ベリショップ(Verishop)の共同創設者でCEOを務めるイムラン・カーン氏は、AppleのiPhoneプライバシーの変更を受けて、独立ブランドは同氏のソーシャルコマースマーケットプレイスに群がりつつあると語る。同氏は米モダンリテールとの対談で、小規模ブランドにおけるリテールの展望の変化などを語った。
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ソーシャルコマースマーケットプレイス「ベリショップ(Verishop)」の共同創設者でCEOを務めるイムラン・カーン氏は、AppleのiPhoneプライバシーの変更を受けて、独立ブランドは同マーケットプレイスに群がりつつあると語る。
ベリショップは2019年に操業を開始して以来、ファッション、美容品、健康福祉、屋内装飾の分野から3000もの新興ブランドをすばやく獲得した。顧客は精選されたフィードから、インフルエンサー主導のライブストリームや店舗のパーティーで商品を購入でき、自分のバスケットの内容を共有することもできる。各ブランドは自社アイテムを無料でリストに登録して販売でき、ベリショップはカテゴリーに応じて取引額の10%から15%を徴収する。同社の昨年の流通取引総額は2020年よりも50%増加した。
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ベリショップは、規模こそはるかに小さいものの、Amazonの代替品として近年に出現した多くのバーチカルマーケットプレイスのひとつだ。ウォルマート(Walmart)やターゲット(Target)などの大手小売業者はいずれも第三者の出品者が自社商品を自らのeコマースプラットフォームで販売することを認めており、バブル(Bubble)やザ・イエス(The Yes.)などの新興企業も同様だ。D2Cブランドは突如として多くの選択肢を持てるようになった。
そのあとで、AppleとGoogleがオンライン上のユーザー追跡に劇的な変更を発表したことで、これらのブランドは妨害を受けることになった。ウェブ全体でユーザーを効果的に追跡できなくなることが予想されるため、D2C企業は見込み顧客に到達するために、電子メール、アフィリエイトマーケティング、またはTikTokやピンタレスト(Pinterest)のようなほかのプラットフォームなど、とにかく新しい方法を急いで見つけようとしている。一方でFacebookやほかのソーシャルメディア大手は、AppleとGoogleのソフトウェア更新によって生み出された空隙を埋めるため、新しいキャンペーン測定ツールに傾倒している。
カーン氏はスナップ(Snap)で最高戦略責任者を務めていた頃にデジタル広告の隆盛を目撃しているが、同氏によれば小規模のブランドは、大手テック企業がオンラインプライバシーへと転向するなかで、顧客とつながる新しい方法を必死で模索しているという。同氏は米モダンリテールのインタビューで、現在のオンラインにおける商品の発見とマーケティングのインフラストラクチャは、複数のプラットフォームで広告を行う労働力と予算を持ち合わせていない新興企業には不向きだと主張した。
以下の対談内容は読みやすさを考慮し、編集を加えたものである。
◆ ◆ ◆
――各ブランドは広告を行うプラットフォームを多様化する必要があると、あなたは考えているか?
まったくそのとおりだ。しかし、ほとんどの小規模企業は、複数の異なるプラットフォームを使用するためのリソースが存在しない。
現実には、独立ブランドがGoogleに依存するのは効果的ではない。これらのブランドはマクドナルド(McDonald’s)のように有名ではなく、人々はそのブランドを探してはいないからだ。さらに、Facebook、Snapchat、ピンタレスト(Pinterest)、Twitter、TikTokなど大手の配信プラットフォームは、どれも互いにまったく異なっている。Facebookで有効な方法はTikTokでは有効ではないし、Snapchatではまったく機能しない。
5人から10人のチームで小規模なビジネスを運営しながら、同時にこれらのプラットフォームの活用方法を見つけ出すのは非常に困難だ。私は、このような場面でベリショップが、アグリゲーションによって各ブランドを支援できると考えている。当社は各ブランドに代わってこれらの作業をすべて行い、当社が取引を推進するまでは何も支払う必要はない。
――ソーシャルメディアの大手は、これらのオンラインプライバシー変更の影響から立ち直れるだろうか?
立ち直れると確信しているが、それには時間を要するとも考える。これらの大手企業を構成しているのは賢い人々で、方法を見いだすことができるのは間違いない。対策は、対象とする国や対象層によって異なるだろう。
古いプラットフォームは歴史的に、使用しているツールがずっと以前から存在していたことで大きな優位を得ていた。しかし今、古いサービスと新しいサービスとのギャップは小さくなりつつある。
――小規模なブランドにとって、リテールの展望はどのように変化したのか?
インターネットが台頭してきてから20年間、我々はコンテンツの民主化を目にしてきた。YouTubeの動画クリエイター、Spotifyのポッドキャスター、Twitterのオピニオンリーダー、TikTokの短尺動画クリエイターなどが出現した。
より最近になって、配送、物流、フルフィルメントなどがより標準化され、リテールが民主化されるのも目にした。過去2年間に作成されたeコマースウェブサイトの膨大な数が、それを証明している。
私がSnapchatに勤務していたころ、私の持論は、eコマース、たとえばウェブ上で販売を行っている数百万もの小規模事業が真に民主化するなら、小規模のブランドはオンライン広告を購入する複雑な手続きを理解できないだろうということだった。
私が根本から信じているもうひとつのことは、人々は常に新しいブランドや商品を探しているということだ。しかし私は、現行のソーシャルメディアの状況と購入のインフラストラクチャは、このような独立した小規模事業者にも、消費者にも適切なものではないと感じていた。
人々は広告から商品を見つけたいとは思わない。商品を検索してフィルタリングできることを望んでいる。また、一貫したエクスペリエンスとして単一のショッピングカートでチェックアウトでき、単一の接触ポイントを持つことを望んでいる。
この理由から、当社はデジタルモールのベリショップを作り上げた。我々が行うことはすべて、各ブランドのコンバージョンを促進するよう設計されている。そして私は、最近行われたオンラインプライバシーの変更によって、世界中のユーザーとより迅速に接触することが可能になると考えている。これは、各ブランドが自社商品を見つけてもらうための新しい方法を探し求めるようになるためだ。
当社は現在のところ、おそらく独立の新興ブランドにおける最大のアグリゲーターのひとつだ。これらのブランドは見つけにくく、気づきにくい。当社は、ほかの小売業者が求める、ルイ・ビィトン(Louis Vuitton)やグッチ(Gucci)のような高級ブランドを扱っているわけではない。
当社のプラットフォームには3000を超えるブランドがあり、毎月100万人を超える人々が当社のサイトを訪問する。当社のブランドの1/3近くは当社のプラットフォームをオーガニックに訪れた、すなわちブランドの方から当社に連絡してきたものだ。そして、当社の毎月の継続率は99.7%に近い。
Saqib Shah(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)