コンテンツレコメンド企業のTaboola(タブーラ)は10月3日、同業のOutbrain(アウトブレイン)を買収すると発表した。これにより、Google、Facebook、さらにAmazonに支配されているオンライン広告市場において、広告主に新しいスケールのプレイヤーへのアクセスを提供すると、彼らは語っている。
Taboola(タブーラ)とOutbrain(アウトブレイン)のよもやま話は、最終的にハッピーエンドを迎えたようだ。
コンテンツレコメンド企業のTaboolaは10月3日、同業のOutbrainを、現金2億5000万ドル(約267億円)と合併会社の株式30%で買収すると発表した。合併後の会社の評価額は確定できなかったが、どちらも非公開会社で10億ドル(約1060億円)以上の価値がある「ユニコーン」企業とされている。ともに利益を上げており、それぞれ1億5000万ドル(約160億円)の資金を調達しているという。
TaboolaとOutbrainというこの分野の2大企業は、何年も前からもっとも収益性の高いパブリッシャーとの契約を争っている。そのため、両社の合併が長い間、ウワサされてきた。現在、この2社は、コンテンツレコメンデーションの一枚岩を形成するために力を合わせている。この合併により、Google、Facebook、さらにAmazonに支配されているオンライン広告市場において、広告主に新しいスケールのプレイヤーへのアクセスを提供すると彼らは語っている。
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パブリッシャーへの影響
この組み合わせはパブリッシャーに大きな影響を与える可能性がある。パブリッシャーは長いあいだ、記事の下部に表示される、コンテンツレコメンデーション企業の広告に大きく依存しており、ある程度の規模の安定したオンライン広告収入を得てきた。2000年なかばに、わずか1年違いで、同じイスラエルに創設されたTaboolaとOutbrainは、激しいライバルであり、世界最大の出版社との独占的なパートナーシップを獲得するため、大規模な(そして、一見不経済な)保証契約と収益分配契約を結んでいる。
「我々にとってのリスクは、価格の下落圧力を感じることだ」と、全国紙のパブリッシング幹部は述べる。
別の新聞社の幹部は、本件に関する彼の関心は金銭ではなく、記事ページに掲載される広告品質のフィルターについてだという。
「私の懸念は、一緒になって、品質管理や安全対策を売り込めなくなることで、最終的には底辺への競争になることだ」と、その出版幹部は述べる。だが、逆のシチュエーションも考えられる。より多くのエンジニアがこの問題に取り組めば、フィルターをすり抜ける低品質の広告が少なくなるはずだ。
合併後の社名はTaboola
Taboolaは2019年、10億ドルの売上を達成する見込みだというが、Outbrainは財務情報を明かさなかった。合併後の新会社は2000人以上の従業員と、約2万人の顧客を抱えることになる。
合併後の社名はTaboolaと呼ばれ、現在のTaboola CEOであるアダム・シンゴルダ氏は、その役割を継続する。Outbrainの共同設立者で共同CEOのヤロン・ガライ氏は、合併を支援するためにアドバイザリーの職に就く予定だ。正確な役職は発表されていないが、合併完了後12カ月間は会社に残るという。Taboola COOのエダッド・マニブ氏とOutbrain 共同CEOのデビッド・コストマン氏は、合併後の統合に取り組むと、プレスリリースで発表した。彼らの新しい役割も発表されていない。
両社は現在、ニューヨークに本社を置いている。彼らのパートナーであるパブリッシャーと広告主クライアントの多くが、ニューヨークをベースとしているからだ。長年に渡って、2社が提供してきたプロダクトは、スポンサードリンクから拡大し、いまや動画、アナリティクス、プログラマティック広告、および編集ツールも含む。
パブリッシャー収益を「2倍、3倍」に
TaboolaとOutbrainは、この合併によって、GoogleとFacebookに代わる、より大きな選択肢を広告主に提供できると述べた。OutbrainとTaboolaのクライアントには、CNBC、CNN、ワシントン・ポスト(The Washington Post)、BBCが含まれ、それぞれのリーチは月間12億人、14億人に達するという。この組み合わせは、Web経由でスポンサードリンクを購入しようとしている広告主にとって効率的だと、両社は述べる。
新しいTaboolaによると、テクノロジーと製品への投資が増えたことで、パブリッシャーやモバイルキャリア、携帯端末メーカーのパートナーの収益も増加するという。シンゴルダ氏は、同社が動画、データ、モバイルアプリインストール広告などの分野でのサービス拡大を望んでいると語った。
新しいTaboolaは、より大きな事業体として、パブリッシャー収益を「2倍、3倍」にできる可能性があると、シンゴルダ氏は述べる。より多くの広告主が、検索とソーシャル支出の一部を、オープンウェブ上の広告に切り替えることを検討するようになると考えているからだ。
「IPOは明らかなルートのひとつ」
Taboola自身の将来について言えば、IPOは論理的なステップのようだ。Outbrainは、秘密裏に2014年のナスダック(Nasdaq)上場を申請したと、ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)は報じている。
「[IPOは]我々のような規模の企業にとって、明らかなルートのひとつだ」と、ガライ氏は語る。「我々はこの会社を独立させ、持続可能なものにしていきたいと考えている」。
Lara O’Reilly(原文 / 訳:長田真)