[ DIGIDAY+ 限定記事 ]Facebookは、どうすればテレビや動画のアップフロント市場での競争に勝ち残れるかがわかってきているようだ。Facebookが2019年春、広告バイヤー向けに公開したピッチ資料を見れば、それがよく分かる。本記事で紹介する資料では、Facebookのアップフロントの動画広告プログラムの契約の概要が記されている。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]Facebookは、どうすればテレビや動画のアップフロント市場での競争に勝ち残れるかがわかってきているようだ。Facebookが2019年春、広告バイヤー向けに公開したピッチ資料を見れば、それがよく分かる。下記に示したその資料では、Facebookのショーケース(Showcase)と呼ばれる、アップフロントの動画広告プログラムの契約の概要が記されている。そこでは価格や、値引きやキャンセルに関する条項も含まれている。
広告主のアップフロント投資の初回の入札にあたって、Facebookは、テレビ広告に重きを置いている広告主に加えて、デジタル中心の広告主に対してもアピールしていた。Facebookは、昔ながらのテレビから一定額の広告費を奪い取ることには成功している。しかし、広告バイヤーたちは、Facebookは2019年、2020年度のマーケットプレイスで本格的に競争していけるための実験を行っているとの見解を示している。「この資料から、Facebookが基本的な仕組みを理解したことが読み取れる」と、あるエージェンシー幹部は語る。
「ひどく傲慢だというはない」
Facebookのピッチ資料には、2019年の第4四半期から2020年の第3四半期までの期間の各四半期ごとに、さまざまな年齢や性別で分けられたオーディエンスのセグメントにリーチするうえでの詳細な値段が書かれた料金表が含まれている。このやり方はこのエージェンシー幹部にとっては違和感があるという。テレビの広告バイヤーは料金表を与えられることに慣れておらず、テレビネットワークとのアップフロント契約での交渉の際には、それまでのデータに大きく頼っているのがその理由だ。「彼らは過度に形式化しようとしているように感じる」と、その幹部は語る。とはいえ、この料金表は、Facebookと広告バイヤーが値段交渉するうえでのたたき台として機能しており、22〜34ドル(約2300〜3600円)というインプレッション単価は「いいスタート地点」だと、その幹部は語る。「ひどく傲慢だというはない」。
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だが、この料金表が示しているのは、広告主がFacebookのインストリーム動画広告のインベントリを購入する際の値段だけだ。また、そのインベントリでは、彼らが意図するターゲットの顧客層にインプレッションがリーチできているかを、ニールセン(Neilsen)に計測を依頼している。この資料によると、広告主が最後まで視聴されたときにだけ支払いたいと望む場合は、Facebookが「スループレイ」と呼ぶ、最低でも価格が20%高い料金が適用される。
「ショーケースを立ち上げたときの我々の目標は、現在の市場に適したアップフロントソリューションを提供することだった。業界と密接に協働し、市場に合致した商品であることを示すために、我々は多大な時間をかけてきた。これによって、ニールセンの計測から料金や交渉に際しての全体的なアプローチまで、多くの要素がショーケースに記載されることになった」と、Facebookで北米のエージェンシーパートナーシップ部門のディレクターであるエリック・ガイスラー氏はeメールで回答してくれた。
エージェンシーとの関係性
Facebookは、2019年のアップフロントでは、Facebook Watch(ウォッチ)上で配信されている個人のオリジナル番組とのスポンサーシップ契約に狙いを定めていたが、このピッチにおける最重要項目であり、そして下記に示す資料の肝になる部分は、インストリームリザーブと呼ばれる、このプラットフォームの人気の一連の動画チャンネルインベントリだ。広告主は、インストリームリザーブのチャンネルにある、ポートフォリオ全体を見たうえで購入できる。または、食べ物、スポーツ、美容、そしてエンタメの4つの特定のコンテンツカテゴリからの選択も可能だ。
Facebookが2019年2月に公表した数字によると、2018年12月7日から2019年1月31日の期間に、アメリカ国内でインストリームリザーブに適した動画を見た成人の数は、月ごとの平均で1億人近くにも及ぶという。Facebookが広告主に公開し、米DIGIDAYによるレビューがされた別の資料によると、Facebookは18歳から34歳までの5100万人、18歳から49歳までの8500万人、そして25歳から54歳までの7500万人というように、年齢層によって月ごとの平均数を分類している。また、Facebookは、この資料で、1月17日から4月14日までの期間に、インストリームリザーブに適した動画を視聴したアメリカ国内の成人の人数を公開した。それによると、食べ物のカテゴリの視聴者数は2300万人、スポーツは2500万人、美容は1100万人、そしてエンタメのカテゴリでは7400万人であった。Facebookの広報は、この数字に関するコメントはしなかった。
Facebookがこの資料全体を通じて、広告主とエージェンシーの関係性を主張していることに対して、あるエージェンシーは注目している。Facebookのこれまでのソーシャル向けの広告では、「エージェンシーとではなくクライアントと直接仕事をしたがることが多かった」と別のエージェンシー幹部は語る。だが、テレビや動画のアップフロント市場で主要な役割を担っているのは、大量購入しているエージェンシーだ。エージェンシーの予算投入計画を割引価格の提供に組み込んでいることからも、Facebookはそれを認識しているように見える。
割引とキャンセルについて
以下のスライドでは、Facebookがどのように広告主に割引を提供するかが示されているが、これは広告主やそのエージェンシーによるアップフロントでの投資額にもとづいている。この資料によると、広告主やエージェンシーは、投資予定の金額にもとづいて個別に割引が受けられるようになっている。この割引額は、Facebookが広告主に請求する金額に合算される。エージェンシーはその割引を仲介料として搾取せず、クライアントに全額渡さなければならない。割引のセットとしては3つの区分があるが、それぞれの割引の度合いについては明かされていない。
エージェンシー幹部によると、アップフロント取引のキャンセルに関するFacebookの条件も、そこまでひどくはないという。Facebookは広告主に対して、四半期ごとにインストリームの動画広告インベントリに対する投資予定額の最大半分までの金額をキャンセルできるようにしている。これによって、広告主やエージェンシーは、Facebookのプレロールおよびミッドロール広告インベントリの購入計画にあたって、より高い自由度を得ることができているという。
料金レートの表でも、ショーケースの契約のキャンセルに関して自由度があり、これは自身の広告が挿入される動画がどのようなものかを気にかけている広告主にとっては重要なことだ。たとえば、広告主がある四半期中の投資計画の一部分をキャンセルしたい場合、広告主はFacebookに対して、その四半期がはじまる少なくとも90日前に通知する必要があると、Facebookは資料のなかで言及している。ここで問題となるのは、Facebookが広告主やエージェンシーに対して、インストリームリザーブ内に含まれるチャンネルのリストを、キャンペーン開始の1カ月前にならないと公開していないということだ。この点で、契約条項によると、広告が挿入されるチャンネルのラインナップが気に入らなかったとしても、広告主が予算投入をキャンセルするには時すでに遅し、となってしまう場合がある。だが、実質的には、広告主やエージェンシーはFacebookにキャンセル料負担の減額を交渉することが可能だ。
下記に全資料を掲載する。