マーテクを一掃する、ケンブリッジ・アナリティカの粛正:「パワープレーだ」

3月28日にメールがあふれはじめた。ブランドとインフルエンサーが、インスタグラム(Instagram)のオーディエンスデータにアクセスするために長年、日常的に頼っていたツールから締め出されたのだ。何がいけないのかと、インスタグラムのチームにはメッセージで質問が集まった。

その時点では、明確な答えはなかった。心配したクライアントのひとりである、あるマーケティング技術企業の創業者は米DIGIDAYに、3月17日のケンブリッジ・ アナリティカ(Cambridge Analytica)の暴露の件が頭に浮かんだと語った。しかし、ユーザーデータを故意に盗もうとしたわけではないサードパーティのソフトウェア企業が機能を停止するとは予測していなかった。

「連絡がまったくなかった。アプリが突然、機能を停止した」と、この創業者。この日をきっかけに自社の売却や方針転換を試みており、プライバシーのため匿名にすることを求めた。

「ドルよりもデータ」

プラットフォームにおける劇的な変化は、なにも目新しいことではない。Facebookとパブリッシャーのあいだでは特にそうだ。しかし、2018年に起きた激変では、会社にピリオドを打ったり、少なくとも運用の変更を余儀なくされたりする企業がでた。FacebookのAPIネットワーク経由でデータを分析して成功していたソフトウェア企業が、ケンブリッジ・アナリティカのスキャンダル後に、Facebookが実施した制限によって運営できなくなった。

分析企業のクリムゾン・ヘキサゴン(Crimson Hexagon)で最高マーケティング責任を務めるルー・ジョルダノ氏は、「ケンブリッジ・アナリティカが見出しを飾らなくなったことで、データのプライバシーとセキュリティが取りざたされなくなることはないだろう。大きなブランドのデータの取り扱い方は重要性を増していく一方だと思う。いまやドルよりもデータのほうが通貨なのだ」と語った。

4月4日にFacebookがインスタグラムのAPI廃止の加速を発表した際、マーケティング企業の幹部たちからは、ケンブリッジ・アナリティカの暴露記事が公開された際に予見した影響だとの声があった。Facebookが4月に正式にパートナーにメールをして、警告があったというマーケターもいた。

インフルエンサーマーケティングのプラットフォームであるインフルエンサーDB(InfluencerDB)のCEO、ロバート・レーベンハーゲン氏は次のように語った。「この知らせを聞いたときは、ただちに経営陣を集め、当社にどのような影響があるのか話をした。Facebookとその傘下のインスタグラムが政治的圧力から大きな変更を実施するのは明らかだった。ただ驚いたのは、それがあまりに急激だったことだ」。

「むしろパワープレー」

すべてに驚いたわけではない。Instagram APIを段階的に廃止し、新たにGraph APIを導入することをインスタグラムは1月時点で発表していた。しかし、一部のマーケターは米DIGIDAYに対し、すべてのインスタグラムアカウントについてプロフィール情報の入手が完全に廃止されるのではなく、インフルエンサーがインスタグラムでビジネスアカウントを作ることが必要になるだけだろうと思い込んでいたと語った。

最初に登場した方針転換中のスタートアップの創業者は、「あまりに急なことだったし、インスタグラムは実際に(ケンブリッジ・アナリティカの)スキャンダルとはまったく関係がなかったことから、むしろパワープレーであり、力の統合の機会にされたのだと考えられている」と語った。

コミュニケーションの欠如にイラ立っているという声がパートナーのあいだにあった。Facebookの広報担当者は米DIGIDAYに、APIの変更はいずれも、ケンブリッジ・アナリティカのスキャンダル後、問題の再発を防ぎ、ユーザーのデータを安全にするため、Facebookが実施している約束の一環だと説明した。

「公的な面でデータプライバシーの厄災が重なった。米国で(ザッカーバーグ氏の)宣誓証言、そして英国でGDPRと、何もかもが同時に生じた」と、クリムゾン・ヘキサゴンのジョルダノ氏。「巨大なネットワークに大きなプレッシャーがかかっている。ひとつどうにかしても解決できない難問になっている」と、同氏は語った。

Facebook頼りは危険

Facebookの影響力が大きいことを踏まえ、マーケティング会社はひとつのAPIやひとつのデータセットに依存することがないようにしているという。クリムゾン・ヘキサゴンは、ソーシャルリスニングによるインサイトを提供しているが、Facebookの投稿や非公開情報のみに頼ってはいない。インフルエンサーマーケティングのインダハッシュ(indaHash)は、インスタグラムとの協力で有名だが、インスタグラムが廃止したAPIによるリアルタイムのデータ呼び出しには依存してこなかった。

FacebookはInstagram API以外に、メインであるFacebookネットワークのデータへのアクセスについても変更を実施した。たとえば、アプリ開発者がユーザーの誕生日や現在の職業にアクセスできないようにした。

「重要情報を大量に失ったわけではない」と、ソーシャルインパクトのアプリ、ビーム(Beam)のCTOで共同創業者のアレックス・サルバトーレ氏は語る。「ただ、要求の仕方を厳しくし、少し気をつける必要があった。計算機アプリを開発している人を(Facebookは)警戒しているが、政治的な視点については、こちらもわかっている」。

「健全な注意喚起」

ケンブリッジ・アナリティカの影響で、ケンブリッジ・アナリティカ自体を含む、いくつかのスタートアップが確かにつぶれたが、Facebookとマーケターの関係が強固である点は変わっていない。この3カ月もFacebookには絶えず広告費が流れていると、複数のマーケターが米DIGIDAYに語った。

「ケンブリッジ・アナリティカの件、全体については、残念なことだが、プライベートなデータはプライベートにするという健全な注意喚起だと、我々は見ている。この件は、人々がプライベートなデータをどれだけ大切にしているのか、そして、そうしたデータは、どれだけ丁寧に扱うべきなのかという問題に、少なくとも実際に光をあてた」と、ジョルダノ氏は語る。

方針転換を模索している冒頭の創業者は次のように語った。「Facebookとインスタグラムは今回の措置で、ビジネスを50フィートの壁と堀で囲っただけだ。何が起きるのかも、APIの廃止がさらに増えるのかもわからないが、FacebookとインスタグラムのAPIを基盤にして現実のビジネスを構築する人は、長期的には減っていくと思う」。

Kerry Flynn (原文 / 訳:ガリレオ)