ピンタレストのIPO申請内容と、その真の狙い

画像検索エンジンであるピンタレスト(Pinterest)が3月22日、新規株式公開(IPO)に必要な書類を提出した。同社はニューヨーク証券取引所に近く上場し、ティッカーシンボルは「PINS」となる。200ページ近くに及ぶ届書S-1には、創立から9年目を迎えた同社の現状、将来に向けてのプラン、ライバル視している企業などが詳細に綴られている。以下が、同社が潜在的投資家に向けてS-1に記した文章の抜粋と、その真の狙いだ。

ピンタレストはソーシャルネットワークではない

IPO申請内容:「ピンタレストは人々の夢をプランニングするプロダクティビティツールです。夢と生産性(プロダクティビティ)は相反すると思われるかもしれませんが、ピンタレストでは、インスピレーションが行動を可能にし、夢が現実になります。将来のビジュアル化はその実現の一助になります。この点において、ピンタレストは唯一無二です。大半のコンシューマーインターネット企業はツール(サーチ、eコマース)か、メディア(ニュースフィード、動画、ソーシャルネットワーク)かの、いずれかです。ピンタレストは単なるメディアチャンネルでも、たんなるツールでもありません。 ピンタレストはメディアリッチなツールであり、大半のプラットフォームが対応していない、多くの消費者が抱える問題を解決することで、心情面、機能面の両ニーズをいずれも満足させることができます。我々はこれを発見(discovery)と呼びます」。

真の狙い:ピンタレストはFacebookやインスタグラム(Instagram)、Twitter、Snapchat(スナップチャット)といったソーシャルアプリと比較対照されることが多い。ただし、当の同社は、ソーシャルネットワークと定義されることを嫌う。以前、ピンタレストは自らをバーチャルピンボードと称していた。届書によれば、ピンタレストはツールと「メディアリッチ」の両要素を兼ね備えている。だが、インスタグラムも同様なのでは?

ピンタレストのユーザーは事実、大半が女性だが、男性もいる

IPO申請内容:「ピンタレストには月間アクティブユーザーが2億5000万人おり、その 2/3が女性です。インターネット調査企業コムスコア(comScore)が我々の全ユニークビジター数に基づいて実施した独自調査によると、米国におけるインターネットユーザーの43%がオーディエンスとなっています。商品やサービスの購入など、家計に関する意志決定者であることが多い母親に関しては、割合で10人のうち8人が我々のオーディエンスであり、米ミレニアル世代の半数以上も同様です。今後も、とりわけ海外市場において、ユーザーベースの継続的拡大が見込まれます」。

真の狙い:ピンタレストは、あくまでも女性向けの、とりわけ結婚を控えた若い女性か、室内装飾に目がない高齢の女性のためのプラットフォーム、というレッテルの払拭に努めている。今回の届書において、同社は女性オーディエンスについて、単純にショッピングを好むことを根拠に、きわめて価値が高いと強調している。同時に、同社は銀行家らに向けて、男性オーディエンスの存在も強調したいと考えている。届書の1ページ目にピンタレストユーザーの写真が6枚載っており、そのうち3人が男性で、説明によれば、彼らもショッピングを好む。テリエンは料理が好き、パブロは靴が好き、カールはドライバーなどの工具が好き、とされている。

ピンタレストでは、関心を知れるが、真の効果測定は不得意

IPO申請内容:「我々のプラットフォームがほかと違う点のひとつに、初期関心フェーズを含め、あらゆるパーチェスファネルにおいて、広告主が関連コンテンツをピナー(Pinners:同サービスのユーザーの通称)の目の前に出せる点があります。しかしながら、広告効果を測定する既存ツールの多くは、ユーザーの意志決定プロセスの初期段階における広告の持つ重要性を評価しません。そして、多くのユーザーはその段階で我々のサービスを利用しています。そのため、初期関心フェーズにおけるユーザーへのエンゲージメントに関する我々の価値が、広告主に対し、十分に証明および測定されていない可能性があります」。

真の狙い:「初期関心」に関するかぎり、ブランドはピンタレストを重要視しているかもしれないが、同プラットフォームは測定ツールを有する競合他社に比べ、洗練度で劣る。実際、ピンタレストも申請書の後半において、さまざまな測定のほか、広告制作やキャンペーンスケーリングの一助となるセルフサーブ型ツールの開発計画を述べている。

ピンタレストよりもほかの多くのテック企業の方がはるかに強力

IPO申請内容:「我々はAmazonやFacebook(インスタグラムを含む)、 Google、Snap、Twitterといった、より規模の大きい、すでに確立された企業と競合しています。彼らはユーザーに対し、多様なオンライン商品、サービス、コンテンツ、広告オファリングを提供しており、これにはウェブサーチエンジンやソーシャルネットワークのほか、商品およびサービスの発見、使用、獲得に関するさまざまな手段が含まれます。これら競合他社の多くは、我々よりも操業履歴が長く、特に財力、技術力、マーケティング力といったリソースに優れるとともに、より大きなユーザーベースも有しています。これら競合他社はまた、より多くのデータへのアクセスと、訪問回数のより多いプラットフォームも有しており、ゆえに自らのユーザーベースのよりよい理解と、関連性のより高いコンテンツの開発・提供が可能となっています」。

真の狙い:「ピンタレストには競合他社が大量に存在する。上記のとおり、Amazon、Facebook、Googleはいずれも莫大な財力とデータを持っている。その財力をもってすれば、彼らは、いついかなるときでもピンタレストに痛手を負わせる行動に出ることができる。また、彼らのデータ量は広告主を引きつけるのに十分であり、それは今後も変わらないと思われる。ピンタレストも実際、同届書において、自社のピン機能と瓜二つと言えるインスタグラムの機能「コレクション」を名指しで挙げている。

ピンタレストはDTCに売り込むためのチームとツールを構築している

IPO申請内容:「[ミッドマーケットアドバタイザーに]分類される広告主には(中略)、DNVB(Digitally Native Vertical Brands)など、商品やサービスを消費者に直接販売する新進のビジネスモデルも含まれます。なかにはパーチェスファネルの全段階において対象にフォーカスする広告主もいますが、彼らの大半は主にデジタル広告に依存し、オンライン販売およびコンバージョン率を注視しています。彼らは一般に少人数のマーケティングチームを有し、広告費のダイナミックアロケーション戦略を利用しており、最良のリターンが望めるプラットフォームに合わせて、いかに迅速に広告をデザイン、スケーリング、シフトできるかに関して非常に敏感です。我々は、こうした企業が弊社ミッドマーケットチームとの関係や、美しいピンタレスト広告をたやすく制作できるツールのほか、さまざまなセルフサーブ型キャンペーンスケーリングおよび効果測定ツールを通じて、それぞれの目標を達成するための一助となります(後略)。我々はこうしたミッドマーケットアドバタイザーと以前から協力関係を築いておりますが、彼らにより良いサービスを提供するための商品および測定ソリューションを構築したのは、最近のことです。今後も、広告制作、キャンペーンスケーリングおよび測定について、こうした広告主の一助となるより多くのセルフサーブ型ツールを開発できるよう、尽力する所存です」。

真の狙い:ピンタレストはFacebookとインスタグラムが享受している広告費を奪いたいと考えている。デジタリーネイティブブランドはこれまで、新規顧客獲得のためのキャンペーンに投資してきた。その見返りに、Facebookは「ディスラプターブランド」に特化したチームを編成し、彼らのニーズに応えてきた。ピンタレストはここに割って入ろうとしている。同社はこのカテゴリーに属する新規広告主を獲得するべく、営業チームを結成するとともに、一連のソリューションを構築しており、今後、自らをカスタマーアクイジションプラットフォームとして売り込み、広告料のさらなる投資を促していく考えだ。こうしたブランドは、大企業に比べて広告予算は低いものの、売上およびブランドアウェアネスの向上にソーシャルメディアを利用しており、ピンタレストが広告プラットフォームとしてFacebookおよびインスタグラムと本気で渡り合いたいのであれば、彼らの引き寄せは不可欠となる。

ピンタレストが次に構築していくもの

IPO申請内容:「弊社プラットフォーム上でパーチェスファネルを進んでいくピナーに対して広告主が価値を提供できる商品の構築。弊社サービスに対するピナーのエンゲージメントを深められる、レンズ(Lens)など、コンピュータービジョンをはじめとする技術革新を利用した、ビジュアルリコメンデーションの適合性の向上。ブランド、リテーラー、コンテンツ制作者とのパートナーシップの強化による、高品質の商用コンテンツの弊社プラットフォームへのさらなる導入」。

真の狙い:ピンタレストのビッグチャンスは、ビジュアル検索の、そして究極的にはビジュアルコマースの推進によって生まれる。コンピュータービジョンといった技術における今後の進歩によって、「インスピレーション」と「行動」という点と点がつながり、これによりピンタレストがショッパブルになることを同社は大いに期待している。ピンタレストがインスタグラムを含む同種のプラットフォームと本気で競合するつもりであれば、今後、より多くのブランドとリテーラーを引き込んでコンテンツを制作させる一方、同社のオーガニックコンテンツとのバランスをとり、そこでの発見を何かしらの行動に変えるための有効手段を創造していくことが予想される。

Digday Editors(原文 / 訳:SI Japan)