Facebook、Amazon、ウォルマートなどのプラットフォームらは、ここのところ立て続けに小規模ビジネスを相手にした、スペシャルプログラムを発表した。どこも、ホリデーシーズンが近づく前に、小規模ビジネスたちの関心を集めようと、躍起になっているようだ。
Facebookは9月18日、メイシーズ(Macy’s)とのパートナーシップを発表した。Facebook上ですでに広告を掲載している小規模ビジネスを、11月にメイシーズの実店舗にポップアップのマーケットとして出す計画だ。同日、AmazonはAmazonストアフロント(Amazon Storefronts)計画を発表している。こちらも小規模ビジネスが彼らの商品をオンラインで見せるために特化したセクションとなっている。
これらのプログラムを通して見ると、両社ともに小規模ビジネスにも優しい巨大企業として映る。しかし、FacebookもAmazonも、過去には小規模なビジネスに対する扱いが議論を呼んでいる。Amazonの場合、小規模ビジネスたちからの問い合わせに反応しない、アカウントを不条理に停止するといった批判を受けた。Facebookの場合は、彼らがフェイクニュースやロシアからの介入と戦う中でアルゴリズムやポリシーを変更した結果、小規模ビジネスたちの収益が減り、プラットフォームの利用自体を停止していると、ニュースになった。
PR的には冒頭のプログラムが役立つかもしれないが、ホリデーシーズンに先駆けて、こういった小規模ビジネスに救いの手を差し伸べるという判断の背後には戦略的なビジネス的計算が潜んでいる。
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重要な役割を担う存在たち
大手企業からの大規模予算を追いかけることがAmazonやFacebookを成長させている一方で、小規模ビジネスたちの広告から生まれる収益が彼らを支える主要な収入源であるという点がそのひとつだ。Facebookが抱える600万ものアクティブな広告主の大多数が中小規模のビジネスであると、Facebookの広報担当は述べている。そして、Amazonにおいても、プラットフォーム上で販売されているプロダクトの半分は、中小規模のビジネスによるものだ。
「もっとも堅実な長期的な戦略はクライアント・ポートフォリオを多様化させることだ。多くの点で小規模ビジネスは重要な役割を担っている。特にユニークな独占ブランドで購買者たちをワクワクさせるという点で有効だ」と述べるのは、カンター・リテール(Kantar Retail)のeコマース・デジタル部門バイスプレジデントであるアリス・フォーニエール氏だ。
小規模ビジネスをターゲットにしたプログラムは、FacebookとAmazonの2社にとって新しいものではない。彼らが大手企業たちの興味を集める前にビジネスを確立できたのは小規模ビジネスのおかげだ。しかし、今日ではこういった小規模ビジネスを引きつけるための競争は、ますます厳しくなっている。また、消費者からの需要が伸びていることで、彼らをプロモーションする必要性は、さらに明確になっている。
「これは競争と呼んでもいい」
小規模ビジネスを大きな全社的な戦略の一部へと組み込むという動きは、ここ数カ月の間にプラットフォームたちのなかで顕著だ。FacebookとAmazonによる今回の発表も、その最新の例となっている。ウォルマート(Walmart)のように、こういった動きをはじめて見せているプラットフォームもある。先週、彼らが抱える消費者ダイレクトの宅配サイトJet.comをリローンチし、そこでは母親と父親のためのショップをその中心に据えた。8月末にはイーベイ(eBay)がリテール・リバイバル(Retail Revival)プログラムを展開するアメリカの都市の数を拡大している。リテール・リバイバルとは、イーベイ上で小規模ビジネスが販売を行う方法を教え、またポップアップ店舗への参加についても伝えるプログラムだ。
ホリデーシーズンが近づく前に、小規模ビジネスたちの関心を集めようと、プラットフォームたちは躍起になっていると、マーケターたちは指摘する。
「AmazonやFacebookのようなプラットフォームは、ホリデーシーズンを使って、小規模ビジネスの成功例を作り出し、彼らが信頼できるリソースでありパートナーであると、証明したいと思っている」と語るのは、PMXエージェンシー(PMX Agency)ペイドソーシャル・ディスプレイ部門グループディレクターであるジェシー・マス氏だ。
フォーニエール氏は、「これは競争と呼んでもいいだろう。プラットフォームはこれらのブランドが、購買者たちに持っている価値を理解している。そのため体験とプロダクトを届けるのに、ベストなブランドを取り込もうとしている」という。また小規模ビジネスのユニークな商品によって、彼らの提供するサービスの差別化をしたいと考えている、と付け加えた。
ミレニアルとZ世代の動向
プラットフォームたちはエージェンシーのような役割を行い、実店舗やオンライン上の場所を小規模ビジネスに提供しているだけではない。関心があるビジネスを対象にデジタル上の教室も展開している。たとえば、Facebookは2017年11月にFacebookコミュニティ・ブーストイベントをローンチした。ラインナップには新しい都市が追加され続けている。2018年2月には、今年の小規模ビジネス対象のプログラムに10億ドル(約1130億円)を費やすとも発表している。
プラットフォームたちが小規模ビジネスをプロモーションする必要性はここまで高まったのは、消費者からの需要が高まったことが一因だ。Z世代やミレニアル世代は小規模ビジネスを支援したいと感じているという調査結果はいくつも発表されており、それによってプラットフォームたちもそういったビジネスを取り込む必要性を感じているのだろうと、マーケターたちは指摘する。5000人の消費者を対象にしたAT&Tの2017年調査によると、ミレニアル世代とZ世代の半分は小規模ビジネスを支援するためには価格が高くても良い、と考えている。それに対して、X世代で同様の回答をしたのは38%だった。
「ミレニアル世代とZ世代の両方が、大規模ビジネスに対する信頼を失っている。大手のリテーラーたちは、自分たちのことを理解していないと感じている。小規模ビジネスは自分たちの名前を覚えており、感謝している気持ちが伝わってくるのだ」と、体験型エージェンシーのメイキング・ウェーブス(Making Waves)クライアント・サービス部門ディレクターのブルック・トーバー氏は言う。
Ilyse Liffreing(原文 / 訳:塚本 紺)