、たとえブランドのリセール進出が加速したとしても、カテゴリー全体の勢いを考えればリセールを取り巻く経済はまもなく然るべき場所におさまると、投資家も創業者も確信している。「収益性を達成するモデルの構築が可能であることに、疑いの余地はない」と、シュナイダー氏は語る。「顧客は確実にいる。マージンの規模も十分だ」
[原文:Resale platforms gain steam as they grapple with business model]
GABRIELA BARKHO(翻訳:ガリレオ、編集:分島 翔平)