アドテク企業で広まりつつある、「 週4勤体制 」は是か非か : パンデミックにより大きく弾み

熱心なマラソンランナーのマット氏は、今年登録した複数のマラソン大会がすべて中止になったことにがっかりしていた。9月に同氏は、自分ひとりででも走ることを決意した。「いつか50kmを走破したい」と考えていたことを思い出し、実際にそれを実現したのだ。

同氏はアドテク企業のポーラー(Polar)のエンジニアリング部門に勤めている。同社は5月から週休3日制を試験運用し、9月から社員30名全員が、趣味などに時間をさけるように金曜日を休みとする「サムデイ・エクスペリメント」という取り組みを進めている。

同社のCEO、カナル・グプタ氏は「サムデイ・エクスペリメントは単なる週休3日制ではない。社員が自分にとって重要なことに力を注げるよう支援する取り組みだ」と語る。グプタ氏自身も、金曜日を瞑想に関する本を執筆するために使っている(同氏はZoomインタビュー時にも2分間の禅について指導してくれた)。

以前から週4日勤務がトレンドになりつつあったが、パンデミックにより大きく弾みがついた。現在、週休3日制で知られる企業として、日本マイクロソフトやITデザイン企業のノーマリー(Normally)などがある。また、ベースキャンプ(Basecamp)をはじめ、一部のIT企業も夏のあいだ金曜日を休日に設定した。週休3日制が広まっているのは、技術の進歩による連絡手段の充実、注意力や生産性を高める要素への理解の深まり、ワークライフバランスを重視する価値観といったトレンドが背景にある。

5月にはテレグラフ(The Telegraph)が、給与削減と同時に、編集部以外の社員に週4日制を導入している。ほかにもアイルランドを拠点とする開発企業の3Dイシュー(3D Issue)や英国の雑誌パブリッシャーでありイベントオーガナイザーのターゲットパブリッシング(Target Publishing)なども同様の取り組みを行ったところ、マイナスの影響が見られなかったため、一度は削減した給与を元に戻している。

週4日制のメリット・デメリット

週4日制はアドテク業界や、IT系企業の間でとりわけトレンドになっている。高利益をあげているIT企業は、コミュニケーションツールリモートワーク毎年の社員旅行など、業務プロセスの再設計を進めている。タイムズ・オブ・ロンドン(The Times of London)の西海岸特派員ダニー・フォートソン氏は、シリコンバレーには「困難なものや複雑なものを取り込んで、賢い人たちが強い意志や使命感をもって革新的な取り組みを行い、上手く行ったか見極める文化がある」と書いている。

週4日制への切り替えはシンプルではない。ポーラーはミーティングの時間を30分に短縮、Slackのチャンネル数を200から30に減らし、Slackのメッセージ数を半減させた。また、社員アンケートやインタビューを通じて社員の満足度や生産性が、5月時点から少なくとも維持されているかを確認している。

週4日制によって具体的にどれくらい売上や経費が変化するか特定するのは難しいが、特にパンデミックによるリモートワークに慣れない企業では難しい企業文化の醸成につながっている。ポーラーの場合、前年比で収益は50%増、利益も増えている。これは週4日制が功を奏した可能性もある一方で、そもそも好調だから週4日制を導入できたという見方もある。現在、同社はクライアントの選択基準を引き締めており、小規模エージェンシーからの収益があまり期待できないため、大規模エージェンシーとの業務によりシフトしている。

一方、週4日制の欠点は、サービス産業よりも知識ベースの産業に適しているという点で、エリート主義的という指摘も受けている(たとえばバスの運転手でこういったことを試すのは容易ではない)。

リモートファースト企業のバッファー

たとえば、世界中に88人の社員を抱えるリモートファースト企業のバッファー(Buffer)は、6月から週休4日制を導入したが、カスタマーサービス部門(部署名は「アドボカシー部門」)だけは、これがうまく行かなかった。バッファーは、これは「短時間労働でも生産量は落ちないというコンセプトにおける例外」だとしている。同社は、問い合わせを減らし、長期的に週4日制を続けられるよう、カスタマーに確実に必要なものを提供するための取り組みを続けている。

同社のPR部長、ヘイリー・グリフィス氏は「パンデミックが始まった頃、社員にアンケートを行ったり、話を聞いたりしたところ、みな疲れを感じていたことが分かった」と語る。「当社のCEOは、パンデミックで痛手を負わず乗り切ることを目標に掲げていた。そんななか、社員の燃え尽きが懸念事項になっていたのだ」。アンケートの結果、週4日制にすることで社員の自主性が向上し、ストレスが減り、幸福度が向上したことが明らかになった。

バッファーは当初、各チームに休みの曜日を選択させていた。その結果、水曜日を選択したチームと金曜日を選んだチームにわかれた。そのため全社員が働く日が週に3日しかなくなり、時間帯も分かれるなかで業務に支障が生じてしまったという。そのため現在では共通で金曜日が休日となっている。

「目標やタスク、デッドライン、会議などを調整した」と、グリフィス氏は語る。「なかでもタスクが重要で、ここを調整しないと社員が残業して1日あたりの労働時間が増えることになってしまう。我々の目的は燃え尽きを防ぐことで、タスクが変わらなければ本末転倒だ」。

「中国では週6日勤務が一般的」

週4日制を疑問視する意見で多いのが、労働時間が20%カットされたら、業務が非常に過酷になってしまうのではないかという指摘だ。一方、支持者は「20%の時間と価値をまるまる失うという言い方はミスリードだ」と考えている。たとえば米国のメディア企業やマーケティング企業は、昼食後すぐに退社時間になるところが非常に多い。

また、IT企業のあいだでは週4日制の導入で集中力が高まり、優先事項をうまく決断できるようになったという声が大きいようだ。とはいえ、IT業界以外でも同様のことが起きるかは、実際にやらなければわからない部分もある。

オンライン報酬システム企業のユーフレックス・リワード(uFlexReward)のケン・チャーマンCEOは、「進歩的な企業が取り組む野心的な週4日制は、人材を惹き付けやすくするという側面もある」と指摘する。「いずれ他企業は従わざるを得なくなるかもしれない。だが逆に、世界的な競争のなかで、覆る可能性もある。競合しているのがどこの企業かにもよる。たとえば中国では、(欧米でも100年前はそうだったように)週6日勤務が一般的で、同じ地域の企業と競争しているケースと事情が異なってくるだろう」。

[原文:‘One debt companies are building up is burnout’ Ad tech embraces the four-day working week

LUCINDA SOUTHERN(翻訳:SI Japan、編集:長田真)