パブリッシャーのサイトへのX経由の参照トラフィックは、この1年で急減した。
ウェブパブリッシング技術開発のオートマティック(Automattic)で、グローバルマーケティングエージェンシーパートナーシップ部門を統括するトッド・ブラックモン氏によれば、同社がこのたび、無作為に抽出した大小のパブリッシャーが運営するサイトへの流入トラフィックを分析した結果、X経由のトラフィックは2023年上期、25サイト平均で前年同期に比べ24%減少したという。
米DIGIDAYが1月に報道した時点でのトラフィックは前年同期比で13%減だったが、そこからさらに落ち込んだことになる。
Xによるページ表示遅延でNYタイムズへのトラフィック減少か
ワシントンポスト(The Washington Post)は8月第3週、Xのサイトにおけるトラフィック速度制限に関する記事を発表し、Xがニューヨークタイムズ(The New York Times:以下NYタイムズ)、ロイター(Reuters)をはじめとするニュースメディアやサブスタック(Substack)などのプラットフォームへのリンク先の読み込み時間を意図的に遅延させていたと報道した。
パブリッシャー各社は本来、自社サイトへの接続時間短縮化に膨大なリソースをつぎ込んでいる。ページ読み込みに数秒以上かかるだけで、読者がサイトから離脱する傾向があるためだ。
NYタイムズの事情に詳しいある人物が匿名を条件として米DIGIDAYに語ったところによると、XのサイトからNYタイムズへの参照トラフィックは、ページ読み込み時間の遅延が始まった8月4日を境に減少の一途をたどった(トラフィックの減少幅や正常化のタイミングについては非開示)。NYタイムズからは、Xによるトラフィック速度制限についてワシントンポストが報じたあと、ページ表示遅延が解消したという情報が寄せられた。
今回のトラフィック速度制限についてNYタイムズは、Xからなんの連絡も説明も受けなかったという。ただし前述の匿名の人物によれば、NYタイムズはこの件に関し、Xに対する報復措置は検討していないようだ。
米DIGIDAYの取材に応えたNYタイムズの広報担当者は次のように語った。「我々はXの自社アカウントを閉鎖するつもりはない。当社のサイト購読者や報道コンテンツの読者がいるかぎり、彼らが利用するさまざまなプラットフォームで記事を配信していく。それが、Xを含む全プラットフォームに共通する当社の対応方針だ」。
Xへの懸念はより強まる
ワシントンポストの記事の波紋は、パブリッシャー経営幹部のあいだで広がりつつある。
NYタイムズの広報担当者は、「今回のページ表示の遅延措置がどういった根拠でなされたか不明だが、どのニュースメディア会社に対してであれ、明確な理由なしに圧力がかけられたとしたら、それは懸念に値する。NYタイムズの使命は、恐れず、偏らず、公平な報道であり、我々はいかなる妨害の企てにもひるむことなく、この使命を果たしつづける」と述べている。
英ガーディアン米国部門(The Guardian U.S.)で数週間前、イノベーション担当責任者に昇格後着任したクリス・モラン氏によると、ガーディアンはトラフィック速度制限の影響を受けていないという。しかし同氏は、Xがとった措置への懸念を示した。
「特定の企業を標的にするこのような措置は、責任ある優良プラットフォームにあるまじき行為だ」とモラン氏は指摘する。「Xが従来、ジャーナリストに人気が高かったとはいえ、Xからパブリッシャーのサイトへの参照トラフィックによるアクセスはとくに多いとはいえなかった。おそらく、今回のページ表示速度制限がパブリッシャー側のトラフィックに及ぼした影響はさほど大きくなかったのではないか」。
2023年1月にDIGIDAYがパブリッシャー数社を取材した際も似たような状況で、「Xから流入したトラフィックが自社サイトのリンク先参照トラフィック全体に占める割合は少ない」という答えが返ってきた。
ライフスタイルパブリッシャー大手のオーディエンス開拓部門責任者からDIGIDAYが入手したデータによれば、8月第4週の時点で、Xからの参照トラフィックは前年より72%低下と、大幅に落ち込んだという。ただし、同社サイトへの自然流入トラフィックにX経由のトラフィックが占める割合は、全体の約2%すぎない(4%だった2022年から減少)。一方、NYタイムズでは状況が異なる。同社の事業をよく知るある人物は、XからNYタイムズへの参照トラフィックについて「少量ではない」としながらも、それ以上のコメントは差し控えた。
前述のライフスタイルパブリッシャーのオーディエンス開拓部門責任者は、X経由のトラフィックは減少傾向にあるものの、「会社としての対X戦略は変更しない」と述べた。「当社の場合、どのタイプのコンテンツもいまのところ、Xとのリンクによるリフト効果が非常に低いため、Xの今後の変化を見据えて現在の戦略を続けるつもりだ」。
パブリッシャーのサイトへのX経由の参照トラフィックは、この1年で急減した。
ウェブパブリッシング技術開発のオートマティック(Automattic)で、グローバルマーケティングエージェンシーパートナーシップ部門を統括するトッド・ブラックモン氏によれば、同社がこのたび、無作為に抽出した大小のパブリッシャーが運営するサイトへの流入トラフィックを分析した結果、X経由のトラフィックは2023年上期、25サイト平均で前年同期に比べ24%減少したという。
米DIGIDAYが1月に報道した時点でのトラフィックは前年同期比で13%減だったが、そこからさらに落ち込んだことになる。
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Xによるページ表示遅延でNYタイムズへのトラフィック減少か
ワシントンポスト(The Washington Post)は8月第3週、Xのサイトにおけるトラフィック速度制限に関する記事を発表し、Xがニューヨークタイムズ(The New York Times:以下NYタイムズ)、ロイター(Reuters)をはじめとするニュースメディアやサブスタック(Substack)などのプラットフォームへのリンク先の読み込み時間を意図的に遅延させていたと報道した。
パブリッシャー各社は本来、自社サイトへの接続時間短縮化に膨大なリソースをつぎ込んでいる。ページ読み込みに数秒以上かかるだけで、読者がサイトから離脱する傾向があるためだ。
NYタイムズの事情に詳しいある人物が匿名を条件として米DIGIDAYに語ったところによると、XのサイトからNYタイムズへの参照トラフィックは、ページ読み込み時間の遅延が始まった8月4日を境に減少の一途をたどった(トラフィックの減少幅や正常化のタイミングについては非開示)。NYタイムズからは、Xによるトラフィック速度制限についてワシントンポストが報じたあと、ページ表示遅延が解消したという情報が寄せられた。
今回のトラフィック速度制限についてNYタイムズは、Xからなんの連絡も説明も受けなかったという。ただし前述の匿名の人物によれば、NYタイムズはこの件に関し、Xに対する報復措置は検討していないようだ。
米DIGIDAYの取材に応えたNYタイムズの広報担当者は次のように語った。「我々はXの自社アカウントを閉鎖するつもりはない。当社のサイト購読者や報道コンテンツの読者がいるかぎり、彼らが利用するさまざまなプラットフォームで記事を配信していく。それが、Xを含む全プラットフォームに共通する当社の対応方針だ」。
Xへの懸念はより強まる
ワシントンポストの記事の波紋は、パブリッシャー経営幹部のあいだで広がりつつある。
NYタイムズの広報担当者は、「今回のページ表示の遅延措置がどういった根拠でなされたか不明だが、どのニュースメディア会社に対してであれ、明確な理由なしに圧力がかけられたとしたら、それは懸念に値する。NYタイムズの使命は、恐れず、偏らず、公平な報道であり、我々はいかなる妨害の企てにもひるむことなく、この使命を果たしつづける」と述べている。
英ガーディアン米国部門(The Guardian U.S.)で数週間前、イノベーション担当責任者に昇格後着任したクリス・モラン氏によると、ガーディアンはトラフィック速度制限の影響を受けていないという。しかし同氏は、Xがとった措置への懸念を示した。
「特定の企業を標的にするこのような措置は、責任ある優良プラットフォームにあるまじき行為だ」とモラン氏は指摘する。「Xが従来、ジャーナリストに人気が高かったとはいえ、Xからパブリッシャーのサイトへの参照トラフィックによるアクセスはとくに多いとはいえなかった。おそらく、今回のページ表示速度制限がパブリッシャー側のトラフィックに及ぼした影響はさほど大きくなかったのではないか」。
2023年1月にDIGIDAYがパブリッシャー数社を取材した際も似たような状況で、「Xから流入したトラフィックが自社サイトのリンク先参照トラフィック全体に占める割合は少ない」という答えが返ってきた。
ライフスタイルパブリッシャー大手のオーディエンス開拓部門責任者からDIGIDAYが入手したデータによれば、8月第4週の時点で、Xからの参照トラフィックは前年より72%低下と、大幅に落ち込んだという。ただし、同社サイトへの自然流入トラフィックにX経由のトラフィックが占める割合は、全体の約2%すぎない(4%だった2022年から減少)。一方、NYタイムズでは状況が異なる。同社の事業をよく知るある人物は、XからNYタイムズへの参照トラフィックについて「少量ではない」としながらも、それ以上のコメントは差し控えた。
前述のライフスタイルパブリッシャーのオーディエンス開拓部門責任者は、X経由のトラフィックは減少傾向にあるものの、「会社としての対X戦略は変更しない」と述べた。「当社の場合、どのタイプのコンテンツもいまのところ、Xとのリンクによるリフト効果が非常に低いため、Xの今後の変化を見据えて現在の戦略を続けるつもりだ」。
X経由のトラフィック減少は70%減となるところも
サイトへのトラフィックにおけるXへの依存度合いにかかわりなく、多くのメディア企業のサイトで、X経由で流入するトラフィックが2022年より減少しているのは事実だ。
オートマティックが調査したパブリッシャーのうち、75%にX経由のトラフィック減少がみられたとブラックモン氏は語る。調査対象となったパブリッシャー名は非開示だが、トラフィックの減少幅は1%から60%の範囲内だったという(編集者注:オートマティックは2021年、コンテンツ分析で知られるパースリー[Parse.ly]を買収した)。
ウェブトラフィック関連データ分析を専門とするシミラーウェブ(Similarweb)の調査によると、2022年7月から2023年7月にかけて、パブリッシャー大手10サイトにおけるX経由の流入トラフィックが全世界で以下のように減少を示した。
- BBC:20%減
- BuzzFeed:70%減
- CNN:41%減
- Foxニュース(Fox News):39%減
- ガーディアン(The Guardian):29%減
- NBCニュース(NBC News):38%減
- NYタイムズ:35%減
- ロイター:67%減
- ウォールストリートジャーナル(The Wall Street Journal):42%減
- ワシントンポスト:48%減
ロサンゼルスタイムズ(Los Angeles Times:以下LAタイムズ)の広報担当者によれば、Xから同社サイトへの流入トラフィックは2023年上期、前年同期比で53%減少し、月平均の閲覧件数は90万弱にとどまったという。
「当社のソーシャルメディア戦略で現在重点的に取り組んでいるのは、TikTok、Threads(スレッズ)、インスタグラム、Reddit(レディット)上のエンゲージメント強化と、検索エンジン経由のトラフィック増、そして自社が保有または運営するWebサイト、アプリ、ニュースレターなどのツール経由のトラフィック増だ」と、LAタイムズの広報担当者は言う。「Xもニュース配信目的で利用しているが、特定のトピックに絞っている。スポーツやニュース速報のようなトピックの場合、Xは有効だと思う」。
根本的な原因は?
X経由のトラフィック低迷にはさまざまな理由があるだろう。たとえば、パブリッシャー社内のX向け広告予算の縮小や、ユーザーによるXの利用頻度の低下、ニュース記事へのリンクを貼った投稿の件数減少などが考えられると、ブラックモン氏は言う。2023年1月のDIGIDAYの取材では、Xを経由した参照トラフィック減の一因は、2022年12月のTwitterモーメント機能廃止だというのがパブリッシャー各社の見解だった。また、重大ニュースが少ない時期や、ユーザーのソーシャルメディア利用習慣の変化も、トラフィック低下につながる可能性がある。
2023年3月、DIGIDAYはバッスルデジタルグループ(Bustle Digital Group)、バイスメディアグループ(Vice Media Group)、ワシントンポストに聞き取りをおこなった。3社のオーディエンス開拓/ソーシャルメディア担当責任者の話では、ソーシャルメディアプラットフォームの乱立と動画フォーマットの多様化により、パブリッシャーはXのプラットフォーム上でオーディエンス開拓を続けるべきか、それとも自社が保有または運営するサイトへの送客に注力すべきか、選択を迫られているという。
また、Xの利用と参照トラフィックに影響を及ぼした要因として2022年秋、イーロン・マスク氏が同社(当時のTwitter)を440億ドル(約6兆4000億円)で買収して以来の度重なる方針変更も無視できないだろう。
拭いきれぬ不透明さ
メディア戦略コンサルタントであるエリック・スーファート氏がマッシャブル(Mashable)で発表した記事によれば、マスク氏が2023年7月にブランド名をTwitterからXへ変更したあと、AppleのApp Storeにおけるダウンロード数ランキング(7月27日から8月15日の平均値)は35位から54位に下降した。
しかし、マスク氏は7月28日にユーザー数のグラフをXに投稿し、Xの月間アクティブユーザー数が7月、全世界で「過去最高」の5億4150万に達したと主張した。ちなみにロイターが報じた記事によると、2022年11月にマスク氏がTwitter上で示した1日あたりアクティブユーザー数は2億5940万だった。
[原文:Referral traffic from X continues to decline sharply for publishers]
Sara Guaglione(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)