ピンタレスト(Pinterest)が銀行にアプローチを仕掛けている。近々予定されているIPOのためではなく、広告収入を増やすためだ。金融サービス業界のクライアントを抱える広告エージェンシー3社のバイヤーが語ったところによると、ピンタレストの営業担当者からのアプローチがこの数カ月間に増えているという。
ピンタレスト(Pinterest)が銀行にアプローチを仕掛けている。近々予定されているIPOのためではなく、広告収入を増やすためだ。
金融サービス業界のクライアントを抱える広告エージェンシー3社のバイヤーが米DIGIDAYに語ったところによると、ピンタレストの営業担当者からのアプローチがこの数カ月間に増えているという。
銀行やクレジットカード会社などの金融ブランドは、ピンタレストにとって新しい業界ではない。たとえば、プルデンシャル・ファイナンシャル(Prudential Financial)は2017年にピンタレストと交渉をはじめ、2018年に広告キャンペーンを実施した。チェース銀行(Chase Bank)も、ピンタレストで住宅ローンのキャンペーンを展開している。だが、ピンタレストが金融ブランドへのアプローチを増やしているという事実は、同社が消費者向けパッケージ製品、ファッション製品、小売企業といった従来の業界以外に広告収入源を広げようとしていることを示している。調査会社イーマーケター(eMarketer)によれば、ピンタレストが2018年に米国で獲得した広告収益は5億ドル(約556億円)以上で、前年から44%増加したと見られる。2月21日には、ピンタレストがひそかにIPOを申請していたとウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)が報じた。上場した場合、同社の評価額は120億ドル(約1.3兆円)程度になると見込まれている。
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人生の節目がターゲット
デジタルマーケティングエージェンシーのアイクロッシングUK(iCrossing UK)で戦略および計画立案担当責任者を務めるアリソン・グリフィス氏は、金融ブランドへのアプローチを進めるピンタレストの最近の動きを理にかなったものだと考えている。人々が人生設計を立てるにあたって、多くのお金が必要になることがあるからだ。ピンタレストは自社のプラットフォームを、パーティ、結婚式、リフォームなど、人生の大きなイベントを迎える人がインスピレーションを得るための場所と位置づけている。2018年6月にIPGメディアブランド(IPG Mediabrand)で行ったエージェンシー向けプレゼンテーションで、市場開発担当責任者のビクラム・バスカラン氏が「ここはアイデンティティや意志のデータベースなのだ」と述べたのもそのためだ。
「金融サービスブランドは、ビジュアル検索エンジンとして成長するピンタレストを利用することで、人生のさまざまな節目を目に見える形で表現しようとする消費者をターゲットにできる。結婚式のメイクのアイデアを探している人、ベビー服を探している人、リフォームのアイデアを探している人などだ。このようなユーザー行動はすべて、特定の金融商品をより効果的に売り込むために利用できるシグナルといえる」と、グリフィス氏は語った。
ピンタレストでパートナーシップ担当グローバル責任者を務めるジョン・カプラン氏によれば、同社のプラットフォームはインスピレーションを与えることにフォーカスしているため、ブランドの製品やサービスを発見するのに適しているという。そして、このブランドには金融サービス企業も含まれるのだ。
「新しい家を買う、大規模なリフォームをする、結婚する、親になるなど、人生の一大イベントを計画している人たちがいる。金融サービスブランドは、ピンタレストのユーザーが真っ当なやり方でそのような目標を実現する手助けができる。そうした人生の一大イベントが実際のところどういうものなのか、その実情を知らせ、アイデアやアドバイスを提供する絶好の機会なのだ」と、カプラン氏はメールで回答を寄せた。
愛用するクライアント
プルデンシャル・フィナンシャルが2017年にピンタレストと商談をはじめたのは、オーディエンスへのリーチを拡大する機会を探していたためだと、メディア、スポンサーシップ、ブランドマーケティング、および広告の責任者を務めるアンナ・パパドプロス氏はいう。同社にとってピンタレストは、ユーザーの属性(さまざまなライフステージを迎えた女性が多い傾向がある)と行動が魅力的だったと、彼女は語った。
「ピンタレストは受動的なチャネルではないため、ソーシャルと検索の両方でメリットがある。人々は、アイデアを求めてピンタレストで積極的に検索を行い、新しいコンテンツを進んで探そうとしているのだ」と、パパドプロス氏は語った。
それ以来、プルデンシャル・ファイナンシャルはピンタレストで「複数」のメディアバイイングを行った。現在行っている「ステート・オブ・アス(The State of US)」というキャンペーンもそのひとつだ。同社が主に購入しているのは、動画用のプロモートピンとネイティブ広告ユニットだという。
ためらうバイヤーも
ピンタレストは2018年、広告製品を充実させるさまざまな取り組みを実施。6月に新しい動画広告ユニットを導入したほか、9月にはインフルエンサーマーケティング用ツールをさらに拡大した。そして3月初旬には、広告プログラムをドイツ、オーストリア、スペイン、イタリアに拡大している。同社がこれらの広告プログラムを、初の英語圏以外の国としてフランスへ拡大したのは、2018年のことだった。また、最近になってカタログと呼ばれる新しいツールをリリースし、小売企業がピンタレストに掲載する製品の価格や在庫の情報を簡単に管理できるようにした。
ただし、ピンタレストが従来の小売ブランド以外の業界に進出することにためらいを覚えるバイヤーもいる。
「旅行や小売の分野でうまくできるなら、素晴らしいことだろう。だが、自分の守備範囲にとどまったほうがいい場合もある」と、デジタルエージェンシーのアイプロスペクト(iProspect)で、ソーシャルメディア担当VPを務めるジョーダン・ヤコブソン氏はいう。「これはスナップ(Snap)でも同じことだ。彼らは13〜24歳の人たちを狙うブランドにフォーカスしている」。
Kerry Flynn(原文 / 訳:ガリレオ)