一部のSSPがオークションの種類を偽装したり、勝手に最低価格を引き上げたりした結果、セカンドプライスオークションの透明性欠如が指摘される。一部のエクスチェンジでは、ヘッダー入札環境でバイヤーが成功できるよう、セカンドプライスオークションとの併用という形で、ファーストプライスオークションのテストが進んでいる。
サプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)が実施しているオークションダイナミクスに、広告バイヤーが混乱することは多い。そんななか、透明性をさらに高めるため、エクスチェンジのオープンX(OpenX)、インデックス・エクスチェンジ(Index Exchange)、ルビコン・プロジェクト(The Rubicon Project)がそろって、ファーストプライスオークションの実験をスタートさせた。ファーストプライスオークションでは、最高値の入札者によってインプレッションに払う額が決まる。
プログラマティックを支えてきたのは、2番目の値をつけた入札者によってインプレッションの販売価格が決まるセカンドプライスオークションだ。しかし、一部のSSPが実施するオークションの種類を偽装したり、メディアバイヤーが知らないところで最低価格を引き上げたりなどを行った結果、セカンドプライスオークションの透明性の欠如が指摘されるようになった。つまりバイヤーからすると、セカンドプライスオークションは結局、ファーストプライスオークションと変わらない高値になっているのだ。これを受けて、オープンX、インデックス・エクスチェンジ、ルビコン・プロジェクトなどのエクスチェンジでは、ヘッダー入札環境でバイヤーが成功できるように、セカンドプライスオークションとの併用という形で、ファーストプライスオークションのテストを進めている。
各エクスチェンジの動向
オープンXは9月、最終オークションの種類に関する情報を、入札要求のなかでデマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)に渡すことに決めた。それまでオープンXでは公開されていなかったし、いまでも多くのSSPが隠している情報だ。メディアバイヤーは、この情報に従って入札戦略を判断することができる。
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ルビコン・プロジェクトの最高技術責任者(CTO)、トム・カーショー氏によると、同社もオープンXと同じことを行っている。さらに9月には、ウィンレートに基づいて各インプレッションに最適だとアルゴリズムが判断したオークションダイナミクス(ファーストプライスオークションか、セカンドプライスオークション)を自動的に提案する技術を公開した。インデックス・エクスチェンジも、オプトインによって、一部バイヤーとともにファーストプライスオークションをテストしている。
「この業界がいま、ファーストプライスオークションを必要としているのは、ヘッダー入札との競争のためだ」とルビコン・プロジェクトのカーショー氏は語る。「一般的に、セカンドプライスオークションはディスプレイ広告とバナー広告で実施され、ファーストプライスオークションは主に動画インベントリー(在庫)で実施される」。
ファーストプライスの問題点
しかし、ファーストプライスオークションは、長期的な戦略にはならないかもしれない。テクノロジージャーナリストのスティーブン・レビー氏が、著書『In the Plex』(邦題『グーグル ネット覇者の真実』CCCメディアハウス刊)で書いたように、ファーストプライスオークションには問題点がある。Googleのコンピューター科学者、エリック・ビーチ氏がAdWordsの初期に見つけたものだが、次点の入札者がつけた額がはるかに低かった場合にも、入札した額を払うことになるため広告主は、以後のラウンドで入札額を下げるインセンティブが働くのだ。
これをアドテクの文脈に当てはめると、SSPとパブリッシャーは、ファーストプライスオークションだと、セカンドプライスオークションの場合よりも稼ぎが少なくなる。セカンドプライスオークションであればメディアバイヤーが、払いすぎによってカモにされたという思いをすることはない。
「忘れてはならないのは、広告主の予算は増えてはいないということだ。ファーストプライスオークションに移れば、インベントリーの動きは緩慢になるだろう。これについてはとても懸念している」と、カーショー氏は語る。「この業界は余剰インベントリーに大きく依存している。パブリッシャーが余剰インベントリーを売れないとなれば大問題だ。結局のところ、問題はどちらのオークションなのかではない。大事なのは、オークションを(バイヤーに対して)クリアにすることだ」。
情報公開責任の在り処
また、オープンXの最高収益責任者ジェイソン・フェアチャイルド氏によると、単一のオークションであればセカンドプライスオークションが優れているというのが学術研究の大勢ではあるが、オークションダイナミクスは二者択一の議論ではない。「ヘッダー入札では仕組み上、複数のオークションが動いている」とフェアチャイルド氏は指摘する。「我々は未知の領域に踏み込んでおり、だからこそ十分な透明性がなおさら重要なのだ」。
しかし、メディアバイヤーはいまも、自らの入札が実際にどのように扱われているのかを検証することができない。DSPはSSPが情報を報告するべきだと考えているが、SSPも明確な回答ができないのだ。
SSPのある幹部は、「わからないというのが実際のところ」だと語る。「うちの透明性が高いことを把握しても、ほかのSSPがどうなのかはわからない――コンテナのなかのオークションダイナミクスについてはわからないのだ」。
市場価値も考慮すべし
エージェンシーのクレーマー=クラッセルト(Cramer-Krasselt)でメディアディレクターを務めるマイケル・サンティー氏は、メディアバイヤーの視点からこれに同調した。SSPがオークションの種類に関する情報を渡すのは、透明性に向けた素晴らしい一歩ではあるが、すべてのSSPに徹底されているわけではないため、バイヤーとしては、購入に使っているSSPのすべてが入札情報に対応するまで、ファーストプライスオークションを全面的に活用することはできないとサンティー氏は言う。
サンティー氏によると、DSPは、ファーストプライスオークションの価格が最大限に効率的なものになるよう、入札者における市場価値も考慮しはじめている。たとえば、市場が1インプレッション5ドルと評価し、バイヤーが10ドルと評価している場合、市場価値を考慮しなければ、ファーストプライスオークションではバイヤーが10ドルを払うことになる。サンティー氏は、「DSPが市場価値を考慮すれば、5ドルと10ドルの差を埋めるのにつながる」と語った。
Yuyu Chen (原文 / 訳:ガリレオ)