オース(Oath)をローンチしてからたった1年半でベライゾン(Verizon)は、オースをベライゾン・メディア・グループ(Verizon Media Group)に取り込むことにした。彼らの急落の要因となった5つの問題を下にまとめた。
Oath(オース)をローンチしてからたった1年半でベライゾン(Verizon)は、Oathをベライゾン・メディア・グループ(Verizon Media Group)に取り込むことにした。
会社のトップであるグールー・ガウラッパン氏が先日述べたところによると、追い詰められたメディアビジネスに勢いを付けるためのこの取り組みは、1月8日にローンチされるということだ。これはベライゾンが投資家たちに対して、企業価値が急落したことを伝えて、たった2カ月のことだ。
彼らの急落の要因となった5つの問題を下にまとめた。ベライゾン・メディア・グループがローンチすることで見えてくるチャンスにも触れたい。
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1. Oathのアドテクは限られていた
バイヤーたちはメディアを買ううえでシンプルな方法を求めている。その点をOathは理解できていなかったと、本稿のために取材した7人の広告エグゼクティブたちは語った。9月にOath広告プラットフォーム部門(Oath Ad Platforms)に統合するまでは、Oathが抱えるさまざまなサイトプラットフォームを横断して広告を買うためにはブライトロール(Brightroll)やアダプTV(Adap.TV)といった複数のアドテクを使う必要があった。それでも広告を購入するためのシンプルなアドテクスタックは出来ていなかったようだ。
匿名を条件に語ってくれたバイヤーのひとりは、「アドテクスタック周りのコミュニケーションは統合されたが、実際のテクノロジーに関しては統合はできていなかった」と言った。
一貫性の欠如は、AmazonによるDSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)が登場し、ザ・トレード・デスク(The Trade Desk)やクリテオ(Critero)のような洗練されたプレイヤーたちの存在で、さらに悪化したようだ。2017年のメディアプランにおいて、こういったプレイヤーたちは、Oathのテックよりもはるかに採用される傾向にあったと、エグゼクティブたちは語る。
こういった問題にベライゾンは対処しようとした。ベライゾン・メディア・グループのローンチ日を知らせるブログ投稿では、ひとつのDSPを通じて動画、ディスプレイ、モバイル、ネイティブ広告を購入できる統合された広告プラットフォームへのフォーカスをガウラッパン氏は強調した。この対応が、はたして時すでに遅しとなるかどうかは、今後明らかになるだろう。
2. Oathで広告支出を費やす理由がバイヤーたちに存在しなかった
Oathが2017年にローンチした際、AOL.comやテッククランチ(Techcrunch)といったブランド群のハブとして、Google以上の月間ユニーク訪問者数を抱えるとして大々的に宣言された。ベライゾンがアメリカで抱えるサブスクライバーデータによって、これらのユーザーに対するターゲッティングも支援されるとみられていた。しかし、広告主にとっては、実際にはOathから購入する広告を増やすモチベーションにつながるような規模には至らなかったようだ。ヨーロッパではベライゾンのビジネスがないため、データを活用するという売り文句も意味をなさなかった。
そのため、eメール以上の広告主とシェアできる独自のデータは欠如していたと、エージェンシーエグゼクティブのひとりは語った。しかし、売り文句が増えていたとしても、営業チームは広告バイヤーたちへの売り込みを十分にはしていなかったと、独立系メディアエージェンシーのエグゼクティブのひとりは述べる。実際、Oathがパブリッシャーだったのか、アドテクベンダーだったのか、そのハイブリッドだったのか、という点においてローンチから19カ月が経ったいまでもエージェンシーたちは混乱しているようだ。
「以前からの関係性を使って、簡単に入手できる資金を得ようとしており、外に出て、新しい関係を築こうとはしなかった」と、とあるエージェンシーエグゼクティブは指摘する。Oath上での広告が、ほかのプラットフォームとどう違うのか、明確な理由は一度も存在していなかったと述べる。
3. どのアドテクを使うか、広告主たちが主導権を握るように
Oathのエグゼクティブたちがエージェンシーと会う機会がなかった理由のひとつには、アドテクのコントロールをより強く求めていたマーケターたちと、Oathがつながろうとしていたことにある。こういったニーズに応えるために、彼らはクライアントチームを拡大したが、マーケターは彼らによる売り込みを理解できなかったと、匿名を条件に語ってくれたアドテクコンサルタントは述べる。
たろえば、昨年前半に広告主たちが見たプレゼンテーションでは、彼らが抱えるインプレッション数の大きさにフォーカスが置かれていた。しかし、これらのインプレッションの価値を示すことはあまりできず、上記のコンサルタントのクライアントはそこを知りたがっていたという。エージェンシーのエグゼクティブのひとりは「Oathの抱えるサービス周りでアドテクスタックを構築して、自分の身をリスクにさらすようなことをするシニアマーケターはいない。AmazonやGoogleが提供するよりイノベーティブなサービスについて行けていない、第1世代のデジタルプロパティが多すぎる。AmazonやGoogleからのテック購入を増やしてクビになるようなマーケターはいないが、Oathの場合はそれがあり得る」と語った。
4. Oathはメディアエージェンシーへのプレッシャーのなかで苦しんだ
広告がどこで購入されているか、今日では厳しい目が向けられている中で、エージェンシーが特定のメディアオーナーを広告主に勧めるのは難しくなった。このような現状もあって、サイトであれアドテクであれ、Oathのような存在は優先度が下がったと、エグゼクティブたちは同意した。「クライアントを説得して、最新ではないソフトウェアを使わせることはできない状況にエージェンシーは置かれている」と、ひとりのエグゼクティブは語った。この点に関して、元シニアマーケターのひとりも「この新しい透明性の時代において、エージェンシーはクライアントが望む場所で取り組まないといけないのだ」と述べた。
Oathは「激化する競争とマーケットのプレッシャー」を理由に、46億ドル(約4990億ドル)の減損処理を行い、それによって、ただちに企業価値が半分に急落した。
5.GDPRに注意深く取り組んだことで、メリットよりもデメリットの方が大きかったかもしれない
GDPR(一般データ保護規則)に準拠するにあたり、Oathがとったスタンスは非常に積極的なものだった。彼らのアグレッシブなアプローチの結果、広告主がオーディエンスのトラッキングで使えるサードパーティによるツールの数が限られてしまったと、取材したエグゼクティブのうち4人が語った。彼らはその結果として、Oathでの支出を削減したという。これは規則施行前ほどの洗練度を持ってターゲティングが不可能になったからだ。
「GDPRに準拠したツールを使っていた広告バイヤーたちも、それがOathの枠組みに含まれていなければ、Oathのサイトでは使えないことを意味していた」と、エグゼクティブのひとりは言う。また別のエグゼクティブも「Oathのプラットフォームで広告を購入していたが、トラッキングが適切にできないために削らざるを得なかった」と述べる。OathのアプローチはIABヨーロッパの透明性と同意の枠組み(IAB Europe Transparency & Consent Framework)をコピーしたものになっていた。この枠組の作成にはOathも参加していた。
Seb Joseph(原文 / 訳:塚本 紺)