ピンタレスト、「消費者インサイト」で広告バイヤーを魅了

6月5日、IPGメディアブランド(IPG Mediabrands)のカフェのテーブルに、おいしそうな軽食が並んだ。ギリシャヨーグルトドーナツ、ラズベリーアーモンドパウンドケーキ、フローズンヨーグルトフルーツケバブ……それらは熱心なマーケターが用意したのでも、ベンダーからの賄賂でもなかった。ピンタレスト(Pinterest)のエージェンシー向けプレゼンテーションの一環だったのだ。

この1時間のイベントは、ピンタレストのパートナーシップチームがエージェンシーを訪れ、対面で新たな製品機能を説明し、前四半期を振り返って総括するというものだった。ピンタレストはメディアブランドで、オーディエンスインサイトツール(Audience Insights Tool)を6月中に誰でも利用できるようにすると発表した。これまでベータ版だったこのツールがピンタレストのアドマネージャー(Ads Manager)が使えるようになれば、ストラテジストやバイヤーは、いちいちピンタレストに電話をかけなくても、プラットフォーム上で何が起きているかを把握できるようになる。

「エージェンシーやクライアントは、我々が独自の見識をもっていることを知っているが、これまでそれに接するのは容易ではなかった」と、ピンタレストのエージェンシーパートナーシップ責任者、ヨランダ・ラム氏はいう。「営業担当者に電話して、知りたいことを聞き出す必要があった。これからは、ツールにアクセスするだけでデータが手に入る」。

ライバルたちとの違い

同ツールは、広告売上増加をめざすピンタレストの最新の取り組みの一環だ。同社はFacebook(および傘下のインスタグラム)、Google、Amazon、Twitter、Snapchatと競合関係にあり、市場開発責任者のビクラム・バスカラン氏は、メディアブランドでのプレゼンテーションで、これらのプラットフォームすべてに言及した。もちろん、ツールがすべてを解決するわけではない。ピンタレストはこれからもバイヤーに対し、プラットフォームとしての重要性をアピールしていかなくてはならない。そして、それこそが直接訪問の目的だ。ラム氏らの考えでは、ピンタレスト独自の価値を担うのは、2億人の月間アクティブユーザーに関するリアルで実用的なデータだ。ピンタレスト上の行動履歴は、彼らの購買行動に直結している。

「これは抽象的なデータではない。人々の生活についてのリアルなデータだ。アイデンティティや意思のデータベースなのだ」と、バスカラン氏はプレゼンテーションの終盤で述べた。「Amazonもユーザーの意思は把握しているかもしれないが、彼らはユーザーがどんな人物かは知らない」。

だが、本当の姿を知らないというのは、ピンタレスト自体にあてはまる問題でもある。ユーザーも、バイヤーも、投資家も、メディアの記者も、ピンタレストをどうカテゴライズしていいか、ずっと頭を悩ませてきた。CEOのベン・シルバーマン氏は2015年、ピンタレストはFacebookやインスタグラムのようなソーシャルネットワークではないと公言した。バスカラン氏のプレゼンテーションのスライドでは、Facebookやインスタグラムは「パーティーを開いた」、TwitterやSnapchatは「いまパーティーを開催中」であるのに対し、ピンタレストは「これからパーティーを開く」だと説明された。

「どの街に行っても、まず気づくのは誰もがインスタグラムをやっていることだ。インスタに神の祝福あれ」と、バスカラン氏。「我々の知るかぎり、人々は何かをなしとげるためにピンタレストを開く。ただ漫然と見ているわけではない。ピンタレストには人々の人生設計がある。パーソナル生産性ツールと呼んでもいいくらいだ」。

アイテムを検索するユーザーに、ピンタレストはただ選択肢のリストを提示するわけではない。そこがGoogleやAmazonとの違いだ。ピンタレストは視覚的で、ユーザーは進んで主観的になる。ピンタレストが先日、フルスクリーンではなく全幅の動画広告をリリースした理由のひとつがこれだ。見たい映画や飼いたい犬種のカタログづくりなど、ピンタレストのデイリーユーザーアクティビティーのジャンルは多岐にわたるが、ピンタレストの営業チームが購入を勧めるのは、バレンタインデーやハロウィンなどのイベントに合わせた広告枠だ。ピンタレストでは、祝い事の準備が早くからはじまる。バスカラン氏は、ユーザーのイベント計画サイクルを説明するスライドとパンフレットを用意した。

IPGメディアブランドでプレゼンする、ピンタレストの市場開発責任者ビクラム・バスカラン氏

IPGメディアブランドでプレゼンする、ピンタレストの市場開発責任者ビクラム・バスカラン氏

事例から見る優位性

調味料ブランドのマコーミック(McCormick)は、オーディエンスインサイトツールのリリース前から、ピンタレストの分析チーム「ピンサイト(Pinsights)」の力を借りてキャンペーン戦略を練っていた消費者向け製品ブランドのひとつだ。今年、マコーミックはスーパーボウル観戦パーティーに合わせ、フランク(Frank’s)レッドホットソースフレンチ(French’s)マスタードを使ったレシピを含むプロモートピンを制作。この広告は1月1日からスーパーボウル当日である2月4日まで、ユーザーのスーパーボウル関連の保存や検索に合わせて提示された。マコーミックはイースターに合わせたキャンペーンも実施し、合衆国独立記念日(7月4日)に向けたキャンペーンも計画されている。

「マコーミックとピンタレストは相性がいい。ユーザーは、発見ベースのプラットフォームで家族の食事のレシピやアイデアを積極的に探している」と、IPG傘下のリプライズ(Reprise)でペイドソーシャル責任者を務めるサラ・テフラニ氏はいう。「ピンタレストのユーザー層は母親、ミレニアル、食通に偏っているので、ターゲティングのスケールと正確性に大いに期待できる。完璧な組み合わせだ」。

もちろん、すべてのキャンペーンのターゲットをミレニアルや母親にしなければいけないわけではない。バスカラン氏はプレゼンで、父親や男性もアクティブユーザーだと言及。彼自身、ピンタレストの男性ユーザーのはしりだという。

ピンタレスト幹部が示したのは、GDPRケンブリッジ・アナリティカ以降の世界で、ユーザーがどんなときに個人情報を進んで提供するか、メディアブランドなどのバイヤーはそれに応えてどうすれば価値を提供できるかだ。バスカラン氏は、ユーザーデータに基づくピンタレストのパーソナライゼーションを、Netflix(ネットフリックス)のおすすめ映画リストや、Spotifyのディスカバーウィークリーにたとえた。たとえばピンタレストでは、メイク関連の検索結果は肌のトーンに合わせてパーソナライズされる

「ピンタレストは妻よりも私のことをよく知っていると思う」と、バスカラン氏はいう。「インスタグラムはアイデンティティの一部を表しているかもしれない。だがピンタレストには、わたしの関心すべてが詰まっている。それらを統合したものが、ピンタレストのテイストグラフだ」。

もうひとつの強み

ほかのプラットフォームにないピンタレストのもうひとつの強みは、ユーザーが広告を保存してくれることだ。バスカラン氏によれば、ピンタレストのピンの75%はブランデッドコンテンツだという。

「いまやソーシャル消費が一大産業となっていて、ブランドには思慮深くあることが求められる。だが(ピンタレストは)用途のすべてがソーシャル消費の一環だ。人々はアイディアを求めて訪れ、ブランドがコンテンツを豊かにする」と、バスカラン氏は述べた。

Kerry Flynn (原文 / 訳:ガリレオ)