才能の発掘に、写真アプリ VSCO を活用するブランドたち:パワーバー、ナイキ、ティンバーランドなど

写真加工&ソーシャル・アプリのVSCOが、新たな活用法をブランドに売り込んでいる――「弊社のAI技術を利用して、御社に欠けがちなクリエイティブな才能をお手頃価格で発掘!」という売り文句だ。

エナジーバー・ブランド、パワーバー(PowerBar)は現在、VSCOが2017年10月に立ち上げた新サービス、VSCOコネクト(Connect)を利用し、VSCOのフォトグラファーコミュニティに眠っていた才能を発掘した。これまでに10人のフォトグラファーをプロジェクトベースで起用し、自社のソーシャルプラットフォーム、Webサイト、印刷広告を含む販促コンテンツ用に数百枚の写真を採用している。

VSCOとのパートナーシップはパワーバーにとってきわめて有用だと語るのは、パワーバーの親会社プレミア・ニュートリション(Premier Nutrition)のソーシャル&デジタルマーケティング部シニアマネージャーにして、6名からなるパワーバーの社内クリエイティブチームのリーダー、ジェニファー・ハースト氏だ。同社はソーシャルメディアコンテンツをすべて自社で管理運営しているが、その一方、ソーシャルでの成功に必要な質と量を満たすコンテンツの制作に不可欠な才能を見つけるためのマンパワーも、時間も、資金もないからだという。

AIがクリエイターを選定

実際、手間はほとんどかからない。まず、パワーバーがクリエイティブブリーフをコネクトのプラットフォームにオンライン送信する。たとえば、ハースト氏いわく「スポーツにおける喜びと友情や絆が感じられる写真を探している。ストーリーには軽快さと幸福感も欲しい」。

するとこれにもとづき、VSCOが独自のAI技術Avaを利用し、パワーバーのスタイルと美的感覚に合致するフォトグラファーを判定する。Avaにはアプリ内の写真をスキャンし、そのカラーテーマだけでなく、そこから伝わる情感まで分析することができる。続いてVSCOのクリエイティブチームが、該当するフォトグラファーがパワーバー側の詳細な意向を理解しているかどうかを確認する。ハースト氏によれば、VSCOは5人の候補者を挙げ、パワーバーが最終選考を行ない、約4週間後に納品(最大60アセット)の運びとなる。代理店を使うよりも2週間ほど時間の短縮になるという。

この新たなコネクトサービスとAI機能のおかげで、効率が格段に上がったとハースト氏は言う。「以前は写真を一枚一枚、すべて見ていく必要があったが、これを使えば選択肢を的確に絞り込むことができる」。

代理店やフォトグラファーおよびスタッフに支払っていた4万ドル(約420万円)の経費が、現在はその8分の1で済んでいるとハースト氏は語る。ただしVSCOによると、同サービスはまだテスト段階であり、価格も暫定的ではある。

本物感のあるコンテンツ

ブランド、代理店、パブリッシャーは総じて才能不足 に悩んでいる。上昇を続けるコンテンツの消費速度に付いていくのは容易ではなく、自社のストーリーテリングおよびエンターテイメントに適したスキルを備える人材の確保自体が競争となっている。たとえば、大手スポーツ用品メーカーのナイキ、ヨーグルト・ブランドのチョバーニ(Chobani)、カジュアル用品メーカーのティンバーランド、フィットネス管理アプリで知られるストラバ(Strava)なども、VSCOコネクトを利用している。

「手ごろな費用で優れた才能を見つけるのは難しい。ソーシャルおよびデジタルスペースにおける美的感覚に関して、消費者は洗練度をさらに高めており、そのためブランドに対するハードルは高くなる一方にある」とハースト氏。「もはや安っぽいコンテンツでのごまかしは通用しない。ユーザー体験に即した本物感のある上質なコンテンツが不可欠だ」

2016年9月、パワーバーはとあるクリエイティブエージェンシーと組み、当時のキャンペーン「ジョイ・オブ・スポーツ(Joy of Sport:スポーツの喜び)」にふさわしい、活気に満ちあふれるスポーツフォトを探した。だが4万ドルを投じたにもかかわらず、届いたのはストック写真と大差のないものばかりだったため非常に落胆したと、ハースト氏は語る。これをきっかけに、同社はVSCOに目を向けた。ハースト氏は友人らからこの最新アプリの噂を耳にしており、プラットフォームのフィルターと創造性の高さに「心底驚いていた」。そこで、ソーシャルコンテンツにおけるパートナーシップの可能性を探るべく、起業したばかりの同社にアポなしで連絡をしたという。

Z世代へ強力にリーチ

パワーバーがVSCOとの協力に高い関心を示す理由はほかにもある。VSCOが抱えるミレニアルおよびZ世代コミュニティへのアクセスだ。VSCOはクリエーターの数こそ明かしていないが、73%は25歳未満であり、なかでも13歳から17歳の層が急速に増加していると発表している。

ナサリア・アレン、ローレル・ゴーリオ、タイリー・ハリスなど、パワーバーが起用するフォトグラファーたちはインフルエンサーの役も務めており、自身の作品をフォロワーとシェアすることができる。インスタグラムと同様、VSCOユーザーはお気に入りのクリエーターをフォローし、フィードに表示される写真を見ることができる。また、パワーバーも自身のプロファイルを持っており、ユーザーはこれをフォローし、写真に対して、いいね、リポスト、シェアといったリアクションができるようになっている。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:SI Japan)
Image courtesy of Laurel Golio