Googleは7日(現地時間)モバイルWebを高速化するオープンソース・プロジェクト「アクセレート・モバイル・ページズ(AMP)」を発表した。パブリッシャーがこのAMPを活用することで、モバイルのロード(ページ読み込み)時間を劇的に改善することができるとGoogleはしている。Facebookの「Instant Article(インスタント記事)」への対抗策だ。
Googleは2015年10月7日(現地時間)、モバイルウェブを高速化するオープンソース・プロジェクト「アクセレート・モバイル・ページズ(AMP)」を発表した。パブリッシャーがこのAMPを活用することで、モバイルウェブのページロード(読み込み)時間を劇的に改善することができるという。
Googleの発表によると、媒体社に無償で提供されるAMPにはニューヨーク・タイムズ、ワシントンポスト、Vox Media、Hearst(ハースト婦人画報社)を含む、約30社が参加の意思を表示。テック系企業のパートナーとしては、Twitter、Pinterest、Wordpress、Chartbeat、Parse.ly、Adobe Analytics、LinkedInも参画しているという。
Googleは、AMPによる技術面の支援により、パブリッシャーがコンテンツ製作に集中することを促している。AMPは「AMP HTML」を採用した、オープンソース形式だ。
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広告に関しては、広範な範囲のフォーマット、アドネットワーク、アドテクノロジーを許容する方向だ。媒体社がAMP上でペイウォール(媒体の一部有料化)を課せるようにすることを目指すという。
Googleもロード時間遅くしている
しかし、ウォールストリート・ジャーナルによると、Googleのニュース・ソーシャルプロダクト担当シニアダイレクターを務めるリチャード・ジングラス氏は、ユーザー体験を阻害するモバイル広告を排除するとも語っている。「我々は現在の(広告型)ビジネスモデルを支持したい。しかし、AMPはまだ開発途中だ。今日がスタートラインだ」と、今後の調整に大きく余地を残している。
米DIGIDAYによると、AMPはサードパーティのアドタグ、アナリティクスタグ、iframesのような埋め込みを排除する可能性があることを、アドテク企業たちが懸念しているという。
「AMP」を実装した、英日刊紙「ガーディアン」などのモバイルページ例。検索画面からの誘導ともとれる場面もある。
また、媒体社サイドにも両手で歓迎できない要素がある。「ワシントンマガジン」誌のデジタルプロダクト部門の役員を務めるパトリック・ソーントン氏は、「Googleが運営するDoubleClick(ダブルクリック)アドサーバーがページロードを遅くする一番の元凶にもかかわらず、ロード時間の短縮化を持ち出すのは奇妙すぎる」と指摘した。
ユーザーのロード時間へのいらだち
モバイルでのインターネット利用が増えるにしたがい、ページロード時間に対する要請が拡大していた。媒体社は動画、カルーセル画像などのリッチコンテンツを埋め込むため、ロード時間が伸びる傾向があるのだ。その一方、リソースに恵まれた一部の媒体社は、ロード時間の削減に成功していた。
しかし、それはやはり一部に限られる。大半の媒体社は、マネタイズの柱である広告によりロード時間を増やし、それがユーザーの不興を買う構造に苦しんでいるのだ。
「ニューヨーク・タイムズ」がニュースサイト50社のモバイルでのロード時間を調査したところ、調査対象媒体で要したロード時間の半分以上が広告によるものだった。「boston.com」は、4G接続で平均ロード時間が38.9秒。うち広告に費やされた時間は77%の30.1秒、編集コンテンツが23%の8.1秒に限られる。「boston.com」のページ構成のなかで、ロード時間を長くしていたのは動画広告だった。このユーザー体験が損なわれた状況が、ユーザーのアドブロック利用を拡大する要因になったとの指摘が大勢だ。
AMPは、Facebookが開始した「Instant Article(インスタント記事)」への対抗策とみられる。「Instant Article」もロード時間を短縮し、コンテンツ発信のインフラを提供し、ユーザーのニュースフィードに直接掲載されるものだ。しかし、媒体社が開設するページはFacebook内にあり、すべてがFacebookで完結する仕組み。これに対し、AMPはモバイルウェブ用のオープンソースとなっている。
米DIGIDAYによると、「AMP参加は強制じゃない。しかし参加しなければ、サイトが購読されないリスクを抱えることになるので、選択肢はない」と、メディアに対して技術コンサルを提供するザッカ―・スカルフ氏は語った。「Googleの世界にパブリッシャーたちがただ住まうことになる」。
written by 吉田拓史
Photo by Photo by Integrated Change(Creative Commons)