レディットは、自分たちのサイトが広告費を使う価値があることを広告主に示そうと必死に取り組んでいる。とはいえ、エージェンシーへのプレゼンテーションは、レディットにとってまだ新しい試みだ。そこで新たな人材を採用したり、支局を増やしたり、新しいメニューを増やしたりして、努力行っている。
レディット(Reddit)の営業幹部らが10月、独立系エージェンシーOMDのニューヨークオフィスを訪れた。新しいプレゼン資料を携え、動画付きスポンサード投稿などの広告製品を提案したり、クライアントの業績を拡大した事例を紹介したりするためだ。また、自社のユーザーが「オンラインヘビーユーザー」であることを示すデータも示したという。その様子はまるで、広告に支えられたプラットフォーム企業が昔から行っているプレゼンのようだったと、OMDでソーシャルメディアの米国担当ディレクターを務めるケリー・パース氏は話す。実際、レディットに対する関心は高まっているのだ。
「レディットにとっては大きな1年だった。デスクトップサイトとモバイルサイトのデザインを大きく変更して、サイトの質感を高め、ブランドがこのサイトに広告を載せることを検討しやすいようにした」とパース氏はいう。「今のところ、我々はレディットと大きな取引をしているわけではない。だが、特に小売業界やエンターテインメント業界に多くのクライアントを抱えているので、彼らに提案することができる」。
レディットは、自分たちのサイトが広告費を使う価値があることを広告主に示そうと必死に取り組んでいる。とはいえ、エージェンシーへのプレゼンテーションは、レディットにとってまだ新しい試みだ。13年前に誕生したレディットは、大手広告主のデジタル広告予算をめぐる競争にまだ慣れていない。そこで、同社は2017年、タイム社(Time Inc.)のジェン・ウォン氏をCOOに迎え入れたのを始め、スポティファイ(Spotify)からリアン・ドアン氏とジャック・コーシュ氏を引き抜き、それぞれエージェンシー開発ディレクターとインサイト・測定担当責任者に指名するなど、戦略的な人材採用を行った。レディットの本社は今もサンフランシスコにあるが、ニューヨークとシカゴのオフィスを拡大し、大手ブランドとの提携を担当するチームを支援している。また、6月にはCPVベースの動画広告を販売した。2018年の後半には、Pinterest(ピンタレスト)の「Pinsights(ピンサイト)」のような、ユーザーベースに関する初の「年次」報告書を公開する予定だ。自社の広告プラットフォームに新しい購入方法とターゲティング方法を導入する計画もある。
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レディットの成長と浄化
レディットの広告事業は小規模だが、成長を続けている。広告収益はこの1年で3倍に増加し、5年前の10倍に拡大したと、レディットの広報担当者は述べている。ただし、具体的な金額は明らかにしていない。
レディットのプラットフォームは、まだeマーケター(eMarketer)の調査対象にはなっていない。だが、複数のエージェンシーやブランドから、テストを希望するクライアントが増えているとの声が聞かれる。ポットベリー・サンドイッチ・ショップ(Potbelly Sandwich Shop)でCMOを務めるブランドン・ローテン氏は、以前に勤めていたウェンディーズ(Wendy’s)でレディットをマーケティングに活用した回数は「ごくわずか」だったが、ポットベリーに移籍して以来、レディットを優先的に活用しているという。
「レディットは長いあいだ、ブランドにとって少々怖いプラットフォームだった」と、ローテン氏はいう。「以前はルールらしきものがなく、組織体制もそれほど整っていなかった。バナー広告が質の悪いコンテンツに表示される可能性があったし、適切な測定ツールもなかったのだ。しかし数年前から、彼らは成長と浄化に取り組みはじめ、プラットフォームの開発に乗り出した」。
規模とユーザーの魅力
ローテン氏によれば、広告主がレディットの利用を検討する主な理由は、その規模の大きさにあるという。Amazonの子会社でウェブトラフィック分析を手がけるアレクサ・インターネット(Alexa Internet)のデータによれば、Reddit.comは世界で18番目にトラフィックの多いサイトで、米国では上位6位に入っているのだ。また、レディットがプレゼンテーションで広告主によく示す統計データがもうひとつある。それは、ユニークオーディエンスの数だ。2018年9月のコムスコア(comScore)のレポートによれば、レディットのユーザーのうち、Pinterestを使っていない人は65%、Snapchat(スナップチャット)を使っていない人は43%だった。インスタグラム(Instagram)、Twitter、Facebookを使っていない人の割合は、それぞれ33%、28%、17%になる。
レディットのウォン氏が、業界イベントでの講演や、クライアントとのミーティングや、メディアとの会話で強調するのは、レディットのオーディエンスの価値の高さについてだ。
「ユーザーの身元は明らかでも、彼らの関心はよくわからないFacebookと異なり、レディットではユーザーが自分の関心を自ら明かしている。これは広告主にとって実に貴重なシグナルだが、ほかのどの企業もこのような情報は持っていない」と、ウォン氏は若いCEO向けの組織YPOのインタビューで語っている。また、レディットは「率直な意見を語る場であり、それぞれの分野に詳しい人たちの集団的思考が形成される場なのだ」と、米DIGIDAYの取材に対して述べている。
ブランドセーフティへの努力
レディットのサイトは、規模が大きく注目度が高い反面、ブランドセーフティの面では悪夢のような場所と考えられている。そのため、エージェンシーへのプレゼンテーションでは、広告の質の高さを担保する取り組みに注力していることを常に強調している。
レディットは数カ月前、大手エージェンシーのハバス・メディア(Havas Media)の傘下にあるエージェンシー、ソーシャライズ(Socialyse)を訪れ、新たなプレゼンテーションを行った。このプレゼンのテーマは、レディットのブランドセーフティに関する問題で、キャンペーン期間中にクライアントのために同社が表立ってあるいは陰で行っている管理業務を、ブランドパートナーチームが詳しく説明した。
「(レディットは)ブランドセーフティに真っ向から取り組んでいるようだ」というのは、ソーシャライズでSVP、グループディレクター、およびグローバルプロダクト担当責任者を務めるノア・キング氏だ。「これは我々にとって非常に重要なことだ。我々がもっとも重視しているのは、真っ当なブランドおよび真っ当なメディアと付き合うことだ。安さや流行を追い求めることではない。我々は人々が日頃から関心を持っている場所に向かうのだ」。
OMDのパース氏は、ブランドの投稿へのコメントを無効にできるレディットの機能を、リスクの高さを嫌うクライアントにとって素晴らしいオプションだと評価している。さらにレディットは、ホワイトリストやブラックリストを作成できるツールも用意。レディットのサイトで広告が掲載されるのは、サブレディットと呼ばれる一部のページのみだ。ブランドが独自のキーワードリストを作成し、そのキーワードの横に広告が表示されるのを防ぐ機能もある。
広告購入のシステム
レディットはまた、広告枠を簡単に購入できる仕組みを構築している。2017年4月には、簡素なインターフェースを備えた新しいセルフサービス型広告プラットフォームの運用を開始した。そしていまも、そのプラットフォームを広告主にとってより使いやすく洗練されたものにする努力を続けている。
「彼らが製品と広告技術の不足をすばやく解消し、完全なプログラマティックバイイングツールやセルフサービスツールを公開し、データの活用や提供に乗り出したのは、我々にとって実に素晴らしいことだ」と、ソーシャライズのキング氏は述べている。
キング氏によれば、レディットの「自前の」ファーストパーティ製品は充実しているという。だが、彼らにはサードパーティ用の検証ツールがない。FacebookやGoogleなど豊富な経験を持つプラットフォームはもちろん、Snapchat(スナップチャット)でさえ、そのようなツールをすべての広告主に提供すべく取り組んでいるにもかかわらずだ。キング氏は、レディットが可視化やアトリビューションを手がける企業と提携することを期待している。その仕事を担うのは、レディットでインサイトと測定の責任者を務めるコーシュ氏だ。広報担当者によれば、レディットは2019年にも、このような提携関係を構築する予定だという。
広告主への支援を強化
一方で、レディットは広告主への支援をさらに強化したいと考えている。
「レディットはまだ、ブランドと提携し、彼らとの仕事をうまくこなしていくことを目指している段階なのだ」と、ポットベリーのローテン氏は語った。
Kerry Flynn(原文 / 訳:ガリレオ)