YouTube への信頼を高める、動画系パブリッシャーたち:Facebook フィード改変のその後

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ときとして、信頼できるということが大きな効果と持続性をもたらしてくれる場合がある。持続可能な動画ビジネスの拡大をめざす小規模のパブリッシャーにとって、それはYouTubeへのフォーカスを意味する。

マンスエトベンチャーズ(Mansueto Ventures)が所有するビジネス系パブリケーション、インク(Inc.)とファストカンパニー(Fast Company)は2018年5月、9つの動画シリーズを新たにリリースした。どれもYouTubeを念頭に置いて制作されており、新エピソードが毎週1本公開される。エバーグリーンなトピックに重点が置かれ、各話の尺は8分以下。番組のラインナップは、エクスペリエンシャルサービスを提供する人々や企業を取り上げる「ユー・ハフ・トゥ・シー・ディス(You Have to See This)」(ファストカンパニー)や起業家に密着する「ディ・イン・ライフ(Day In the Life)」(インク)などだ。

以前であれば、これらの動画は各パブリッシャーのウェブサイトで配信されていただろうと、インクとファストカンパニーでエンターテインメント部門のバイスプレジデントを務めるスコット・メバス氏はいう。動画戦略の初期段階においては、それが動画で稼ぐ手っ取り早い方法だったからだ。今年、ファストカンパニーとインクの動画チームが統合されると、メバス氏は動画の配信と売上をオフプラットフォームで拡大する方法を探り始めた。同氏がYouTubeに辿り着いたのはそのときだった。

「サイト外で動画のプレゼンスを築く必要があった。(この文脈において)理にかなっていたのはYouTubeだった。Facebookは信頼性に欠けるからだ」と、メバス氏は語る。「ルールがある程度成文化されているYouTubeは、かなり信頼できる場所だ。Facebookほど不透明ではなく、毎月コロコロ変わることもない」。

パブリッシャーたちの行き先

ニュースフィード内でメディアコンテンツの優先度を下げるというFacebookの決定(同プラットフォームのアルゴリズムと動画戦略に対してこれまで何度も加えられてきた変更のなかで、いちばん新しく、もっとも劇的な変更)により、動画の配信先をどこに求めればいいのかに関して、多くのパブリッシャーが苦渋の決断を余儀なくされてきた。一部の大手パブリッシャーのなかには、ストリーミングプラットフォーム向けの番組を制作・販売しているものもあれば、ストリーミングTVバンドルに目を向けているものもある。なかでも多いのが、TwitterとSnapchat(スナップチャット)を注視するパブリッシャーだ。どちらもマネタイゼーションと配信のより優れた選択肢でパブリッシャーをひきつけてきた。

YouTubeもこの流れから恩恵を受けている。とくに大手デジタルパブリッシャーやテレビ会社のようなリソースを持たない小規模なパブリッシャーにとって、YouTubeは信頼できる安全域になりえると、メバス氏はいう。とりわけアメリカの場合、YouTubeチャンネルで直接販売を行うために必要な、150万回という「マネタイズ可能な視聴回数」の基準値をクリアできるパブリッシャーにとっては。

「この数字は何年も変わっていない。だから大船に乗った気分でいられる。YouTubeがこれを変えることはないだろう」と、メバス氏は語る。

YouTubeが有する魅力

今年2月、ファーザーリー(Fatherly)はより一貫したペースでYouTubeに動画を投稿するようになった。以来、ファーザーリーはYouTubeで成長を続け、同パブリッシャーが配信する動画の平均視聴完了率はFacebookにおけるそれの4倍に達するまでになっている。

「もちろん各プラットフォームを別々にベンチマーク評価しなければならないが、この差に促されて我々は、拡大するファーザーリーのYouTubeオーディエンスにエピソード性の高い、長尺コンテンツを提供するようになった。こうしたコンテンツは、より深くリラックスしたファーザーリー体験を促す。Facebookの『スクロール&ポーズ』型の体験とは対照的だ」と、ファーザーリーで動画部門のバイスプレジデントを務めるアダム・バニキ氏はいう。

パブリッシャーは、FacebookよりYouTubeに費やす時間とリソースを増やしつつある。昨年11月、メバス氏は両プラットフォームに同等の力を注ぐつもりだと発言していた。ところが1月には、「Facebookは我々のレーダーから消えてしまった」と述べている。現在もFacebookを活用して動画クリップを配信するファストカンパニーとインクだが、それはサイトとYouTubeへのアクセスの促進を狙ってのものだとメバス氏。

「YouTubeでは、売上がどうなのかがわかる。直接販売を行うために達成しなければならない目標もわかっている。インフルエンサーが何を提供できるのかもわかっている」と、メバス氏は語る。「YouTubeは完璧だと言っているわけではないが、YouTubeはいまなお世界最大の動画検索エンジンだ。そこではマネタイズが可能であり、見通しを立てることも可能なのだ」。

寿命が伸びるYouTube動画

アトランティック(The Atlantic)がYouTubeの優先を決断したのは約1年前のことだった。ブライトコーブなどの動画プラットフォームから動画プレイヤーのライセンスを受ける代わりに、同パブリッシャーは現在、YouTubeの動画プレイヤーを使用している。以来、アトランティックのYouTubeチャンネル登録者は昨年5月の4万1000人から約3倍の11万4000人に増えている。動画の平均再生時間は約4分で、長尺のドキュメンタリーになると8分に跳ね上がる。またアトランティックのウェブサイトでも、2018年に入ってからの4カ月間の視聴回数と再生時間は、その前の4カ月間と比べて、それぞれ40%/41%上昇している。

小規模のパブリッシャーがYouTubeから受けられるもうひとつのメリットは、エバーグリーン系動画は同プラットフォームにアップロードした方が寿命が伸び、ひいてはマネタイズの機会も増える可能性があるということだ。2016年にYouTubeに投稿された、アトランティックでメディアエグゼクティブを務めるサム・ローゼン氏のカルト体験に関する16分のドキュメンタリーを例にとってみよう。同パブリッシャーによれば、その動画の当初の視聴回数は数万回程度だったという。それが突然、今春になって急増し、いまではその回数は58万6000回を超え、平均再生時間も8分に達している。「YouTubeの力を示す完璧なケーススタディだ」と語るのは、アトランティックスタジオ(Atlantic Studios)でエグゼクティブプロデューサー/ゼネラルマネージャーを務めるカシャ・チェプラック=マイヤー・ボン・バルデッグ氏だ。スタッフ14人のアトランティックスタジオには、尺が短く、賞味期限も短いニュース動画を量産する余裕はない。

自社が管理していないプラットフォームを優先することには常にリスクがつきまとう。しかしファストカンパニーとインクの場合、オンサイト動画がすでに利益を上げており、それが彼らのYouTube戦略に資金を提供しているため、そのリスクは軽減されている。動画事業がまだ初期段階にあるほかの小規模なパブリッシャーにとっても、YouTubeの信頼性が同プラットフォームを魅力的なものにしている。

「もちろんよく考える必要はあるが、YouTubeが自社に利益をもたらしてくれる存在になりうることは確かだ」と、アトランティックでデジタル部門のシニアバイスプレジデントと事業開発部門の代表を務めるキム・ラウ氏は語る。「我々の場合、YouTubeプレイヤーへ切り換えたほうが理にかなっていた。1年経ったいまも、その決断に後悔はない」。

Sahil Patel (原文 / 訳:ガリレオ)