TikTokショップ(TikTok Shop)の試験運用から1年。期待が高まるなか、ときには混乱も見せたが米国での正式なローンチでTikTokショップは最大の山場を迎えている。TikTokは迅速に本腰を入れて、マーケターに予算投入を働きかけ始めたのだ。
TikTokの構想はシンプルだ。TikTokの動画はすでに注目を集めているのだから、製品をバズらせて、好調な売れ行きを実現する土壌はすでに整っている。あとは実際にTikTokショップで製品を販売し、利益をあげるだけだ。うまくいけば、TikTokはその売り上げから大きな利益を得られるようになる。
TikTokショップにはいくつか重要な機能がある。これまでとは違い、ホーム画面からショップボタンにアクセスできるようになった。この画面上で、マーケットプレイスへのリダイレクト、個別の製品の「ショップ」ボタンがある動画やライブストリーミングへのアクセスが可能になる。さらにAmazon同様、この2つのオプションで、ユーザーは数多くの売り手から製品の購入が可能となる。カートひとつで、何回かクリックするだけなのだ。しかもTikTokを離れずにすむ。
発見と創造を中心にしたユニークなショッピング体験
TikTokが参入したのは激戦地だ。eコマースは、メタ(Meta)やGoogle、Amazonなど、業界の巨人たちが何年もかけて達成しようとしたことだ。そして今やTikTokは、業界内で彼らと肩を並べる存在になっている。
「すでにインスタグラムが数年前から同じようなことをやろうとしている。専用のショッピングタブがあるほどだ」。そう話すのは、デジタルマーケティングエージェンシーのガール・パワー・マーケティング(Girl Power Marketing)を創業したディレクターのアニー=メイ・ホッジ氏だ。「買い手の習慣や生活費危機などの変化によって、TikTokショップも同じような運命をたどることが私にはわかる」。
しかしTikTokがピンポイントで考えているのは、「他社と差別化を図るために何が提供できるのか」だ。インスピレーションを与える場所、人との結びつきを育む場所、口コミでバズる製品を取り上げる場所としてTikTok Shopを売り込んでいる。この場所が、発見と創造を中心にしたユニークなショッピング体験になると確信しているのだ。
インサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)でSNS担当主席アナリストのジャスミン・エンバーグ氏はこう話す。「ユーザーの力で、そうしたショッピングのためにアクセスする場所にTikTokを変えられるのであれば、価値提案の観点では、TikTokならAmazonの価値をそれほど損なわずにeコマースで成功を収められる」。
電話を利用した通販番組のようなものだと考えてみよう。TikTokの場合、ユーザーはすでに「ほしい」と自覚しているものを買うだけではない。必要だと思ってもみなかった製品を見つけ出せるのがTikTokなのだ。これはまさに、ソーシャルコマースという概念が登場してからというもの、マーケターなら誰もが夢見てきた衝動買いの類である。当然ながら、TikTokを見れば、その夢をいかにして実現したのかは明らかだ。「口コミほど、TikTokユーザーの財布の紐が緩むものはない」とエンバーグ氏は話す。
クリエーターと広告主を取り込む
TikTokのソーシャルコマース投資が話題になったとき、対象を限定したピッチデック(プレゼン資料)が出回っていた。その対象はクリエイターである。ターゲットオーディエンスのZ世代を効果的に取り込みたいブランドにとって、クリエイターがいかに重要なのかを考えれば、この動きは当然だ。マーケターがTikTokで達成しようと掲げているのが、ブランド認知にとどまらない包括的な目標なため、この傾向は今後強まることはあっても、弱まることはないだろう。
そうはいっても、マーケターにしてみれば、何を始めるにしてもその前に知っておきたいのは、TikTokでこの種のeコマースがどれほど求められているのかである。
この数カ月、TikTokは面談や業界のイベントで、ブランドの広告担当役員に積極的な売り込みをかけている。また、使い方を教えるウェビナーを提供し、ブランド独自のニーズや関心に応えるピッチデックも、ブランドに合わせて用意している。ガール・パワー・マーケティングのホッジ氏によると、実際、TikTokはマーケティングインフルエンサーとも提携を結び、ウェビナーを実施したり、提携したインフルエンサーには、アフィリエイトでTikTokショップを自分の顧客に勧めるよう促したりしているという。
しかしながら、TikTokは広告主の獲得で、独自のアルゴリズムに依存しているだけではない。2名の情報源から得た内部情報によると、現在TikTokは紹介料プロモーションを実施しており、ブランドやマーケターにさらなるインセンティブを与えている。なお、同プロモーションの詳細は以下のとおり。
- 新規販売者は、今後2023年10月まで最初の90日間は販売手数料の支払いが免除される
- それ以降、TikTokは2%の手数料(1件あたりの顧客の支払い+TikTok割引)と受注1件あたり0.30ドル(約44円)の請求を開始する
TikTokショップは第4四半期の目玉
アドテク企業の別のマーケターが、TikTokとの関係を損なわないために匿名を条件に話してくれた内容によると、TikTokは最近の会議でTikTokショップを第4四半期の目玉として押しており、TikTopショップの立ち上げには、さまざまなリソースを提供しているという。たとえば、eコマースプラットフォームのショッピファイ(Shopify)との統合も含まれるという。
また、前述のマーケターは「TikTokはあたかもブランドが新しいプログラムを最初から最後までナビゲートできるコンシェルジュとマッチングできるかのようにプロセスを説明した(セットアップから、売上増加に役立つさまざまな広告の紹介まで)」と話した。
その同じ会議で、TikTokの営業はTikTokショップの新たなブランドが利用できる広告インセンティブについてそれとなく触れた。第4四半期のホリデーシーズンに先んじて、参加してもらうためだ。TikTokの広告インセンティブの詳細は明らかにされなかったが、ほかのプラットフォームも似たような戦術を使用している。たとえばXでは以前、広告主に対して広告料金の割引きを行い、イーロン・マスク氏の買収後も利用するよう呼びかけていた。
なお、米DIGIDAYが入手したメールによると、TikTokは9月1日から9月14日までの2週間、TikTokショップの広告に100ドル(約1万4500円)を支払ったブランドに対して、上得意である「バリュード・ショッピファイ・マーチャント」として1000ドル(約14万5000円)分の広告無料サービスを提供している。
欧米での課題は?
プレゼン資料によると、TikTokは「ショッパーテインメント(Shoppertainment)」と呼ぶものを推奨し、クローズドループでROI(投資利益率)をより効果的に高められるようにマーケターをサポートするという。これは間違いなく、多くの広告プラットフォームにとって「聖杯」である。つまり、オーディエンスが製品を検索する場所だけでなく、意見を交わしたり、製品をよく見たり、最終的には購入も行える場所になり得るのだ。
しかしながら現実には、ほとんどのプラットフォームが、この3つのすべてのポイントで他社を凌ごうとして苦戦を強いられている。それをTikTokが「我々ならできる」と確信しても、決して驚くには値しない。というのも、プレゼン資料でも強調されているように、ユーザーの2人にひとりが新製品や新ブランドをTikTokのランディングページ「For You」で見つけており、TikTokの広告を見たオーディエンスの実に63%がそのブランドを検索しているからだ。
さらに興味深いのは、TikTokユーザーの65%が、アプリ内のショッピングは手間がかからないため、購入はTikTokショップからと決めていたことだ。
とはいえ、こうした数字は斜めから見るのが肝要だ。この数字が出てきた調査は、TikTokユーザーを含めた約4500人を対象に、東南アジアで実施されたものだ。特筆に値するのは、東南アジアのユーザーには、さまざまなデジタルアクティビティをひとつのアプリにまとめる傾向が強く見られることだ。
そのため、確かにこの調査結果は貴重な事例として役立つが、TikTokの次なる課題も見えてくる。つまり、「欧米のユーザーにも、東南アジアのユーザーと同じような行動習慣を持ってもらうように働きかけられるか」である。
確かにTikTokは、単なる典型的なSNSプラットフォームではなく、製品購入に至るまでのカスタマージャーニー全体を網羅する包括的なプラットフォームとして取り組みを進めているものの、そのTikTokをしても、これは決して簡単な課題ではないのだ。TikTokショップは、この包括的なプラットフォームというビジョンを明確に打ち出したものであり、ブランド各社のショッピング広告やデータとともに、クリエイターと動画の創造性を駆使して、ユーザーの購買活動を促進していく。
TikTokショップ(TikTok Shop)の試験運用から1年。期待が高まるなか、ときには混乱も見せたが米国での正式なローンチでTikTokショップは最大の山場を迎えている。TikTokは迅速に本腰を入れて、マーケターに予算投入を働きかけ始めたのだ。
TikTokの構想はシンプルだ。TikTokの動画はすでに注目を集めているのだから、製品をバズらせて、好調な売れ行きを実現する土壌はすでに整っている。あとは実際にTikTokショップで製品を販売し、利益をあげるだけだ。うまくいけば、TikTokはその売り上げから大きな利益を得られるようになる。
TikTokショップにはいくつか重要な機能がある。これまでとは違い、ホーム画面からショップボタンにアクセスできるようになった。この画面上で、マーケットプレイスへのリダイレクト、個別の製品の「ショップ」ボタンがある動画やライブストリーミングへのアクセスが可能になる。さらにAmazon同様、この2つのオプションで、ユーザーは数多くの売り手から製品の購入が可能となる。カートひとつで、何回かクリックするだけなのだ。しかもTikTokを離れずにすむ。
Advertisement
発見と創造を中心にしたユニークなショッピング体験
TikTokが参入したのは激戦地だ。eコマースは、メタ(Meta)やGoogle、Amazonなど、業界の巨人たちが何年もかけて達成しようとしたことだ。そして今やTikTokは、業界内で彼らと肩を並べる存在になっている。
「すでにインスタグラムが数年前から同じようなことをやろうとしている。専用のショッピングタブがあるほどだ」。そう話すのは、デジタルマーケティングエージェンシーのガール・パワー・マーケティング(Girl Power Marketing)を創業したディレクターのアニー=メイ・ホッジ氏だ。「買い手の習慣や生活費危機などの変化によって、TikTokショップも同じような運命をたどることが私にはわかる」。
しかしTikTokがピンポイントで考えているのは、「他社と差別化を図るために何が提供できるのか」だ。インスピレーションを与える場所、人との結びつきを育む場所、口コミでバズる製品を取り上げる場所としてTikTok Shopを売り込んでいる。この場所が、発見と創造を中心にしたユニークなショッピング体験になると確信しているのだ。
インサイダー・インテリジェンス(Insider Intelligence)でSNS担当主席アナリストのジャスミン・エンバーグ氏はこう話す。「ユーザーの力で、そうしたショッピングのためにアクセスする場所にTikTokを変えられるのであれば、価値提案の観点では、TikTokならAmazonの価値をそれほど損なわずにeコマースで成功を収められる」。
電話を利用した通販番組のようなものだと考えてみよう。TikTokの場合、ユーザーはすでに「ほしい」と自覚しているものを買うだけではない。必要だと思ってもみなかった製品を見つけ出せるのがTikTokなのだ。これはまさに、ソーシャルコマースという概念が登場してからというもの、マーケターなら誰もが夢見てきた衝動買いの類である。当然ながら、TikTokを見れば、その夢をいかにして実現したのかは明らかだ。「口コミほど、TikTokユーザーの財布の紐が緩むものはない」とエンバーグ氏は話す。
クリエーターと広告主を取り込む
TikTokのソーシャルコマース投資が話題になったとき、対象を限定したピッチデック(プレゼン資料)が出回っていた。その対象はクリエイターである。ターゲットオーディエンスのZ世代を効果的に取り込みたいブランドにとって、クリエイターがいかに重要なのかを考えれば、この動きは当然だ。マーケターがTikTokで達成しようと掲げているのが、ブランド認知にとどまらない包括的な目標なため、この傾向は今後強まることはあっても、弱まることはないだろう。
そうはいっても、マーケターにしてみれば、何を始めるにしてもその前に知っておきたいのは、TikTokでこの種のeコマースがどれほど求められているのかである。
この数カ月、TikTokは面談や業界のイベントで、ブランドの広告担当役員に積極的な売り込みをかけている。また、使い方を教えるウェビナーを提供し、ブランド独自のニーズや関心に応えるピッチデックも、ブランドに合わせて用意している。ガール・パワー・マーケティングのホッジ氏によると、実際、TikTokはマーケティングインフルエンサーとも提携を結び、ウェビナーを実施したり、提携したインフルエンサーには、アフィリエイトでTikTokショップを自分の顧客に勧めるよう促したりしているという。
しかしながら、TikTokは広告主の獲得で、独自のアルゴリズムに依存しているだけではない。2名の情報源から得た内部情報によると、現在TikTokは紹介料プロモーションを実施しており、ブランドやマーケターにさらなるインセンティブを与えている。なお、同プロモーションの詳細は以下のとおり。
- 新規販売者は、今後2023年10月まで最初の90日間は販売手数料の支払いが免除される
- それ以降、TikTokは2%の手数料(1件あたりの顧客の支払い+TikTok割引)と受注1件あたり0.30ドル(約44円)の請求を開始する
TikTokショップは第4四半期の目玉
アドテク企業の別のマーケターが、TikTokとの関係を損なわないために匿名を条件に話してくれた内容によると、TikTokは最近の会議でTikTokショップを第4四半期の目玉として押しており、TikTopショップの立ち上げには、さまざまなリソースを提供しているという。たとえば、eコマースプラットフォームのショッピファイ(Shopify)との統合も含まれるという。
また、前述のマーケターは「TikTokはあたかもブランドが新しいプログラムを最初から最後までナビゲートできるコンシェルジュとマッチングできるかのようにプロセスを説明した(セットアップから、売上増加に役立つさまざまな広告の紹介まで)」と話した。
その同じ会議で、TikTokの営業はTikTokショップの新たなブランドが利用できる広告インセンティブについてそれとなく触れた。第4四半期のホリデーシーズンに先んじて、参加してもらうためだ。TikTokの広告インセンティブの詳細は明らかにされなかったが、ほかのプラットフォームも似たような戦術を使用している。たとえばXでは以前、広告主に対して広告料金の割引きを行い、イーロン・マスク氏の買収後も利用するよう呼びかけていた。
なお、米DIGIDAYが入手したメールによると、TikTokは9月1日から9月14日までの2週間、TikTokショップの広告に100ドル(約1万4500円)を支払ったブランドに対して、上得意である「バリュード・ショッピファイ・マーチャント」として1000ドル(約14万5000円)分の広告無料サービスを提供している。
欧米での課題は?
プレゼン資料によると、TikTokは「ショッパーテインメント(Shoppertainment)」と呼ぶものを推奨し、クローズドループでROI(投資利益率)をより効果的に高められるようにマーケターをサポートするという。これは間違いなく、多くの広告プラットフォームにとって「聖杯」である。つまり、オーディエンスが製品を検索する場所だけでなく、意見を交わしたり、製品をよく見たり、最終的には購入も行える場所になり得るのだ。
しかしながら現実には、ほとんどのプラットフォームが、この3つのすべてのポイントで他社を凌ごうとして苦戦を強いられている。それをTikTokが「我々ならできる」と確信しても、決して驚くには値しない。というのも、プレゼン資料でも強調されているように、ユーザーの2人にひとりが新製品や新ブランドをTikTokのランディングページ「For You」で見つけており、TikTokの広告を見たオーディエンスの実に63%がそのブランドを検索しているからだ。
さらに興味深いのは、TikTokユーザーの65%が、アプリ内のショッピングは手間がかからないため、購入はTikTokショップからと決めていたことだ。
とはいえ、こうした数字は斜めから見るのが肝要だ。この数字が出てきた調査は、TikTokユーザーを含めた約4500人を対象に、東南アジアで実施されたものだ。特筆に値するのは、東南アジアのユーザーには、さまざまなデジタルアクティビティをひとつのアプリにまとめる傾向が強く見られることだ。
そのため、確かにこの調査結果は貴重な事例として役立つが、TikTokの次なる課題も見えてくる。つまり、「欧米のユーザーにも、東南アジアのユーザーと同じような行動習慣を持ってもらうように働きかけられるか」である。
確かにTikTokは、単なる典型的なSNSプラットフォームではなく、製品購入に至るまでのカスタマージャーニー全体を網羅する包括的なプラットフォームとして取り組みを進めているものの、そのTikTokをしても、これは決して簡単な課題ではないのだ。TikTokショップは、この包括的なプラットフォームというビジョンを明確に打ち出したものであり、ブランド各社のショッピング広告やデータとともに、クリエイターと動画の創造性を駆使して、ユーザーの購買活動を促進していく。
※編注:プレゼン資料全文は原文記事より閲覧可能。
クリエイターとの協働
TikTokはクリエイターとの連携強化をコミットメントとして掲げているが、これはTikTokを形作るもののひとつであり、TikTokショップにもこの精神は生きている。
プレゼン資料によると、TikTokユーザーのほとんど(87%)は、新しいブランドや製品をTikTokにあるクリエイターのコンテンツで見つけ出しており、大半(78%)がTikTokでTikTokクリエイターのコンテンツを見たあとは、積極的に製品を購入しているという。
TikTokショップでeコマースオペレーションマネージャーを務めるシージョー・アナヤ氏は、最近行われたウェビナーでTikTokのクリエイターアフィリエイトプログラムについて説明し、「このプログラムのおかげでTikTokはほかのプラットフォームと差別化できる」と話した。
売り手はTikTokショップにサインアップして製品を紹介すると、TikTokのクリエイターアフィリエイトプログラムに参加するか選択ができる。このプログラムには2つのプランが用意されている。
ひとつは「オープンプラン」と呼ばれるもので、クリエイターは精査後、TikTokの基準を満たしていることが確認されれば、動画の制作を開始し、ブランドの製品をタグ付けできるようになる。その結果、クリエイターはブランドが事前に設定した手数料を得られるという仕組みだ。
もうひとつが「ターゲティッドプラン」と呼ばれるプログラムで、対象はブランドイメージに対する意識が高いブランドだ。これはマッチメイキングのようなものを想像するとよい。ブランドはクリエイターのプロフィールをチェックできて(フォロワー、適した分野、実績)、提携したいクリエイターに最大30人まで連絡が取れる(クリエイター側も最大30社のブランドと連絡が可能)。選ばれたクリエイターは、オープンプランと同じく手数料を得られる。
独自の広告フォーマットによる影響
TikTokで成功するためには、コンテンツがTikTok専用でなければならないことから、TikTokショップでは製品・動画・ライブショッピングの広告などに対して、独自の広告フォーマットを用意している。
プレゼン資料によると、こうしたフォーマットは有償であれオーガニックであれ、TikTokショップの流通取引総額(GMV)によい影響を与えているという。いわく、TikTokショップの広告フォーマットを利用すると、売り手はGMV中央値+129%の達成が可能になるという。さらには、利用する広告フォーマットがひとつや2つではなく、3つの広告フォーマットをすべて組み合わせた場合は、実にGMV中央値+242%を叩き出している。
TikTokが今回のプレゼン資料にかけているのは間違いない。TikTokショップは事実上、ほかのどのSNSプラットフォームもバイインで手中に収めていない未知の分野であり、カスタマージャーニーを価値あるものにするための、舞台裏のシームレスなテクノロジーなのだ。それに、TikTokのeコマースビジネスの行く末は、TikTokショップが収益を上げられるかどうかにかかっている。
欠けているのはテクノロジー構築だけではない
一方、先月2023年8月には、TikTokショップの米国市場で5億ドル(約725億円)を超える損失の見込みが報じられている。どのような企業であれ、ローンチした矢先に決して報道されたくない数字だ。この損失は、過剰な雇用、コンテンツ配信ネットワーク(CDN)の構築、2桁の割引を提供するブランドに対する支援によるものだと考えられている。
「TikTokが成長し、拡大できたのは、そこに集まる人たちの創造力が豊かだったからだ。クリエイターがTikTokを『ツァイトガイスト(その時代を象徴する思想・精神)』に変えたのだ」とインサイダー・インテリジェンスのエンバーグ氏は話す。
また、「TikTokをエンターテインメントプラットフォームに変えたのはクリエイターだ。今、TikTokに足りないのは、テクノロジー構築だけではない。これからは、TikTokユーザーの財布の紐を緩ませる創造力も求められる。とはいえ、成功の兆候は見え始めている。特に小規模なD2Cブランドが、すでにTikTokショップで結果を出している」と述べた。
[原文:Pitch Deck: Inside the TikTok Shop pitch to brands]
Krystal Scanlon(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)