2021年6月7日(現地時間)にピンタレストが公開した「ショッピングリスト」機能は、ユーザーのプロダクトピンをひとつの場所にまとめて自動保存する。この機能を使えば、気になる商品をいったん保存し、後から戻って購入することが容易になる。配送料とレビューも表示されるほか、保存した商品が値下げになると、ユーザーに通知される。
ショッピング機能の充実に取り組むピンタレスト(Pinterest)が、ショッパブルなプロダクトピンを自動的に保存し、価格変更をユーザーに通知する新しい機能を公開した。
2021年6月7日(現地時間)にピンタレストが公開した「ショッピングリスト」機能は、ユーザーのプロダクトピンをひとつの場所にまとめて自動保存する。この機能を使えば、気になる商品をいったん保存し、後から戻って購入することが容易になる。配送料とレビューも表示されるほか、保存した商品が値下げになると、ユーザーに通知される。6月中に、米国と英国のすべてのユーザーがこの機能を使えるようになるという。また、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツでも、年内に公開される予定だ。
ショッパブルなプロダクトピンは、2019年3月に導入された機能で、ピンタレストの認定を受けた小売企業やショップがアップロードしたカタログと紐付いている。最高経営責任者(CEO)のベン・シルバーマン氏は、2021年第1四半期の決算説明会で、「この機能は今年に入って成長軌道に乗り、カタログのアップロード数は過去12カ月間に、全世界で14倍に増えた」と述べている。なお、カタログのアップロードに関する具体的な数字は開示されなかった。
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商品の価格情報は、小売企業のWebサイトから取得しているが、この情報収集、いわゆるサイトスクレイピングはブランド側で停止可能だ。なかには、24時間ごとに更新される商品データベースに、ピンタレストが直接アクセスできるようにしているショップもある。
ピンタレストでショッピングプロダクトの責任者を務めるダン・ルーリー氏はこう話す。「トップファネルとミドルファネルはすでに連携した。今度は、ピンタレストのユーザーが発見した商品の比較や評価をできるようにしたい」。
ソーシャルコマースの急成長を受けて
今年に入り、ピンタレストはソーシャルコマースを支援するための機能を立て続けに公開している。
たとえば、検索で表示される「ショップ」タブ、化粧品を試用できる「バーチャルトライ」機能、3日間にわたるライブコマースの公開テストなどがこれに含まれる。ショッピングリストは、その延長線上にある最新の機能だ。
あたかも「鉄は熱いうちに打て」を地で行くような力の入れようだが、それも当然かもしれない。調査会社のイーマーケター(eMarketer)が今年1月に発表した報告書によると、米国におけるソーシャルコマースの売上高は、2019年は192億ドル(約2兆1100億円)、2020年は267億ドル(約2兆9000億円)で、今年は360億ドル(約4兆円)に達する見込みという。
広告主にとって大きな付加価値
複数のエージェンシーによると、ピンタレストが提供するデータが詳細かつ多いことから、広告主はピンタレストの活用を大きなビジネスチャンスと見ているようだ。
電通でペイドソーシャルの責任者を務めるステフ・スミス氏は、米DIGIDAYのメール取材にこう応えている。「ピンタレストへの投資は、競合も含むプラットフォームへの投資全体から見ればわずかだ。だがそのなかで、ピンタレストショッピングはもっとも資金を集めている」。
また、スミス氏によると、ピンタレストが提供するソーシャルコマースのレポートでは、再生回数とクリックのメトリクスをそれぞれ取得できるという。これはFacebookやインスタグラムのレポートにはない機能で、スミスはこう強調する。「再生回数に基づいて収益目標を設定しているが、それ以上の詳細なデータや履歴を持たないクライアントにとって、少なくとも短期的には重要な検討材料となるだろう」。
パフォーマンスマーケティングの支援を行うディジショップガール(DigiShopGirl)のカーチャ・コンスタンティンCEOによると、同氏のクライアントもピンタレストが提供する指標に満足しているという。「ピンタレストはレポートする指標を強化して、オーガニックとペイドの両方のピンについて、タグ付けのパフォーマンスを確認できるようにした。広告主にとって、これは大きな付加価値となっている」。
ユーザーの少なさがボトルネック
もちろん、懐疑的な人々もいる。
イーマーケターのアナリスト、ナズマル・イスラム氏は、ピンタレストの最大の弱点として、「Facebookやインスタグラムに比べてユーザー数が少ないこと」を挙げている。ソーシャルコマースの世界を戦っていくうえで、この問題はピンタレストにとっての足かせになる可能性がある。
さらに、そもそもピンタレストでソーシャルコマースが実施できるのかという疑問も、広告主のあいだでは根強い。フォレスター(Forrester)のバイスプレジデントで、主席アナリストでもあるスチャリタ・コダリ氏も、「これは、昨日今日に出てきた話ではない」と述べる。「ピンタレストは、以前からさまざまなコマース機能を打ち出してきたが、彼らは基本的にディスカバリーエンジンであり、広告媒体だ」。
ピンタレストは、ショッピングリストはユーザーが求めていた機能であり、人々がピンタレストをどのように利用するかを考えれば、進むべき当然の方向だと強調。ルーリー氏は以下のように説明する。「ユーザーはインスピレーションを求めてピンタレストにやってくる。何かを計画したり、創造したりするときのヒントを求めてくる人々もいる。そして大抵の人々は、自分に合う商品を選択する前に、あれこれ比べてみたがるものだ」。
[原文:Pinterest edges closer to social commerce with new Shopping List feature]
ERIKA WHELESS(翻訳:英じゅんこ、編集:村上莞)