Google 傘下の地図アプリ、「屋外広告」の分野を侵略?:態度変容を促す「ウェイズ」の可能性

Googleは、YouTubeを使ってテレビコマーシャルをオンラインに引き入れた。そして今度は、ウェイズ(Waze)を使い、屋外広告看板を携帯電話に取り込もうとしている。

ウェイズは、渋滞情報をコミュニティでシェアできる世界最大のカーナビアプリ。2013年にGoogleは、このイスラエルのアプリを約10億ドル(約1090億円)で買収した。この買収の目的は、ほかの巨大テック企業に価値を生む地図ビジネスを奪われないようにすることだけではなかった。Googleは新たな広告手段を得て、以降じわじわと規模を拡大してきたのだ。ウェイズは、同社の広告効果は「相当なもの」であり、1億人の月間アクティブユーザーを「動かす」とアピールする。

屋外広告看板と違って、ウェイズは誰が広告を見て、その場所までドライブしたかを知っている。また、対照群を設けて広告主の効果測定を支援している。掲載地点を通過したユーザーの一部には広告を提示せず、広告を見たユーザーとの行動を比較できるようにしているのだ。また、価格の安さも売りだ。米DIGIDAYが入手した事業提案プレゼンテーションによれば、1カ所の事業広告の掲載料は1日2ドル(約220円)からだ。

来店は33%増加

同プレゼンによれば、広告主の店舗へのナビゲーションは平均で33%増加するという。具体例として紹介されているカンフーティー(Kung Fu Tea)の事例では、3カ月のあいだに、ウェイズの広告を見て店舗を訪れたドライバーは、16店舗で合計5500人にのぼったという。また、バージニア州スプリングフィールドの店舗は、ウェイズ・ローカル(Waze Local)の広告のおかげで、12月の1カ月のあいだにナビゲーションが30%増加したという。

ウェイズの事業提案プレゼンのスライド

ウェイズの事業提案プレゼンのスライド

2006年以降YouTubeのマーケティング責任者を務めていたスージー・レイダー氏が、昨年12月にウェイズの米国内売上責任者に就任。ウェイズでの仕事はエージェンシーの契約を取り付け、維持することであり、YouTubeでブランドとの契約を(Googleが買収する前から)統括していた以前と、さほど変わらない。レイダー氏は、ウェイズの価値の一部は、ウェブベースのプラットフォームであることに由来すると述べる。重要なのは、ユーザーがどこに向かっていて、途中に何があるかを把握しているということだ。

「我々には、実際に人々を目的地まで連れていくマーケティングカーがある」と、レイダー氏。「私はこれまで大規模なビジネスを展開してきたが、事業を成長させることにも情熱を注いでいる」。

新しいシナジー効果

ウェイズの経営はGoogleから独立しており、約400人の社員は大部分がイスラエル国内で勤務しているという。米国内の広告売上に加え、ウェイズはローカル広告事業にも力を入れている。2016年以降ベータ版として試験運用されてきたが、今年3月に正式にウェイズ・ローカルとしてローンチした。これまでのところ、1万5000以上の中小事業者がウェイズの広告プラットフォームを利用している。

Googleはユーザーのプロフィールと関心について大量のデータを保有しているが、Googleマップとウェイズは別個のシステムのままだ。ウェイズを利用する広告主は、1日の時間帯、目的地、渋滞状況、天候に応じてユーザーのターゲティングができる。ウェイズの広告が表示されるのは、車が完全に停止しているときだけだ。

いくつかの大企業は、ウェイズの通常の全画面広告からさらに踏み込んで、アプリ内での広告体験を提供している。たとえばダンキンドーナツ(Dunkin’ Donuts)は予約注文機能を追加し、アプリを切り替えることなく、ウェイズのアプリから(完全に停車しているときに)直接注文できるようにした。ダンキンドーナツがウェイズの広告に注目した理由のひとつは、ユーザーの時間を節約できることだ。

「ダンキンドーナツとウェイズはシナジー効果で互いに得るものが多い。出先の顧客を一日中楽しませ、ドライバーの時間を1日に5分節約できる」と、ダンキンブランズ(Dunkin’ Brands)のメディアディレクター、ニック・ダナム氏はいう。「ウェイズのユーザーの運転体験の中心にダンキンがあれば完璧だ」。

YouTubeとの共通点

ウェイズの広告主はガソリンスタンドとレストランだけではない。たとえば、不動産会社のレックスリアルエステート(REX Real Estate)は、オープンハウスの宣伝のために広告枠を購入している。ただし、最小限かつ散発的な広告出稿にとどめているブランドもある。ウェイズのあるアクティブユーザーは、タイヤ販売チェーンのベルタイヤ(Belle Tire)の広告を見たという。だが同社に米DIGIDAYが取材したところ、現在は広告を掲載していないとのことだった。

Googleの広告売上全体と比較すると、ウェイズの規模は小さい。また、YouTubeの月間ログインユーザーが18億人を超えるのに対し、ウェイズは1億人にすぎない。前者はネット動画最大手、後者は地図アプリだが、レイダー氏はふたつのプラットフォームに共通点は多いと述べる。

YouTubeとウェイズは「いずれも明確な目的意識をもったブランドであり、広告主にコミュニティと本物の価値を提供できる。どちらに関しても、もっとも重要なのは、広告がユーザー体験を損なうのではなく、向上させるという点だ」と、レイダー氏は語った。

Kerry Flynn(原文 / 訳:ガリレオ)